同じ時期に製作された『生まれてはみたけれど』にも通じる子どもたちの世界。父親と子どもはどちらも言葉に詰まると尻や頭を掻く。この時期の小津作品で住居内に溢れている英語文字が本作では少ないが、岡田時彦が得>>続きを読む
家の外と中の人物の切り返し。屋外で恋仲の二人が座る完璧な構図。列車と並んで疾駆するトラック。
自動的に文字を打つタイプライターや心霊現象はみなマジックという設定なれど、ロバート・ヤングの居宅の自動ドアが音声認識によって操作されるのもマジックなのか。「女性霊媒を演じるグローリア・ホールデンの虚空>>続きを読む
ルーブル美術館内のかけっこも三人が踊る場面ももちろん素晴らしい。なにより全編を通じてこわれもののように儚げなアンナ・カリーナに心がざわつく。
説教臭くなりかねない題材だったり、狂騒的な描写が続くのになぜか心を掴まれるのは、すべての登場人物たちに対する温かいまなざしのゆえだろう。主役のアノーラやその職場仲間、心底おバカなロシアの御曹司、間抜け>>続きを読む
バイオピックで実在の人物を演じる俳優の演技が形態模写にしか見えないときがある。レミ・マレック(フレディ・マーキュリー)やブラッドリー・クーパー(レナード・バーンスタイン)もそうだった。本作のティモシー>>続きを読む
アパートの部屋で髭もじゃの岡田時彦と川崎弘子が向かい合って座っている。岡田は就職できないことを嘆く。川崎が目を転じると次のショットで岡田も同じ向きに目を転じる。すると次のショットはビルから突き出た床屋>>続きを読む
ロバロドの『スパイ・キッズ』シリーズをさらにゆるくした感じ。老け顔のフランク・デュボスクはジャン・レノの倅に見えない。Netflixシリーズ『エミリー・パリに行く』に出ているブルーノ・グエリーは面白い>>続きを読む
数多いアレン作の中では(あと一作でコンプリート)好み。(売れっ子映画監督の狂騒的な生活と幻想はまるっきり『8 1/2』で鼻白みそうなところ、シャープな笑いと映画的な描写が楽しめる。撮影はゴードン・ウィ>>続きを読む
作り手たちが作り手たちを描く作品世界に深く深く共感していることが伝わってくる。ただ、劇伴音楽と音声とのバランスが極端で、音声を聞き取ろうとしてヴォリュームを上げたら、劇伴音楽が盛り上がったときに我が家>>続きを読む
ディテールが作り込まれたフェイク伝記映画。ウディ・アレンの『ギター弾きの恋』とかトッド・フィールドの『TAR/ター』の系譜。本当の伝記映画は史実とか実物に縛られて、たとえば『レニー』はずいぶん窮屈な映>>続きを読む
ショーファー(お抱え運転手)の制服とサングラスがよく似合うアラン・ドロンは美貌と卑しさが同居している。走るトラックの正面にすがりついたりダッシュで走ったり身のこなしが軽い。絵空事っぽいサスペンスプロッ>>続きを読む
シガニー・ウィーバーの熱演映画。帰りが遅い夫に憤り用意したディナーとワインを納戸に持ち込んで一人で食べ始めたり、見知らぬ自動車が近づいたのを見るやすかさず拳銃を手に取るオープニングからヤバさが際立つ。>>続きを読む
快調なシオドマク。酩酊してスタンウィックにぐいぐい迫っていくウェンデル・コーリーは今なら警察にタレ込まれるレベル。全体に暗い画面が多い中で、殺人の舞台となる屋敷内のカーテンや、その後に事件を糊塗しよう>>続きを読む
フランスの地方都市でも公営の高層住宅に居住するのは貧しい人々。黒人のキャラクタもいる。子どもたちが巻き起こすカオスはラジ・リ『レ・ミゼラブル』のようなバンリューものに通じている。主要な登場人物はほとん>>続きを読む
前作『サンセバスチャンへ、ようこそ!』は女医さんに入れ上げる爺さんがキモくてウディ・アレンはもう駄目だと思ったけれど、本作はなかなか快調。サスペンスのプロット(火サスなみかも)が澱みなく進んでいく。撮>>続きを読む
同じストーリーを反復してずらすのはもちろん『カメ止め』だけど、安アパートに独居する老人男性が主役というのは『PERFECT DAYS』だ。冴えない老人が殺し屋稼業に従事しているのも、顔立ちの綺麗な老人>>続きを読む
実写場面が多くてアニメーションが少ないのがちょっと物足りない。夢にも似た脈絡のない世界では実写場面でも生身の人間とうつろな人形が唐突に入れ替わる。アントニアー・キーセンという俳優は生身の人間にふさわし>>続きを読む
never a dull momentムービー。ショック描写の数々は楽しめるけど、映画にサスペンスを求める人にはつらたん。暗部でディテールが見えにくいのも恐怖を醸し出すというよりはサスペンスを減じてい>>続きを読む
たまたま今朝聞いていたカナダ国営放送のボッドキャストで原作が紹介されていて、本作が最初の映画化(2020年までに4回)だったことを知った。フランス出身の著者がカナダで執筆し、鉄道事故死した後にフランス>>続きを読む
介助の場面でも会話の場面でも沈黙が雄弁。すべてを諦めたようなティム・ロスのたたずまい。介助している、あるいは介助していた人に憑依したような嘘をつくとか、ランニングマシンや道路をハイピッチで走る生命力を>>続きを読む
倒叙型サスペンスにロマンスを絡ませた無理のあるプロットでもディターレの演出は冴える。警察署内で激論の後にペンダントライトが揺れて人々の顔に影が行き来する。あるいは、被疑者の少女が尋問されるのを覗くマジ>>続きを読む
リアル・ペインという題名通りにイタさが炸裂するアイゼンバーグ&カルキンのコンビ。悪態をつくカルキンはもちろんのこと、ツアーメンバーに弱さを剥き出しに語るアイゼンバーグも相当だ。東洋系イギリス人のツアー>>続きを読む
子どもたちのクロースアップで始まり、子どもたちのクロースアップで終わる。チェルノブイリ事故から数年後ということもあり、核廃棄物施設の建設計画に対して地元の人々は反対する。意見を表明するインタビューだけ>>続きを読む
初見。毎度変わらぬ妄想ワールドとイカれた登場人物たちが微苦笑を誘う。ギャングのロバート・ロジアの笑顔と怒りの振れ幅の大きさ。あるいはガラスのテーブルの角が頭に刺さった死体。リンチ御大が手がける音響も手>>続きを読む
緩急自在の演出に隙がなく、ショットの一つ一つに必然性がある。物語を手際よく進める一方で、ここぞというところでは長回しでじっくりと見せる。死地に赴くために安酒場の中を進むジェームズ・キャグニーは、ピアノ>>続きを読む
労働に従事する服装でカメラに堂々と対峙する人々は、アウグスト・ザンダーの写真に登場する人々と共鳴している。自分が語る音声を聞く姿もよい。ドキュメンタリー映像に登場する人々がカメラ=撮影者に対して語るこ>>続きを読む
ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアが相手を思いやり、ときには逸脱する会話劇はスリリング。ジョイスの『ザ・デッド』が二人の話題に上った時に予感した通り、ジョン・ヒューストンの遺作のエンディングが>>続きを読む
田舎道を軍事教練で行進する学生たち。その後を女学生たちが追う。人々が進む方向に移動するカメラで人々が真正面から捉えられる。学生たちが横並びで突撃を開始すると、カメラは一転して横から学生たちを捉え、走る>>続きを読む
ドイツ軍人と恋仲になった女性たちが丸刈りにされ水を浴びせられる記録映像(femmes tondues)から始まり、LGBTQ+描写まで盛りだくさん。
ウィル・フェレルはいつもながら顔だけで面白い。リース・ウィザースプーン側は南部の白人ばかりで、フェレル側は多くの人種が集っている。
ラファエル・ティエリーというネアンデルタール系の骨相を持つ俳優で成立している静謐なメロドラマ。粗野な風貌に似合わぬ落ち着いた声で喋り、バグパイプを弾く。ステージにバンドのメンバーとして登場し「盛り上が>>続きを読む
オープニングでは、ジョーン・レスリーの居宅内で手際よく物語が始動する。階段を上がった二階の廊下という狭い空間で人が行き交い、レスリーが唐突に転倒し、ジョーン・フォンテーンが登場する。ザカリー・スコット>>続きを読む
吉田大八の過去作『美しい星』や『羊の木』にあった不穏な雰囲気が漂う。前半で丁寧な暮らしぶりが客観的に描写される一方で、後半で悔恨や欲望や不安が夢や妄想として溢れ出すのは主観の極みだ。ギャスパー・ノエの>>続きを読む
『グリーン・インフェルノ』を作ったイーライ・ロスとは思えないレイティングPGワールドだ。ロバート・ロドリゲスが『アリータ:バトル・エンジェル』を作る感じ。赤髪のケイト・ブランシェット様は頑張っている。