『トニー滝谷』村上春樹の原作短編を読む西島秀俊のナレーションを時折イッセー尾形と宮沢りえが台詞として呟く。カメラの横移動で紙芝居を捲るように切り替わるシーンと室内なのに通り抜ける風。斬新な演出や坂本龍>>続きを読む
『楽日』主演は映画館。現在は寂れてハッテン場と化した福和大戯院の閉館日を描く。もぎりの女、映写技師、出逢いを求める客、噂の幽霊、老人と子供が脇役として館内にドラマを与える。無人の客席を固定カメラ長回し>>続きを読む
『ベルヴィル・ランデブー』行方不明の孫を探しにお婆ちゃんが犬を連れて海を越えての大冒険。僅かに台詞を抑制した分デフォルメされた絶妙な描写と過去と現在の差を活かした巧妙な脚本で魅せる。カエル漁やマフィア>>続きを読む
『パンチドランク・ラブ』プリン大量購入のマイレージで会いに行く本筋の面白遠距離恋愛が霞むほど車横転やオルガンや激ギレがシュールで笑う。一目惚れはキラキラ映像とピコピコ音楽で彩られて抱き合う二人を祝福し>>続きを読む
『ピストルオペラ』凛々しき江角マキコ、麗しき山口小夜子、妖しき韓英恵がアニメの如き極彩色に映える清順流デスバトル絵巻。生活指導の先生の頭上を飛び越える野良猫へ陽が射す一瞬の構図美に痺れて「バカ!」の絶>>続きを読む
『ラブ&ピース』このアリエナイ世界観に対して如何に許容できるかで本作を楽しめるかが決まる。自分は亀が作詞作曲した時点で折り合いを付けた。おかげで巨大化するラブちゃんが見させてくれた一時の夢物語の儚さを>>続きを読む
『龍三と七人の子分たち』西郷像前へ爺さんが集まるだけで謎のワクワク感が。龍三親分こと藤竜也にトンデモ衣装を着させた意義とトンデモ扱いを受けるモキチを中尾彬が演じた意味はデカい。予測できるギャグも不意を>>続きを読む
『インヒアレント・ヴァイス』主人公の探偵ドックと同じ目線で展開を追っていく仕立て。でも次々に濃いキャラが登場する中で人物相関図を把握しなきゃならず、結構な量の台詞を字幕で読まなきゃならず、その両方の忙>>続きを読む
『<harmony/>ハーモニー』螺旋監察官の赤い制服、吹き出る鮮血、健康を約束されたピンクの街、テーマカラーは赤系の筈が全く暖かみや温もりは感じない。その冷淡な赤の異常さで原作の世界観を表現する。そ>>続きを読む
『岸辺の旅』死んだ夫の空白の三年間を妻と共に巡る旅。その二人の旅路に幽霊が絡む。いつもの黒沢清なりの演出(暗と明を生かすテクが見事)で幽霊が現れては消えていく。しかし全く恐怖は感じない。各々の登場人物>>続きを読む
『屍者の帝国』原作の大胆な設定変更と潔い添削取捨が成功。友情を軸にする事で目的意識が明確になり、各国の文化的差異で景観が変移して飽きない。カラマーゾフの虚無感、大里化学での大立ち回り、終盤のロンドン塔>>続きを読む
『飛べないコトリとメリーゴーランド』現実の厳しさから自身が思い描く妄想へと逃避する女・コトリ。その妄想世界での大人になりきれてない非現実感がチャランポにドンピシャ。もも&小春がリアル世界にて別の役でマ>>続きを読む
『ローリング』憎めぬダメ男の転落をリアル且つシュールにエロスを絡めて描く冨永演出と役者陣の巧みさ。主人公・権藤のモノローグで〝これが現在の私です〟という自己紹介と共に餌を求めるヒナ鳥が映るので???と>>続きを読む
『さよなら、人類』整った構図のまま画面は動かない、全体的に褪せた色調で人物は白塗り、という特異なビジュアル。その空間の中で語られるはナンセンス、ペーソス、アイロニーたっぷりのギャグ。巧い絵と短い話の連>>続きを読む
『さようなら』退廃した自然の中でアンドロイドと共に暮らす難民の女。限り有る者と限り無き物…その対話は次第に哲学的問答へと変移。ラストは朽ち逝く裸体と咲き誇る花々に息を飲む。2時間弱の映画に悠久の時の流>>続きを読む
『恋人たち』彼女を殺された男は憎悪を。生活に圧された妻は性愛を。友情を逸らされたゲイは当惑を。三者三様にスクリーンへと丸裸で曝け出す。その姿は無名と有名の役者の不思議なアンサンブル。橋口監督は優しい眼>>続きを読む
『6才のボクが、大人になるまで。』3時間弱に凝縮された12年に及ぶ軌跡と役者達の嘘のない成長のグラデーション。その移ろいと共に綴られる何気ない日常に大切な瞬間が散りばめられていて、映画を振り返った時に>>続きを読む
『海街diary』女優たち四者四様の佇まい、女ならではのコミュニケーション、移ろい変わる四季の景観、古きよき日本の風習、切ない恋愛、淡い青春、制服、喪服、部屋着、そんな数々の〝美しさ〟が菅野よう子の音>>続きを読む
『ディアーディアー』地元で久々に顔を会わした三兄妹。長兄の土地売却、妹の浮気沙汰、次兄の虚言癖、彼等の鬱憤が通夜を境に爆発する。木魚で殴打、喪服に包丁、山中を追走。停電で我に返り揉め事が中断する場面が>>続きを読む
『滝を見にいく』遭難映画であってもパニックムービーではない。7人の遭難者は全員おばちゃん。パニックといえば得体の知れない何かを見付けて騒ぐ程度。何かしら色々と入っている鞄の中身で凌いでしまう。紅葉とモ>>続きを読む
『Mommy/マミー』愛の熱い母親、心で走る息子、力を貸す隣人。不器用な3人の関係性は正方形で繊細に切り取られる。人物は象徴的に、風景は抽象的に、時に美しく、時に荒々しく。その1:1のアスペクト比が意>>続きを読む
『野火』超小刻みに揺れる手ブレ、容赦ないスプラッター描写、荒々しくも丁寧に場面を刻む編集、毒を放つように美しい風景、塚本演出の持ち味が活かされて未だかつて観た事のない戦争映画に。熱波、湿度、腐臭、羽音>>続きを読む
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』爆破、爆発、爆撃、爆炎、爆裂、爆音、爆走、こんなにも〝爆〟という漢字一文字に相応しい映画は他に無い。泥臭くて血生臭くて男臭いジャンクアクションかと思いきや「女ナメ>>続きを読む
『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』イヴがパッツン頭にした時点から心に確固たるトキメキが。音楽で救われる若者たちを音楽で包み込んだ音楽映画。楽曲のみならずスチュアート・マードックの感性が服装にも映像にも反映>>続きを読む
『百円の恋』まずは一歩踏み出してみる。ギアが入り始めればガムシャラに。結果はどうであれ。このメッセージを一子を全身に憑依させた安藤サクラが女優魂による肉体的説得力で体現してスクリーンに焼き付けた。そし>>続きを読む
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』主人公の妄想と現実、劇中演劇の表と裏、虚実が入り乱れてしまう本編を超ロングショット風に仕上げる離れ技で一連の映画として筋道を立てた演出の妙。そして>>続きを読む
『太陽』光を浴びれば死ぬが進化した夜の新人類と進化しなかった昼の旧人類という特殊な設定。冷徹系で幾何学的なノクスの暮らす青白い街、熱情型で牧歌的なキュリオの生きる泥臭い村、プールやススキで印象的に二極>>続きを読む
『少女椿』エログロ&アングラな丸尾ワールドを下敷きにしながらカワイイ&オシャレなアイテムとファッションでガールズムービーに飾り立てた少女の夢物語。若しくは一人の少女に心血を注ぎ込んだ顛末を描いた中年男>>続きを読む
『貞子VS伽椰子』前半はJホラーの基本パターンを踏襲した見せ方で攻めて、中盤の霊能者コンビが登場してから俄然グングンと面白くなり、さぁこれからという最高潮に達する手前で〝そして呪い(PART2)は続く>>続きを読む
『あやしい彼女』舞台設定を銭湯にするなど随所の和風アレンジが効いてる。とにかく多部チャンがキュートで歌声のピュアさに驚く。志賀廣太郎さんまでキュートでピュア。韓国版とストーリーは殆ど一緒だったけど次郎>>続きを読む
『ダゲレオタイプの女』フランス仕様になろうがキヨシズム全開。逆に欧州らしさを味方にして過去邦画作品と比べて風格が増す。男を狂わせるのは、女か、霊か、写真か、屋敷か。時間を永遠に封じ込める撮影法が導く愛>>続きを読む
『キネマ純情』カメラは…手にする者に自我を与え、向けられる者に自信を与える。井口昇は…青春というジャンルで、キスをモチーフに、レズ・ギャグ・ホラー・ゾンビの要素を混ぜ、自身の映画哲学をアイドル作品とし>>続きを読む
『湯を沸かすほどの熱い愛』余命モノのお涙頂戴系とは一味違って本編の!や?(赤色・手話・ビンタ・エジプト)が伏線となって後々に涙腺を緩ませる。そして設定そのものまで伏線なのかと気付かされるラスト。「やり>>続きを読む
『神聖なる一族24人の娘たち』一人の女性につき一篇の〝性〟にまつわる物語が紡がれる。観る者は視覚的に聴覚的にマリという国の文化や風習を識る。摩訶不思議な異国へ旅した気分に浸れる106分間のウフフン滞在>>続きを読む
『オケ老人!』シティボーイズではナンセンスでシュールな舞台を作演してた人がチャーミングでホンワカな娯楽作品を撮るなんて。万人受けするクオリティかどうかの点では細川徹監督の方が三木聡監督より上回るかも。>>続きを読む
『海よりもまだ深く』これぞ是枝流ホームドラマ。自然なようで整理された雑談、普通なようで計算された日常、その中で時々浮き出るように仕組まれた台詞と場面にハッと気付かされて、フフと吹き出してしまう。台風の>>続きを読む