pherimさんの映画レビュー・感想・評価

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シド・バレット 独りぼっちの狂気(2023年製作の映画)

3.6

ピンク・フロイドを創った男の天才性と、脱退後の30年へ迫ったドキュメンタリー。

狂ったと噂されたその後の足取りを、関係者取材から炙りだす。創造性と実人生との交接が孤立を伴う様に、サリンジャーなどが想
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バービー(2023年製作の映画)

3.8

マーゴット・ロビーのハマり具合と、ワンハリでもスーサイドでもなくアイ,トーニャが想起された意外性。

グレタ・ガーウィグ監督、レディ・バード&若草物語からの展開ヤバ、次が楽しみ。

あとライアン・ゴズ
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アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル(2017年製作の映画)

3.7

ナンシー・ケリガン殴打事件と五輪本番での号泣が世を沸かせたトーニャ・ハーディングの伝記コメディ。ホワイトトラッシュ=白人貧困層のガラの悪さをダシに笑いをとるブラックな殺伐描写が妙に説得的で、可笑しくや>>続きを読む

ありふれた教室(2023年製作の映画)

4.0

恐怖の教室。校内で相次ぐ窃盗をめぐり、教師カーラは証拠を押さえ告発するも、事態は壮絶な地獄絵巻へ。

多様性の極地と化した学校を素材とする映画が増えた昨今でも、この方向性は新しい。権利に煩いアラブ人男
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ティアーズ・オブ・ブラッド(2022年製作の映画)

3.7

地下鉄ホームから転落した若者と、急停止させた運転士が父子と判明して始まるクライムノワール。

警察内部でも汚職や父娘関係が描かれ、謎多き運転士ともども錯綜する、ラジ・リ版レ・ミゼラブルで脚本を手掛けた
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夢の中(2023年製作の映画)

3.0

カメラマン志望の青年と、死の予感に包まれた女性との夢幻的ボーイミーツガール物語。

画と音楽で魅せる映像詩展開ながら、台詞がダブつく印象に若書き感も孕む都楳勝監督作で、『階段の先には踊り場がある』他を
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蝸牛(2019年製作の映画)

3.1

中学3年生となった野球少年は、己の性に違和感を覚えだす。幼馴染の少女は、意中の少年がトランスジェンダーとして目覚める予感に慄える。

性未分化をカタツムリに象徴させる発想の起点が面白い、『夢の中』の都
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フューチャー・ウォーズ(2022年製作の映画)

3.4

原発の爆発により終末へ向かった2555年の世界線から、爆発を防ぐためタイムトラベラーが訪れる。

時間警察との格闘などがユーモラスに描かれ、フランス産低予算コメディ映画特有の軽躁感が全編を占めながらも
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ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)

4.2

戦争映画の極北がまた一つ。沖縄・前田高地の凄惨。『パッション』を凌ぐ血肉の騒擾、砲火を浴び信仰を貫く姿影。メル・ギブソンが太平洋戦争を撮ればという期待値を完璧に充たす本作が、祈る男を通し鮮烈に描くのは>>続きを読む

トランスフュージョン(2023年製作の映画)

3.6

最愛の妻を事故で亡くした元特殊部隊員が、息子との関係回復のため裏稼業へ手を出したら、さぁ大変。

“Transfusion=輸血”への着目は珍しく、音楽と孤立感ある夜描写が趣深い。ハクソー・リッジ他、
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

5.0

もうね、現代の神話でした。
砂こそこの現実の本性かつ依代っていう。

エイリアン並みに1を超えてきたDUNE 2、今日の語り部は道具にIMAXを使うのね。

シャラメもゼンデイヤも、佇まいだけで世界が
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.5

この喜びも悲しみも必ず終わる。
いまここにしかない闇と光。
夜明け前が一番暗い。

メンタルを病む主人公ふたりにこそ、現代に適応した健常者たちよりずっと体温を感じる世界観。次は何を見せてくれるのか、今
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人間の境界(2023年製作の映画)

4.0

難民を人間兵器とみなすベラルーシのEU移送政策と、対抗するポーランドの強制送還措置との狭間で、人間性を剥奪される人々。

傑作『赤い闇』の監督A.ホランドが、森奥でシリア/アフガン/ウクライナ難民らが
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殺人鬼の存在証明(2021年製作の映画)

3.7

“Казнь”

十年前の誤認逮捕で失墜した名誉挽回を賭して、熟練刑事が連続殺人犯を追い詰める。

ロシア映画独特の軽躁感を伴うクライムノワール展開は先が読めず面白い。プーチン政権下の元検事局長から
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青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)

4.0

台南のバイト先に現れた日本人女性に恋する青年が、やがて旅する切なき信越会津。

藤井道人監督/脚本の、東アジア恋愛映画の粋を極める巧さに慄く。中華圏の岩井俊二潮流に台湾新電影風味、主題歌ミスチルで主演
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ジョン・レノン 失われた週末(2022年製作の映画)

3.7

「23歳で初めて同棲した相手がジョン・レノン!」

オノ・ヨーコから交際を促された秘書メイ・パン。袂を分かったマッカートニーの訪問、デヴィッド・ボウイやエルトン・ジョンとのセッションなど“失われた週末
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メークアップ・アーティスト(2021年製作の映画)

3.8

メイクを学びに大学へ通っていいという結婚時の約束を守らない夫との軋轢と、雄大なザーグロス山脈との対照が爽快なドキュメンタリー良作。

撮影班の都会感覚に妻が影響されてると業を煮やす夫の姿はユーモラスで
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私は今も、密かに煙草を吸っている(2016年製作の映画)

4.7

超傑作。

ハマム(公衆浴場)での半日の出来事のうちに、《ここで女が生きること》の苦しみと軋み、歓びのすべてが照射される。

パピチャと同じアルジェリア内戦下1995年を、女性スタッフのみで撮り切った
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グンダーマン 優しき裏切り者の歌(2018年製作の映画)

3.5

東ドイツで気高く反骨の歌声を響かせたミュージシャンが、実はシュタージ(秘密警察)へ通じていた、という実録物。

1980年代東独の若者文化めぐる再現演出と、度々挟み込まれる雄大な褐炭採掘の労働現場が目
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ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ(2022年製作の映画)

3.7

おかん、奮戦。

グアンタナモへ収監された無実の息子を救うべく、トルコ移民の立場からドイツ政府を動かすまで。

前作『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』からの展開、メルケルに母的連帯感抱く場面などアン
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無名(2023年製作の映画)

4.2

トニー・レオンの含み笑いがドハマりするスパイ活劇。

40年代の魔都上海で錯綜する各勢力利害を、幾重にも真意を隠すスパイたちの対立が象徴する。

W主演で憎み合うワン・イーボー/王一博とのスタントなし
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パレード(2024年製作の映画)

3.5

この世に未練を残した者たちが集う三途の河原の人間模様。

息子を探す女/長澤まさみ、元ヤクザ青年/横浜流星、映画制作の想い残す男/リリー・フランキーら好演。ヴィレッジ/新聞記者の藤井道人監督作で、両作
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WEEKEND ウィークエンド(2011年製作の映画)

4.1

ゲイクラブで知り合った二人のある週末。ノッティンガムのありふれた街なかを舞台とし、会話を軸に映し出される濃密な二日間。心の動きを遅延させゆくテープレコーダーの効果が見事。丹念に場面場面を織り込むアンド>>続きを読む

システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたい(2019年製作の映画)

3.7

凄まじい癇癪もちの9歳少女。

母から愛されながらも距離を置かれ、施設の心ある専門スタッフさえ匙を投げる少女がはまり込む隘路に、発達障碍等と名づけるだけでは済まされない社会の矛盾が露出する。綿密な調査
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エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命(2023年製作の映画)

4.0

ローマ教会が、攫ったユダヤ人の子をクリスチャンとして育て、生家への帰還を本人が拒んで聖職者となった事件を描くマルコ・ベロッキオ監督新作。

無自覚の差別意識が全編を貫き、いい人こそ丸出しにしてくる姿に
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走れない人の走り方(2023年製作の映画)

3.9

駆け出し映画監督キリコが、ロードムービーを撮りたいけれどうまく行かない日々を駆け抜ける。🚐

予算枯渇やロケ車故障など難航するなか、飼い猫が逃げるわ同居人が産気づくわのてんやわんやなキリコの屈託描写が
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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間(2023年製作の映画)

4.2

本物の記者魂をここにみる。

ロシア侵攻下マリウポリに、国際メディアでは唯一残ったAP通信班による達成の凄味。

腹部を裂かれた妊婦の映像すらもフェイクニュースと分析したロシア報道を覆す決定的場面を含
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正義の行方(2024年製作の映画)

4.1

1992年福岡で女児2人が殺害された「飯塚事件」。死刑執行後に再審請求されたこの事件を巡り、当時の関係者を追う質実ドキュメンタリー。

県警、記者、弁護士、死刑囚遺族などいずれの語る姿も極めて冷静であ
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リバウンド(2023年製作の映画)

3.8

廃部寸前の弱小バスケ部が、ケガ人を出し5人だけで闘い、奇跡の連勝を遂げる一発逆転の王道スポ根。

釜山中央高校2012年の快進撃をベースとする『工作 黒金星と呼ばれた男』のクォン・ソンフィ脚本作。プレ
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私が女になった日(2000年製作の映画)

4.1

成長し男児との交遊を禁じられる9歳少女、離婚を望み自転車レースへ出場する女、夢みた嫁入り道具を買い揃える老婆。🚲を馬で追う親族の男らが無闇に勇壮。

キシュ島描写も興味深い、マルズィエ・メシュキニ初監
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クラメルカガリ(2024年製作の映画)

3.7

炭鉱町“箱庭”で頻発する陥没事故。その謎の奥向こうから攻殻ばりの自律機械が現れて。⛑️

クラユカバ酔狂翁も躍動する、ラピュタの立体街路を想わせる塚原重義時空、聖橋や外堀渡る丸ノ内線、煉瓦アーチ等々御
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ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ(2023年製作の映画)

3.6

福島県復興公営住宅・下神白(しもかじろ)団地で暮らす人々に、音楽を通じて寄り添う試み。

2011年原発事故時に避難してきた高齢者らと、支援グループとを繋ぐ時間の煌めきに、効率や生産性は無縁だし不要で
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クラユカバ(2023年製作の映画)

3.8

大正モダンな炭鉱町の地下領域“クラガリ”へ、集団失踪の謎を探りに貧乏探偵が潜りゆく。

スチームパンクの風趣溢れる塚原重義監督作。地図作成を志す男女や貸本業を営む情報屋、謎の武装機関や酔狂な機械博士翁
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プリシラ(2023年製作の映画)

3.5

ソフィア・コッポラ新作が、14歳でエルヴィス・プレスリーと恋に落ち結婚へ至ったプリシラを描くと知り、たまげる。

少女が愛した一人の男、からズレだすことで“エルヴィス”となりゆく男の横顔。🕺柔らかな光
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ハーダー・ゼイ・カム(1973年製作の映画)

2.8

若きジミー・クリフ主演作。スター歌手を夢みる貧村出身ニキの日々。

ボブ・マーリー初期想わせる画が多く、A24ムーンライトばりの艶肌カットも登場し不思議と魅せるB級作。ジャマイカ初の商業映画で色々拙い
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リマスター ボブ・マーリー(2018年製作の映画)

3.2

1976年12月3日のボブ・マーリー銃撃事件を追うドキュメンタリーTV番組2018年作。

陰謀説紹介含めミステリー調の構成による工夫で飽きさせない。“ボンゴマン~”↓で時の政治家エドワード・シアガを
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