本作で気になるのは、エルビス・プレスリーの周囲でいつも行動する5人のマネージャーらしき側近たち。
エルビスもそうだが、陽気ではちゃめちゃでお騒がせなヤンキーたち。品のかけらもないお祭り屋たち。
その破>>続きを読む
二分間のタイムリープ。元に戻った時記憶が残っているというオプション付き。登場人物全員にタイムリープが起き、不思議な共犯関係が生じる。その繰り返しになぜか飽きは来ず、笑みがこぼれる。
時間よ、悪いけ>>続きを読む
『アマンダの僕』でもそうだったが、ミカエル・アース監督の作品には、さりげない優しさで溢れている。
本作のシングルマザーの一家にしても、家族同士のいざこざが絶えないのだが、ここぞという時に優しさが滲み>>続きを読む
もしこの作品を、クリストファー・ノーランではなく、正統派の監督が撮っていたらどんな感じになっていただろうか。オッペンハイマーという人間をどれだけ理解できただろうか。おそらく、原爆の父、ソ連のスパイ、共>>続きを読む
フリーターでコミ障で家族とは疎遠。
人とほとんど話さないから言葉をつなげられない。
意を決して東京に出てきたのに。
あるべき自分からは程遠く故郷には帰れない。
だが、転機は訪れる。それが冠>>続きを読む
原題の「poor things」は、邦題では、「哀れなるものたち」と訳されている。そもそも邦題が、本作の真意をとらえていないような気がする。「poor thing」はネットで検索すると、軽い感じでの「>>続きを読む
ダーレン・アロノフスキー監督は、『ブラック・スワン』ではナタリー・ポートマン、『レスラー』ではミッキー・ロークと、主人公の心の闇を極限まで描くのが特長だ。バレリーナ、レスラー、そして今回はオンライン講>>続きを読む
この作品の夫殺害の容疑をかけられた作家を演じたのは、サンドラ・ヒュラー。
彼女は、「ありがとう、トニ・エルドマン」というドイツ映画で、女性コンサルタントの役柄だった。気丈な面とエクセントリックな面のギ>>続きを読む
この作品は、龍太亡き後、恋人博輔と龍太の母親妙子の交流が素晴らしい。
後半部だけ見ても、そのクオリティの高さに熱いものを感じる。
ひとえに、博輔役の鈴木亮と妙子役の阿川佐和子のコラボが凄い。
特に龍太>>続きを読む
愛はとても危なっかしいもの。
深田作品を観ていると、それを強烈に感じる。
コツコツと築き上げても、ふとしたひょうしで崩れ去る。
崩れ去ったと思っていたら、ふとしたひょうしで復活する。
予測がつかないか>>続きを読む
恵まれない労働者同士の淡い恋。
ホラッパもアンサも、肉体労働の中で心は荒んでいる。
アル中、失業、ニコチン中毒。彼らのイライラはピークに達し、イライラ解消のカラオケバーで恋が育まれる。
人物が>>続きを読む
今や源泉かけ流しをPRする温泉が主流で、温泉じゃない銭湯は人気がない。
だが、そもそも「湯道」という教えがあり、湯に浸ることにこそ道は開かれる。
本作は、そこに着目した非常にユニークな発想で充た>>続きを読む
世間で相手にされないタイプを地でいく、構成作家ツチヤタカユキ。
自尊心が高くて、人間関係が不得意で、自己実現に向けた狂人的な努力こそがすべて。
1日1,000個のボケネタを創り、伝説のハガキ(投稿)職>>続きを読む
心がないなら人間じゃないのか。動けない障碍者は心がないのか。
障害で生まれてくるとわかったら中絶すべきなのか。
この二つを一緒にする考え方が犯罪を生んだというのか。
命がある限り生きるという意>>続きを読む
陰陽のコントラストを見事に映し出すトラン・アン・ユンの世界が健在。
「夏至」、「青いパパイヤの香り」を彷彿とさせる熱帯の世界がここにもある。
むせかえっているようでむせかえってない。
熱風とそ>>続きを読む
お断りしておくが、これは連続殺人の容疑者の市子が行方をくらまして逃亡を続ける話だ。
現に映像は、犯人を追う刑事が、容疑者の関係者といつ会って事情聴取したか、といった捜査メモの記録の体で流れていく。>>続きを読む
ケイト・ブランシェットは、『ブルー・ジャスミン』でセレブから真っ逆さまに堕ちていく女性を演じた。本作との女性指揮者リディア・ター役との大きな違いは、ターには自分を偽る嘘がないということだ。
嘘がない。>>続きを読む
法律は社会の約束。でもすべて果たされるわけじゃない。
裁判官(竹之内豊)が新人弁護士(黒木華)にささやく言葉が、本作の肝かもしれない。
正義をふりかざして裁判に勝訴する。そんな黒木の理想を軽くい>>続きを読む
家出をした母親を中心に家族を描きたいと思っていた映画監督の花子は、ネタをプロデューサーに横取りされた腹いせに、本当の家族の映画を撮ろうと10年ぶりに家族と再会する。
配偶者や子供といったクッション>>続きを読む
ここ10年もの間、ドイツ映画はナチスの罪を問う作品が多い。いわばナチスの罪に対して真摯に検証してその残虐性を吐露していると言える。
本作は、ナチス高官だったアイヒマンが残した議事録から構成された作>>続きを読む
世間の「普通」という波。
早く結婚して子供を産む。いい学校に行っていい会社に入る。会社に入ったら上手く泳いでいく。
「普通」でなければ生きていけないという呪縛が、いたるところに充満している社会。
朝井>>続きを読む
日中戦争から第二次世界大戦へと向かう時代に、上海に租界(外国人居留地)があったそうだ。
英仏米の租界と共同租界(含む日本)があって、ジャズやダンスで文化芸術が栄えたらしい。
そこで暗号解読のため>>続きを読む
「売れりゃ正義ですから」
劇中の言葉が重く響く。
漫画もひとつのビジネス。
それに疲れた売れっ子だった漫画家の苦悩。
漫画が描けなくなって、家の中はひっちゃかめっちゃか。妻とも別居。風俗通いの>>続きを読む
前半部は「旦那デスノート」の話がとても面白くていい感じだったが、後半部の周囲も巻き込んだ夫婦の再生話の展開にがっかりさせられた。
でも、妻役の岸井ゆきのがどんな展開であっても、彼女の個性を失うこと>>続きを読む
本作を観ていると、タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を思い起こす。
時代はずれがあるが、ハリウッドの撮影現場、俳優たちの破天荒な生活、黒い組織との関わりなどなど。
『>>続きを読む
映像で残酷なナチス、悲惨な収容所を数多く観てきたが、ナチス将校とユダヤ人の奇妙な交遊の物語は初めてだ。
テヘランにいる兄に会いたいがために、ペルシャ語を覚えたいナチス将校とペルシャ語を巧妙に操るユ>>続きを読む
「自分って一番近いのに一番見えないもんね」
この言葉が、おねえ三人組の思いを代弁していると思う。
ドラァグクイーンを生業としている彼らの複雑な気持ち。
自分たちの所在はどこにあるのか。
彼らの>>続きを読む
スキャンダルとかは別にして、東出昌大の役作りが凄い、と唸らせてくれる。
「Winny」の開発者金子勇の風貌に完全に肉薄している。
彼の無罪に奔走する、吹越満、三浦貴大の弁護陣のキャラもお見事。
法廷の>>続きを読む
路上ミュージシャン、キリエの絶叫。
キリエの守り神のようなイッコの呪文。
キリエの兄貴分夏彦の号泣。
キリエをほっておけない教師フミの献身。
小さな祈りは 暗くて巨きな時の中に
かすかながらもしっか>>続きを読む
『愛なのに』という題にこめられたもの。
愛のあるべき姿なんてあるの?が出発点。
『アルプススタンドのはしの方』の城定秀夫がメガホンを取り、『愛がなんだ』の今泉力哉が筆を取る。
その絶妙なコラボが、>>続きを読む
どんなに近しい関係でも、マコトとウソは背中合わせ。
愛と憎しみに背中合わせがあるように。
「みんなほんとうのことより心地良いウソのほうが好きなんだ」
夫婦で営んでいた銭湯の現場から失踪した、夫の言葉が>>続きを読む
見返りを求めないというのは、良好な関係がずっと続くことが前提条件。
関係がうまくいかなくなったとき、無償の行為は無償でなくなる。
女性にいろいろやってあげた経験のある男性であれば、誰しも思い当たること>>続きを読む
アイスランドの広大な農場。羊飼いの夫婦には、隠された秘密がある。
その秘密が隠蔽されたまま、幻想的な風景が横たわる。
そこに人間の身体をした子羊が、何かの予兆を伺わせる。
それだけで十分恐怖を募らせる>>続きを読む
バブルってひとことで言うけれど、みんながみんな、バブルがはじけておかしくなったわけではない。
左遷、離婚とひとことで言うけれど、みんながみんなそれを挫折と認識するわけでもない。
仕事がうまくいかないと>>続きを読む
私たちには世界の片面しか見えてないと思うんだよね。
すみれは真奈に言う。
表の片面は、たとえば新入生歓迎で賑わう大学キャンパス。
ひときわチャラチャラキャラが多いテニス愛好会の面々。
四年間の青春を謳>>続きを読む
苦悩とか葛藤とかは個人的な体験だ、と誰しも決めつけている。
だが、アルモドバルにかかるとそうじゃない。いつのまにか民族や国家にまで発展していく。
愛一つとってもそう。彼にかかると男女とか超えて、全人類>>続きを読む