mat9215さんの映画レビュー・感想・評価

mat9215

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光に叛く者(1931年製作の映画)

3.5

ホークスの初期発声映画。音声が効果的に使われている。たとえば、オープニング。控え室の刑事たちがゲームに興じていて、犯罪現場に向かってもずっとゲームのことを話題にしている。あるいは、刑務所の房でフィリッ>>続きを読む

ハード・フィーリング!(2023年製作の映画)

3.5

お下劣なネタを、しっかりとティーンネイジ・ラブコメに仕立て上げている。たとえば、幼なじみの男女がお互いへの想いに溢れて見つめ合うとき、長いカットを割らずに踏みとどまっていることに股間、もとい、好感をも>>続きを読む

しとやかな獣(1962年製作の映画)

4.0

人間のクズたちが、クズの理を堂々と語るクズ映画。多くの人が指摘するとおり、『パラサイト』や『万引き家族』の元ネタの一つだろう。多彩なカメラアングルは、登場人物たちの視点だったりする。会話する背景に欄間>>続きを読む

キラーカブトガニ(2021年製作の映画)

2.0

前評判につられてシャープな演出を期待すると肩すかしを食らう。できれば登場人物たちと同じようにハッパを決めながら(日本では無理だけど)、ぬるーく楽しむ映画。主役はトレーラーハウス居住の兄弟で、兄はハッパ>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

2.5

すっごく作り込まれた世界はお見事だし、ディテールの一つ一つは面白いのに、あまり感興がわかず。ケイト・ブランシェット扮する主人公が見たり感じたりする数多の不穏なものが、長い尺数の映画を動かしていないよう>>続きを読む

私、君、彼、彼女(1974年製作の映画)

3.5

同一屋内に終始する第一部と第三部はしんどかったけど、第二部はトラック内から、ダイナー、駐車場など空間的な広がりもあって興味が持続した。観る者の居心地を悪くさせるしつらえと、映画への配慮が同居している。>>続きを読む

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

3.5

マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンの不器用なすれ違いが泣ける。ブタ箱で登場したときは不穏なおっさんだったサカリ・クオスマネンが、だんだんいい奴になってくるのも見所。

海底大戦争(1966年製作の映画)

3.5

そこそこ楽しめる半魚人SF。若き日の千葉真一が、立ち回りこそ少ないけれど西欧人たちの中で活躍する。恋人のヒロインが、なぜか「アベー」と名字で呼びかけるところがご愛敬。愛嬌と言えば、成田亨デザインの半魚>>続きを読む

My Father Was Right(英題)(1936年製作の映画)

3.5

サッシャ・ギトリを真ん中にした親子三代にわたる物語で、父から子へ教えが継承される。父と子はどの代でも仲良し。ギトリの妻が唐突に逐電(死語)し、20年後に抜け抜けと戻ってきてギトリを煙に巻く。この妻役の>>続きを読む

ヒット・パレード(1948年製作の映画)

3.5

ハワード・ホークス本人が認めている通り、オリジナルの『教授と美女』に比べると見劣りする。何より、ダニー・ケイとヴァージニア・メイヨのコンビが、ゲイリー・クーパーとバーブラ・スタンウィックより弱い。『死>>続きを読む

EO イーオー(2022年製作の映画)

4.0

いつものようにシャープなスコリモフスキ。ロバのEOの悲しげな眼差しを捉える広角レンズのクロースアップショットは『GUNDA/グンダ』を想起したりする。ロバ視点の冒険譚では、人間は点景にすぎない。EOを>>続きを読む

あのこと(2021年製作の映画)

2.5

第二次大戦中を舞台にしたシャブロルの『主婦マリーがしたこと』で処置者はギロチンにかけられた。それから二十年近くたっても事情は大差なかったようだ。処置を受ける者を描くという設定は『17歳の瞳に映る世界』>>続きを読む

一寸先は闇(1971年製作の映画)

4.0

オープニング、着衣のミシェル・ブーケと金髪裸女が戯れるうちに大事に至るツカミが上々だ。そして、懊悩するブーケが人を殺したことを告白する2つの場面が秀逸。一つは、友人フランソワーズ・ペリエに告げる場面。>>続きを読む

野獣死すべし(1969年製作の映画)

4.0

火サス風のサスペンスプロットが、重層的な構造と官能的な映像で描かれる。晩餐場面の破壊力に戦慄した。主人公のアパルトマンのチェスセットや、ブルターニュ邸宅内の絵画や置物など、ちょっとイカれた装飾も歪んだ>>続きを読む

アンナの出会い(1978年製作の映画)

4.0

隅々まで息苦しいくらい映画に配慮されている。冒頭の駅ホームの長回し、ホテル室内の横移動、列車内の会話、母と語らうレストラン。しっかり作りこまれた映像と環境音。観る者に映画を観ていることを意識させる映画>>続きを読む

ノンちゃん雲に乗る(1955年製作の映画)

2.5

鰐淵晴子と徳川夢声が綿菓子のような雲の上で語り合う。徳川夢声は仙人というよりは村の古老のような出で立ちだ。鰐淵晴子がバイオリンを演奏し、バレエを舞う場面はミュージカル風の天上感が溢れる。藤田進と原節子>>続きを読む

ショック療法(1972年製作の映画)

2.5

若さを維持するクスリを製造し、金持ちの顧客に処方する怪しげな医師。怪しい医師に扮するアラン・ドロンがいかがわしくてハマリ役。アニー・ジラルドも中年の域に達した肉体を惜しげもなくカメラに晒す。話の展開は>>続きを読む

オルメイヤーの阿房宮(2011年製作の映画)

3.5

オープニング、舞台で歌う男を見つめる刺客。刺客が事を成し遂げると、歌う若い女のクロースアップ。このツカミにやられる。途中で寝ちゃったけど、海岸で男女を迎える舟だとか、ラストの長回しでおっさんの顔にゆる>>続きを読む

幸せをつかむ歌(2015年製作の映画)

2.5

予定調和の展開で安心して観られる。ドラマに対して、バンドの演奏場面が長い。ジョナサン・デミはバンド音楽映画はお手のものだし、メリル・ストリープも熱演ではなく熱唱なので安心して観ていられる。家族が揃った>>続きを読む

デジレ(1937年製作の映画)

4.0

屋内の場面が中心だから演劇的というわけではない。ショットの選択やその連鎖が極めて映画的だ。登場人物たちの夢が立て続けに描かれる場面の鮮やかさのみならず、会話場面でも唐突な切り返しがあったり、イマジナリ>>続きを読む

さよなら、私のロンリー(2020年製作の映画)

2.5

ホワイトトラッシュものかと思ったら、親娘三人でこすい犯罪を続ける歪な家族ものだった。ゆるく笑える。天井の縁から壁面に流れ落ちるピンクの泡や、何度も揺れる地震といった象徴っぽいできごとには、あまり心を動>>続きを読む

レイチェルの結婚(2008年製作の映画)

3.5

ホームムービー風のカメラワークとよく評されている。揺れたり、所在なげにさまよう手持ちカメラ撮影というだけでなく、撮影される人たちが撮影する人を近親者として受け容れている内輪感がその印象を与えるのだろう>>続きを読む

TOVE/トーベ(2020年製作の映画)

2.0

トーヴェ・ヤンソンはスウェーデン語の話者だった。フィンランドは公用語にフィン語とスウェーデン語の二つを定めている。スウェーデン語の話者は人口の1割であり、トーヴェ・ヤンソンはフィンランドのスウェーデン>>続きを読む

王冠の真珠(1937年製作の映画)

4.5

これは傑作。サッシャ・ギトリ作品は、部屋の中で完結する舞台劇より、『トランプ譚』や本作のように時間と空間を越える作品が面白い。冒頭、ギトリがジャクリーヌ・ドリュパックと目線が交わらない切り返しで会話し>>続きを読む

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

3.5

アリ・アッバシの直球勝負。前作『ボーダー 二つの世界』は寓話的なつくりで当方の心には響かなかったけれど、本作は力強い。戦争帰還者の私的ジハドと、それを歓呼するイラン社会のミソジニーをストレートに描く。>>続きを読む

レッド・ロケット(2021年製作の映画)

4.0

クズばかりが登場する映画は面白い。ダメダメなプアホワイトを描く映画群の中でも、本作は準巨匠ウィリアム・フリードキンの『キラー・スナイパー』(原題の『Killer Joe』がイカしてる)に並び立つ。主人>>続きを読む

Diary of a Fleeting Affair(英題)(2022年製作の映画)

4.0

サンドリーヌ・キベルランとヴァンサン・マケーニュの二人が、出会いから別れまで全編ひたすら会話する。日付ごとに場面が変わっても、二人以外の人物はほとんど登場しない。マケーニュには妻子があるけど、ドラマに>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

2.5

クルマのフロントスクリーンには風景の光が映り込む。コリン・ファレルの夫とジョディ・ターナー=スミスの妻が会話するときは、対面でもリモートでも真正面から切り返される。こうしたちょいと映画的なディテールに>>続きを読む

真夏の夜のジャズ(1959年製作の映画)

3.5

オープニングはクラシックカーでのんびりと会場に向かう人々。昼間の会場はヴァカンス気分一杯で、ゆるーい雰囲気がいい感じ。夜に至って会場も演奏も熱くなる。当時ですら古臭いはずのサッチモやマヘリア・ジャクソ>>続きを読む

パリ13区(2021年製作の映画)

2.5

男女のぐだぐだ話はフィリップ・ガレルに感触が近い。男女のぐだぐだ話のフランス映画ならトリュフォー、最近ではエマニュエル・ムレが好み。本作ではエロサービスサイトから始まる女同士の交流が面白い。どちらも金>>続きを読む

ベルイマン島にて(2021年製作の映画)

2.5

猫背のティム・ロスに、でっかいヴィキー・ロスのカップルは、年齢以上にビジュアルが不釣り合いだ。この違和感がドラマを貫く。劇中劇のミア・ワシコウスカはスラブ系の頑なそうな顔つきが板についてきた。ミア・ハ>>続きを読む

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年製作の映画)

2.5

『カメラを止めるな!』と同様、前半は困った感じだったけど、後半に盛り上がる。ゴールを目指してプロジェクトを完遂する。そのプロセスでチームに一体感が生まれたり主人公が成長するという、プロジェクト完遂モノ>>続きを読む

夢を見ましょう(1936年製作の映画)

3.5

ドラマが展開するのは室内、俳優の全身を捉える長回し。ほとんど舞台劇のような作りだけど、ギトリの映画には、これぞ映画だという瞬間がある。それは、長回しのショットを切り替えるタイミング、高速のパン、俳優の>>続きを読む

ミーン・ストリート(1973年製作の映画)

3.5

生き方が定まらない若造のぐだぐだ話が、フィルムノワールのような漆黒の画面で、ニューヨークの薄汚い(ミーンな)街を舞台に描かれる。流れる音楽は、オールディーズ、ストーンズ、ソウル、それにイタリア語の歌謡>>続きを読む

アムステルダム(2022年製作の映画)

2.5

男二人と女一人のトリオは『冒険者たち』と同じだけど、女は途中で死なないし、ペアにあぶれた男もちゃんと相方を見つける。どちらのカップルも白人と黒人というのは、最近の映画らしく政治的に正しい設定だ。実話ベ>>続きを読む

刑事ジョン・ルーサー: フォール ン・サン(2023年製作の映画)

2.5

ジョージ・ミラーの『アラビアンナイト 三千年の願い』を観て、イドリス・エルバという俳優を知った。本作では、元のボスから死への衝動をもっていると指摘される。そんな何かを背負っている役柄を演じて説得力があ>>続きを読む

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