mat9215さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

mat9215

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Saltburn(2023年製作の映画)

4.0

バリー・コーガンは、当て書きしたのかと思うほどのハマリ役。どんな映画の端役でも強烈な印象を残すコーガンが、圧倒的な階級差のある美男を愛しかつ憎み、その家庭を崩壊させて財を簒奪する。こんな複雑な主人公を>>続きを読む

サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020年製作の映画)

3.0

ここのところウディ・アレンは撮影をヴィットリオ・ストラーロに委ねていて、ストラーロに任せ切った絵作りは眼福。『男と女の観覧車』では夕方の光が、また『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』では雨の屋内の光が>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

3.0

結末が分かっていても、ちょいとはらはらする実話ベースのウェルメイド映画。物語を淡々と語り、盟友マット・デイモンの芝居を見せる演出に徹しつつも、東洋思想にかぶれたCEOを嬉々として演じるベン・アフレック>>続きを読む

セレブリティ(1998年製作の映画)

4.0

離婚した男女のその後の人生の浮き沈みといった軽いお話しが重厚なモノクロ画面で描かれる。撮影監督は多くのベルイマン作品を手がけたスヴェン・ニクヴィスト。ベルイマン好きのウディ・アレンは自作で何度か起用し>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.0

デ・ニーロは邪悪な胡散臭さを発揮していて、毎度お馴染みのデ・ニーロに安心したりする。一方で、ディカプリオは表情の一つ一つに愚かさを滲み出させていて、愚かさを見せる名演というところ。陰影の強い絵作りと太>>続きを読む

マジェスティック(1974年製作の映画)

4.0

漢ブロンソンはスイカ農家。弱い立場のメキシコ移民に優しく、チンピラや極道には厳しい。ダニー・トレホ級の悪相を備えたアル・レッティエリは軽くあしらわれて、復讐のためにブロンソンに粘着する。フライシャーの>>続きを読む

ギター弾きの恋(1999年製作の映画)

4.0

小物のロクデナシ・ミュージシャンという役柄でショーン・ペンが輝く。引っ掛けた女をクルマに乗せて連れていくのはいつもゴミ捨て場や鉄道の線路。ネズミを撃ち殺したり、貨物列車を見るのをつき合わせる。口が聞け>>続きを読む

スコルピオンの恋まじない(2001年製作の映画)

3.0

ウディ・アレンによる1940年代スクリューボールコメディの再現。『ヒズ・ガール・フライデー』のように男女間で辛辣な言葉が交わされる。ハワード・ホークスやプレストン・スタージェスほどにはシャープでないの>>続きを読む

雨の午後の降霊祭(1964年製作の映画)

3.0

暗い屋内と曇った屋外で展開される1960年代英国サスペンス。少女を誘拐する際にショーファードリブンのロールスロイスから、しょぼいサイドカーに乗り換えるギャップに萌える。皮の帽子とゴーグルを付けたり、白>>続きを読む

さよなら、さよならハリウッド(2002年製作の映画)

3.0

久しぶりに再会した息子に、目が見えないことと、その原因をあっさりと見破られてしまうあたりの間合いはよろしい。盲目の映画監督になるあたりでラストのオチは見えたけど、そうきたか。

マンディンゴ(1975年製作の映画)

4.0

お腹いっぱいになるくらいに重苦しく、かつ、えげつない話が端正な演出で描かれる。白人の登場人物に善人が一人もいない。これはバリー・ジェンキンスのテレビシリーズ『地下鉄道』に先行している。主人公の農場主ペ>>続きを読む

おいしい生活(2000年製作の映画)

3.0

非インテリを演じるウディ・アレン。いつもと違ってスノッブな話題はもっぱらパーティ場面の脇役たちが口にし、しかもスノッブの底の浅さが見えるほどではない。そんな会話で気まずい思いをする非インテリ夫婦の描写>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

市井の男の1日ごとの暮らしの反復と、そこに生じる小さな差異やささやかな事件。これはジム・ジャームッシュの『パターソン』と同じ設えだ。巨匠、久しぶりに良いではないか。近作『世界の涯ての鼓動』のストレート>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.0

ケリー・ライカートによる西部劇再構築。『ミークス・カットオフ』における乾いた砂漠から湿潤な森の中に舞台が変わっても、リアルな生活描写とか、先住民族の扱いとか、そのスタイルは変わらない。本作では闇の暗さ>>続きを読む

80 For Brady : エイティ・フォー・ブレイディ(2023年製作の映画)

2.5

ネトフリドラマ『グレース&フランキー』で長らく主役コンビを務めたジェーン・フォンダとリリー・トムリンに、リタ・モレノとサリー・フィールドが加わった鉄壁のばーさん軍団。フォンダが最年長かと思ったら、モレ>>続きを読む

ヒューマン・ボイス(2020年製作の映画)

3.5

ティルダ様の熱い一人芝居と、アルモドバルのグラフィックセンスを満喫できる小さな逸品。衣装からセットの隅々まで綿密に作り込まれている。高そうな衣服に身を包んだ女が工具屋で斧を購入する違和感。彼女が斧を振>>続きを読む

マエストロ:その音楽と愛と(2023年製作の映画)

2.0

映像、音楽、特殊メイクなどなどの作り込みは立派だし、バイセクの大指揮者とその妻の物語は波乱万丈なのだけど、いっこうに心が打たれない。ブラッドリー・クーパーによるバーンスタインの再現レベルが高すぎて、形>>続きを読む

グランツーリスモ(2023年製作の映画)

3.5

家族内の葛藤、鬼軍曹との交流、挫折、そして復活というテンプレをがっちり押さえたウェルメイド映画。ル・マンでクライマックスを迎えるのは、マンゴールド『フォードvsフェラーリ』もそうだった。この長時間レー>>続きを読む

民衆の敵(1931年製作の映画)

4.5

傑作。手際のよいストーリーテリングと、簡潔にして要を得た描写。こうしたトーキー初期映画の美点が、今日にあまり継承されていないのが残念。雨を降らすとなれば容赦ない土砂降り。人を殺すことに躊躇しない男が殺>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.5

辛気臭い顔つきをした男女の不器用なすれ違いラブストーリー。30年前のカウリスマキ映画なら、マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンという、極め付けの辛気臭い顔つきコンビがカップルを演じるところだ。臙>>続きを読む

春婦傳/春婦伝(1965年製作の映画)

3.5

あやかしの映像に目を見張るだけでなく、中国東北部に見立てた荒涼とした大地と、そこで展開される熱い物語に引き込まれる。この頃までに作られた戦争映画には、『人間の条件』でも『兵隊やくざ』でも、実際に体験し>>続きを読む

ブルーベルベット(1986年製作の映画)

3.5

デヴィッド・リンチ作品の中では本作と『ストレイト・ストーリー』が好み。嗜虐・被虐の描写よりも、カイル・マクラクランがクローゼットの中からそうした光景を窃視する眼差しにどきどきする。また、その舞台となる>>続きを読む

ウォンカとチョコレート工場のはじまり(2023年製作の映画)

2.5

ティモシー・シャラメは間違いなくスターだ。そして老境に入ったヒュー・グラントの吹っ切れた怪演も素晴らしい。極彩色のファンタジー世界は『虹の彼方に』以来の伝統の上にある。

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

4.0

オープニングでクレジットタイトルを全て流すと、老夫婦が2つの窓を隔てて会話しベランダで朝食を取る幸福感のある場面から始まる。その後は、心臓を患う夫と認知症の妻がそれぞれ死に向かうプロセスが冷徹に描かれ>>続きを読む

間違えられた男(1956年製作の映画)

3.5

警察に捕えられ、拘置所に搬送されるまでが心底怖い。叫んだり暴れたりせず茫然自失のまま、何度も妻に連絡を取ろうとするヘンリー・フォンダ。保険会社内の事務員たちの表情や目配せ、フォンダを犯人と決めてかかる>>続きを読む

ショーイング・アップ(2023年製作の映画)

4.0

よき。ばらばらに暮らす家族や隣人の中でいちばんワリを食っているミシェル・ウィリアムズ。ギャラリーでの展示を控えて、そのモヤっとした気持ちが、シワい表情と猫背の姿勢に現れている。ぼんやりした物語は、猫と>>続きを読む

レンフィールド(2023年製作の映画)

3.5

ドラキュラを演じるニコラス・ケイジが心底嬉しそうに見えて吉。ケイジと同じくらい濃い顔立ちのショーレ・アグダシュルーが、ケイジと渡り合うところがもう少し欲しかったかな。

暗黒街の美女(1958年製作の映画)

4.0

引き締った日本製フィルム・ノワール。オープニングの地下水道から気合が入っている。倉庫屋上の立ち回り、霊安室内のサスペンス、トルコ風呂施設内からボイラー室内に至る立ち回り、いずれも見事だ。霊安室内でフラ>>続きを読む

ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女(2014年製作の映画)

4.0

これは好み。闇の多いモノクロ世界で人やカメラが動き、例外はあるけれど、なかなか強度のあるショットが続く。ボーダーシャツにチャドルをまとった美少女吸血鬼は、子供にいくたびも「良い子」かと問い詰めたり、逃>>続きを読む

大河への道(2022年製作の映画)

2.5

橋爪功は老年にあって至芸の境地。いい顔をしている。中井貴一も松山ケンイチいい顔だ。ウェルメイドのドラマ。中西健二監督の作風は、40年前の学生映画の頃から変わらない。

モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン(2022年製作の映画)

3.5

理由も経緯も明かされない超能力を備えたチョン・ジョンソは、12年間を精神病院で過ごして成人年齢に達した今も社会性が欠けた子供のままだ。この無敵のキャラクターが、病院を脱出して猥雑な街で暮らしていく。成>>続きを読む

マッドタウン(2016年製作の映画)

3.5

文明が崩壊した近未来のディストピアではなく、人間社会の領域外の砂漠で、人間社会から不要とされた人々が放逐された世界を描く。そこには、人肉食の筋肉集団と文明的な麻薬漬け集団があり、また、どちらにも属さな>>続きを読む

ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983年製作の映画)

2.0

プロットが共有されている『サンダーボール作戦』と比べると劣化版に見えてしまう。全般に大金が投じられていない印象。

007/サンダーボール作戦(1965年製作の映画)

3.5

惜しみないカネの使い方。重厚かつリアルなセットは言うに及ばず、ダイバーを大量に投入した伝説の水中乱闘場面はアートの域に達している。このシリーズは最新作に至るまで徹底したプロデューサー映画であり、監督の>>続きを読む

ふたつの部屋、ふたりの暮らし(2019年製作の映画)

2.5

屋内や夜の暗さ、ドアの覗き穴からの窃視、焦げるフライパンと奥から人が駆けつける間合い、物言えぬ老女のクロースアップと目の動き、といった台詞に頼らぬ演出が、高齢の同性愛女性カップルの物語以上に印象に残る>>続きを読む

パリタクシー(2022年製作の映画)

2.5

安心して観ていられるウェルメイド作品。回想場面の底の浅さが残念だ。