lentoさんの映画レビュー・感想・評価

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ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)

4.5

もしもあの時、こちらではなくあちらを選んでいたなら、その後の人生はどうなっていただろう?

そうした選択の問題として、自分を振り返ることはきっと誰にでもあり、この『ミスター・ノーバディ』も一見すると、
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トト・ザ・ヒーロー(1991年製作の映画)

4.0

世界という言葉を聞いたときには、世界地図や地球儀に象徴されるような、ある客観性の総体を思い浮かべるのが、ごく一般的な受け取り方だろうと思う。また、その世界像では、世界(客観)は個人(主観)と無関係に存>>続きを読む

ナイト・オン・ザ・プラネット(1991年製作の映画)

4.0

ジム・ジャームッシュが影響を受けたという意味ではなく、1人の観客として受け取った印象として、どこかエリック・ロメールの語ってみせたアネクドート(皮肉の効いた小話)と、比較できるところがあるように僕は感>>続きを読む

パターソン(2016年製作の映画)

4.5

反復することをモチーフにした映画がいくつかあるなかで、この映画もまたそのうちの1本になるだろうと思う。

たとえば、ビル・マーレイ主演『恋はデジャ・ブ』(1993年)の場合は、反復する生の肯定をファン
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エイリアン4(1997年製作の映画)

-

エイリアン第4作は『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督によるもの。このようにシリーズ4作品を一気に通してみると、『プロメテウス』(2012年)と『エイリアン:コヴェナント』(2017年)で再びリド>>続きを読む

エイリアン3(1992年製作の映画)

-

エイリアン第3作は『セブン』や『ファイト・クラブ』のデヴィッド・フィンチャー初監督作品。興行的にも評価的にも悲惨な目にあったらしく、デヴィッド・フィンチャーにとっての黒歴史的な作品となっているものの、>>続きを読む

エイリアン2(1986年製作の映画)

4.0

エイリアン第2作は『ターミネーター』や『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督によるもので、SFホラーからSFアクションへと舵を切ったような感覚があり、当時は斬新でカッコ良く感じたことを覚えている>>続きを読む

エイリアン(1979年製作の映画)

5.0

僕の知りうる映画作品のなかで、もっとも深い意味でのエロスに満ちた作品としてこの『エイリアン』シリーズは存在する。

下手な性教育をあれこれしてみたり、エセ・フェミニズムにかぶれてみたりするよりも、この
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大人は判ってくれない(1959年製作の映画)

5.0

ヌーヴェルバーグ(Nouvelle Vague)の字義や、映画史における意味合いも、また様々な現象面についても、僕は語る言葉を持たないものの、ジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーをはじ>>続きを読む

パリのランデブー(1994年製作の映画)

4.0

エリック・ロメールによる3つのアネクドート(どこか皮肉的な結末を迎える滑稽な小話)といった趣きの作品。

そして、ここに描かれる皮肉は、誰しもが何らかのかたちで現実的に味わったことがありながら、僕たち
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レネットとミラベル/四つの冒険(1986年製作の映画)

4.0

いかにも都会娘のようなレネットと、いかにも田舎娘のようなミラベル。少女から女へと移りゆく端境期に出会った2人のささやかな友情の物語は、けれど、いつものエリック・ロメールらしく、描かれたものそれ自身には>>続きを読む

海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)

4.0

もしも僕が女の身体性をもつ場合には、エリック・ロメールをどんなふうに見るのかは分からない。いっぽう、男の身体性をもつ現状であれば、この下品さすれすれの嬉しさをどうしても味わうことになる。

オープニン
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トゥー・ラバーズ(2008年製作の映画)

-

青年期の終わりに味わった絶壁のような場所が、この映画にはよく描かれている。

とくに意識してきたつもりはないものの、同じ年に生まれた、ホアキン・フェニックスとレオナルド・ディカプリオの2人が主演した作
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ブルーバレンタイン(2010年製作の映画)

4.0

価値のあるものは、その宿命として必ず失われていく。

かつて2500年ほど前に生まれ、そして死んでいったとされる男が、唯一確かに言ったことはそのことのように思えてならない。彼の名前がゴータマ・シッダー
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レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで(2008年製作の映画)

-

もしも『タイタニック』(ジェームズ・キャメロン監督, 1997年)のあの2人が生還したのちに、結婚というかたちで結ばれていたとしたら。同作が1910年代を舞台としているのに対して、本作は1950年代で>>続きを読む

タイタニック(1997年製作の映画)

4.0

この映画を観て、人生の進路を大きく変えた女性を知っている。僕自身は、映画を観て感動することはあっても、それは過去(つまりは総体としての今の自分)の認識に関するものや、振り返ってみれば予言めいていたもの>>続きを読む

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)

4.0

運命的な出会いとは、この映画にファンタジーとして描かれることが、深層心理的に現実となって現れることなのかもしれない。

またそれは、旧約聖書『創世記』に描かれるアダムとイブの出会いが最古の原型であり、
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きみに読む物語(2004年製作の映画)

4.0

永遠に続く2人の愛を。

そう口にしてみたときに、もしもロマンを感じるとするなら、同時に思っていることはその不可能性のように思う。ロマンティシズムの本質には、時間的にも空間的にも、遠くのものを見つめよ
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恋はデジャ・ブ(1993年製作の映画)

4.5

この『恋はデジャ・ブ』に接したのは、不眠に悩んでいた頃の深夜であり、ストーリーの巧みさに引き込まれ、最後には居住まいを正して観た思い出がある。また、パッケージ写真で大損している作品の最右翼でもあるよう>>続きを読む

アバウト・タイム 愛おしい時間について(2013年製作の映画)

4.5

人が人を恋しく思う。その抜き差しならない思いをやがて愛へと昇華していくとき、時間とは何かと人は問いかけることになる。そうした事情を、恋愛や家族愛のうちに綴った力のある作品だった。

また、愛とは何かと
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ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)

4.5

僕たち1人1人にとって何か切実なことを描こうとするなら、性と暴力というテーマは避けて通れないことを、この映画は静かに雄弁に物語っているようにあらためて思う。

本作と近い関係にあるように僕には感じられ
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ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)

4.0

カフカ的な状況とでも呼べば良いのか、たとえばマーティン・スコセッシ監督『シャッターアイランド』(2010年)などもそうであるように、一見すると「/」で仕切られた、「こちら側」と「あちら側」が反転してし>>続きを読む

ALOYS/アロイス(2016年製作の映画)

-

良い歳の男女2人による恋愛感情を、ボーイ・ミーツ・ガールと呼んで良いのかどうかは分からない。しかし、この感情は、たぶんほとんどの男女が知っているものであり、10代の頃のそれとは屈折や屈託の仕方が、やは>>続きを読む

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

-

詩的な言語や修辞(レトリック)を用いず、散文としてのそれによって詩を書いたような印象があった。そのため、詩情はあっても詩にはなってなく、映画としての風情はあっても映画にはなっていない。

しかし、詩に
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日の名残り(1993年製作の映画)

4.0

信頼できない語り手(Unreliable narrator)とは、主にミステリー分野に用いられる叙述トリックとして広く知られているものであり、たとえば1人称の語り手によって展開される筋立てをミスリード>>続きを読む

わたしを離さないで(2010年製作の映画)

4.0

はじめ観たとき、イギリス文学の系譜を継ぐようなナイーブな心情と、出口のないSF的ディストピアとの融合を、どのように受け止めれば良いのか戸惑ったことを覚えている。

一般的にSF作品に描き出される人物像
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つぐない(2007年製作の映画)

4.5

虚構の力(物語る行為)に向かっての、leap of faith(信仰への跳躍)の価値を問いかけた作品。そのため、社会制度や道徳的な意味での贖罪とは次元を異にしており、問いかけであるからには、無効とする>>続きを読む

プライドと偏見(2005年製作の映画)

4.0

この映画を観ながら、恋の鞘当て(さやあて)に揺れ動く若きイギリス人女性を描いた物語に、なぜ日本人男性である僕が涙をにじませてしまうのか不思議でならなかった。

ジェーン・オースティン(1775-181
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アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)

4.0

ときどきふと思うことに、「生きる」ということと「生き続ける」ということは、似て非なるものではないかということがある。生きるということは文字通りであったとしても、生き続けるということは、目に見えないかた>>続きを読む

アメリ(2001年製作の映画)

4.0

今を生きる若い女性たちは、この映画をどんなふうに観るのだろう。公開当時に27歳だった僕の周囲の女性たちの多くは、お洒落で可愛いと形容していたように思う。

新婚時代に妻と劇場まで観に行ったものの、当時
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ダゲール街の人々(1976年製作の映画)

4.0

この圧倒的な幸福感。それは映された対象にではなく、映そうとした主体のほうにある。

一応はドキュメンタリーということになってはいるものの、厳密な意味でのドキュメントなど存在しないという一般論としてでは
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女と男のいる舗道(1962年製作の映画)

5.0

あらすじを追うだけならば、ある女の悲劇になるものの、この映画からは何の悲劇性も伝わってこない。アンナ・カリーナはもちろん美しく、けれど本当に美しいのは、ジャン=リュック・ゴダールのまなざしのほうにある>>続きを読む

6才のボクが、大人になるまで。(2014年製作の映画)

4.0

役者がリアルに年齢を重ねていく姿を撮ることは、必ずしもリアリズムや時間の本質を描くことにはつながらない。6歳の少年が18歳になるまでの12年間を、実際の12年間で撮ったということは、もしかすると 映画>>続きを読む

ビフォア・ミッドナイト(2013年製作の映画)

4.5

まるで音楽のように会話し続けてきたこの2人は、男声と女声による2声のフーガのようにウィーン(第1作)・パリ(第2作)・ギリシャ(第3作)の街並みを通り過ぎてきたことになる。また、それぞれの街並みはどこ>>続きを読む

ビフォア・サンセット(2004年製作の映画)

4.5

このシリーズが音楽的な喜びや官能に満ちているのは、やはり時間を本質的なテーマとしていることに、きっと根拠がある。3作品を通して青春期・青年期・中年期へと変遷していくなかで、いつでも会話し続けているジェ>>続きを読む

ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(1995年製作の映画)

4.5

何かに引き寄せられるようにたどった道筋が、その入り口からは想像だにしなかった出口を抜けることもある。

たとえば10代後半から20代前半にかけて、疑いもなく存在したあの感情が、その鮮やかさや力強さを失
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