mat9215さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

mat9215

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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.0

人物が登場する間合いとか、悪意や善意が剥き出しになるセリフは舞台劇だけど、ショットを積み重ねる表現は紛れもなく映画。ダーレン・アロノフスキー、生来の嗜好を抑えて賞取りに打って出ている。

黄金の大地(1953年製作の映画)

3.0

疾駆する馬などアクションのシャープ。また、集団による戦闘はほぼかならず斜面で繰り広げられる。これは他のベティカー作品にも通じる。冒頭で戦闘の舞台となった金鉱には水を流す樋が斜面に設置されていて、再びこ>>続きを読む

π(1997年製作の映画)

3.0

粒子の荒れたモノクロ映像に細かいカット割で描かれる妄想ワールド。主人公がスキンヘッドになってからのクロースアップには力がある。シナゴークやラビたちが示すユダヤ文化はアロノフスキー自身が親しんだもののよ>>続きを読む

征服されざる西部(1952年製作の映画)

3.0

皆が書いているとおり、いちばん印象的な場面はロバート・ライアンに殴られたロック・ハドソンが大きなテーブルの上を奥に向かって滑って落ちるところ。ライアンが荒くれ者たちの中に入っていき、殴り合いの後、仲間>>続きを読む

自由を愛した男(2024年製作の映画)

2.0

実話ベースの犯罪活劇。メラニー・ロランは監督として『ガルヴェストン』や『ヴォルーズ』のように犯罪活劇を手がけるところは好ましい。構図や斜めアングルやカメラの動きなどのスタイリッシュな、というかスタイリ>>続きを読む

ザ・バイクライダーズ(2023年製作の映画)

4.0

あたかも部族のような集団が形成され拡大し滅んでいく物語。集団リーダーのトム・ハーディ、ハーディと心で繋がっている鉄砲玉のオースティン・バトラー。この二人の厳しい眼差しに打たれる。この集団の栄枯盛衰の物>>続きを読む

シマロン・キッド(1951年製作の映画)

4.0

無駄なく簡潔なストーリー展開。拳銃を抜いたり、コップで水をかけるといった瞬発的なアクションのキレの良さ。機関車庫の立ち回りの空間把握とターンテーブルの緩慢な回転。登場人物たちがみな個性的で、中でも情報>>続きを読む

サントメール ある被告(2022年製作の映画)

4.0

充実した顔の映画。法廷映画にお約束の弁護士と検察官の駆け引きはない。法廷内ではときおり引きのマスターショットがあるほかは、女性の被告、語り部の女性作家、女性裁判官、女性弁護士、男性検察官、それに証言者>>続きを読む

ロデオ・カントリー(1952年製作の映画)

4.0

ニコラス・レイの『ラスティ・メン/死のロデオ』と同年製作のロデオもの。レイ作品と同様にロデオ乗りの先達が後輩とタッグを組む物語。レイ作品は悲劇だが、本作は明朗なエンディングを迎える。ロデオ場面を中心に>>続きを読む

クラブゼロ(2023年製作の映画)

3.0

黄色に紫のアクセントが入る制服、薄緑の校舎、パープルやブルーで統一された少女たちの部屋といった奇天烈感のある色彩設計。カルト集団が形成されるプロセスを描いているけど、当方には響かなかった。拒食がもたら>>続きを読む

シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024年製作の映画)

3.0

戦場の緊張感に取り憑かれたフォトジャーナリスト(戦場カメラマン)たちはテンプレ展開。ありふれた郊外が戦場になるしつらえは当地の人が見ると感興が湧くのだろうか。戦場場面の音響は迫力あり。ちょうど自宅のサ>>続きを読む

マリア(2024年製作の映画)

2.0

お馴染みの物語が綺麗な絵で綴られる。ノア・コーエンという俳優は表情に力のある別嬪さんだし、アンソニー・ホプキンスは楽しそうにヘロデ王を演じてはいる。

七人の無頼漢(1956年製作の映画)

4.0

見事な映画だ。雨宿りの洞窟内で一触即発のサスペンスが続き、いざ立ち回りというところですぱっと馬に乗ったランドルフ・スコットに切り替わる。泥濘地では綺麗どころのゲイル・ラッセルを容赦なく泥まみれにする。>>続きを読む

映画よ、さようなら(2010年製作の映画)

3.0

廃業寸前のシネマテークを舞台にしたセミドキュメンタリーと思わせて、中盤から主人公ホルへの人生立て直し話に移行する。職を失ったホルへが交差点で佇んだり、歩いたり、大学で勝手に講義したり、美容院で髪を整え>>続きを読む

夏の庭 The Friends(1994年製作の映画)

4.0

メイキング映像を見て、三國連太郎が住まう住居の庭はいったん更地にしてから改めて雑草やコスモスを並べたことを知った。自然の風景を作る野面(のずら)の伝統。また、濱口竜介の著作『他なる映画と 2』から孫引>>続きを読む

ブリッツ ロンドン大空襲(2024年製作の映画)

2.0

オープニング、火事場で放水ホースが暴れるツカミは上々。第二次大戦初期に空爆で破壊されたロンドンの街角や軍需工場の内部、地下鉄のホームなどプロダクション・デザインの予算は潤沢だったようで、本筋にあまり関>>続きを読む

お引越し(1993年製作の映画)

5.0

どこもかしこも相米慎二。俳優の演技というよりは俳優として演技している人間を捉えてしまうカメラ。相米慎二の長回しに耐える小学校6年生の田畑智子もすごい。

草原の追跡(1952年製作の映画)

4.0

ロリー・カルホーンが逃避行の途中で原住民に攫われたジーン・ティアニーと遭遇したり、徒歩で草原を進む途中で息絶えるガウチョから馬を譲り受けたりといった数々の偶然は物語の中では必然だ(ご都合主義という勿れ>>続きを読む

ピアノ・レッスン(2024年製作の映画)

3.0

ちょっと頭が弱いかものライモン(レイ・フィッシャー)が、バーニース(ダニエル・デッドワイラー)の耳にそっと香水をつけてバーニースの官能の炎がちょっと燃えるところはどきどきした。これ以外に目を見張るよう>>続きを読む

ジェーンとシャルロット(2021年製作の映画)

3.0

ジェーン・バーキンを素材にした映画としてはアニエス・ヴァルダの『アニエスv.によるジェーンb.』がある。紛れもない著名人としてのバーキンを素材にして、ドキュメンタリーとフィクションを混淆させるところが>>続きを読む

午前4時にパリの夜は明ける(2022年製作の映画)

4.0

すぐに泣き出すシャルロット・ゲンズブール。いつもは苦手だが本作では見ていられる。『満月の夜』のパスカル・オジェに感応するノエ・アビタ。マニッシュなたたずまいで突発的に怒り出すエマニュエル・ベアール。女>>続きを読む

歩道の終わる所(1950年製作の映画)

4.0

名演技とは無縁のダナ・アンドリュースだけど、その立ち姿や顔芸が活かされている。とくに、左に黙りこくったアンドリュース、右にややアウト・フォーカスのジーン・ティアニーを同時にクロースアップで捉えた長回し>>続きを読む

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)

3.0

十代の少年・少女の淡くも濃い交情には死の影がつきまとう。少年は年上の少女に主導権を握られている。少女の振る舞いは小悪魔というよりは悪魔だけど、少年とは性交に至らない間柄を保つ。一方で少年・少女より年上>>続きを読む

コルドリエ博士の遺言(1959年製作の映画)

3.0

狭い屋内空間の会話劇は、1930年代後半の一連のサシャ・ギトリ作品に通じるものがある。この頃のギトリ作に『新しい遺言』と『デジレ』があって、本作の題名とか登場人物の名前につながっている。ジャン=ルイ・>>続きを読む

ゴンドラ(2023年製作の映画)

2.0

オープニングから15分くらいは奇跡のような風景に見惚れたけど、その後のゴンドラすれ違いの一芸披露合戦にはついていけず。そもそも、ゴンドラが中間地点ですれ違うときの一瞬のために気合を入れて一芸を披露する>>続きを読む

Il cappotto(原題)(1952年製作の映画)

3.0

多数の人々が集まった広場で市長が演説していると霊柩馬車が通過する。人々が脱帽して黙礼し、市長の演説は中断される。なかなか映画的だ。
ゴーリキーの原作はシンプルで、それをイタリアらしく味付けしているよう
>>続きを読む

フォールガイ(2024年製作の映画)

3.0

さまざまなカースタントと打撃系の格闘。こうした体を張ったアクション場面に工夫があふれる一方で、ライアン・ゴズリングとエミリー・ブラントの会話などが単調というところが極端なコントラスト。ブラントにまで打>>続きを読む

若者のすべて(1960年製作の映画)

3.0

ヴィスコンティとは相性が悪くて、上手いと思うけど当方のツボを突かず。家族による下世話な愛憎劇といえばギリシャ神話かな。貧困世帯に住まう神々たち。

セールス・ガールの考現学/セールス・ガール(2021年製作の映画)

3.0

狭い部屋の中のカットつなぎが快調だったり、一場面だけ真正面の切り返しがあったりして、シネフィル人種はモンゴル国(正式国名)でも変わらないようだ。バンドが歌い出すのはグザビエ・ドランですかね。主人公の女>>続きを読む

僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)

4.0

ジェシー・アイゼンバーグの初監督作。意外と上手いではないか。ジュリアン・ムーアの母親とウィン・ウルフハードの息子のふるまいのイタさは観ていて居心地が悪いほどだ。ムーアが息子の代わりに同じ歳の少年に目を>>続きを読む

モホークの太鼓(1939年製作の映画)

3.0

重要な場面で人々は馬に乗らず足で行動する。人々は戦場への往還に歩いて行軍し、ヘンリ・フォンダは援軍を求めるために走る。最初の戦闘場面で馬が登場するものの、多数の避難民が一頭立ての小さな馬車に乗り込むだ>>続きを読む

恋人はアンバー(2020年製作の映画)

3.0

ローラ・ベティクルーはフィン・オシェイの後頭部に石を三度投げつける。この乱暴なふるまいはオシェイの求めの切実さを表している。ジェンダー認識、家庭環境、学校といった物語設定の一つ一つが、10代であるとい>>続きを読む

ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ(2023年製作の映画)

3.0

西部劇でも色鮮やかなアルモドバルワールド。緑のジャケットなんて西部劇で見たことがない。また、ギターを弾き語る青年の顔立ちや、ペドロ・パスカルのお尻がこれまたアルモドバルワールド。男二人がこの後、ともに>>続きを読む

ドライブアウェイ・ドールズ(2023年製作の映画)

3.0

兄ジョエルのハイブロウな『マクベス』に対して、弟イーサンはぐっと下品なスタイル。脚本と同様にイーサンの妻トリシア・クックとの共同監督だったらしい。説明が多くて長尺になる今日のアメリカ映画の中では、コン>>続きを読む

書かれた顔(1995年製作の映画)

5.0

すごいものを観た。坂東玉三郎の舞台、インタビュー、ドラマ、それにレジェンド老人たちのパフォーマンスがレナート・ベルタの神がかり的な撮影で捉えられる。幻影のような舞台、フィルムのラチチュードに挑戦するか>>続きを読む

不屈の男たち/ラスティ・メン 死のロデオ(1952年製作の映画)

4.0

ロデオで落馬したミッチャムが、紙屑が舞う無人の競技場を一人で歩くオープニングの寂寥感は現役を引退するミッチャムの心情そのものだ。ミッチャムが眠たげな眼差しと頑強な肉体で、ロデオ競技への断ち切れない執着>>続きを読む