すGOさんの映画レビュー・感想・評価

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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.1

ノーランらしくないという評もあるけれど、物理学オタク君が、相対性理論の次は、量子力学の学者がプロメテウスの火を齎す物語へ。この人は首尾一貫しているのだ。だから政治ショーより、開発パートが圧倒的に面白い>>続きを読む

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)

4.0

この映画も「クィアをギミック(仕掛け)」として扱ったとして批判されるのかもしれない。でも面白い、見やすい。それこそがリュック・ベッソンの真骨頂なのかもしれない、様々なる意匠によるストーリーテリング。社>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

4.1

カウリスマキ観てヘルシンキに行きたくなったのと同じように、バスの映画でブリュッセルが好きになった。アケルマンではそうならなかったというところに意味を感じている。余り物で作ったスープを持って街を彷徨えば>>続きを読む

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

4.3

映画が実現した最良の「わが町」だと思う。ソーントン・ワイルダーがこの戯曲を書いた時の祈り、それぞれのわが町を祝福しようという願いが、時や場所を違えて形になったのだ。登場人物の1人が、今とは違う生活も続>>続きを読む

奇跡(1954年製作の映画)

-

自宅にパッケージもあるが、スクリーンでかかれば観るようにしている。奇跡について描いた映画であり、映画に起こった奇跡でもあるとエリセがこの前言っていた。
あらためて観てもとんでもない映画だと思った。
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.5

アリ・アスター新作、3時間 最初からずっと笑っていたら隣の人に変な顔され、それでしばらく堪えていたけどやっぱり吹き出したら「チッ」と言われた。新世代のスティーヴン・キングなのだと思う。その共通点は無茶>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.6

三宅監督は本作で、雨を降らせるのと同じ調子で制作部に「地球の自転、ちょい遅めで」とか注文したに違いない。ゆっくり回る世界で、登場人物たちは静かにしゃべり、光は柔らかくなり、恋愛からは慎重に距離を置き、>>続きを読む

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

4.0

英語を話す父親に連れられ、ゲール語(アイルランド語)を話す親戚の家にやって来たコット。彼女のひと夏の経験は、われわれにケルトの古層を垣間見させてくれたようだった。山の端や、木立の陰に、妖精の姿が見え隠>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.2

最後の暗闇の場面だけあればいいだけの映画だけど、エリセが31年ぶりの映画に169分かけたのはなぜかを考えている。決して長く感じない理由も。
劇中劇は存在感があり、とてもよく出来ている。主人公の海辺の家
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

-

新作前の復習で観てきた。自宅にも録画があるが、スクリーンでなければ見直す気にならない作品。スクリーンを通じて、ほの暗く、荒涼としたカタルーニャの大地に降り立って初めて見えてくるものがある。今回もう一度>>続きを読む

ビヨンド・ユートピア 脱北(2023年製作の映画)

4.0

北朝鮮の過酷な現状と息詰まる逃避行という建付けだが、5w1Hについて、観る側はもう少し考えた方が良いと思う。最大の問題は、登場人物の実在性だ。脱北者や、その協力者を顔出しすることのリスクを考えれば、制>>続きを読む

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)

4.0

ゴールデンカムイの長い物語を読んでいるとついつい忘れがちになるけど、杉元の行動の源泉は日露戦争だったのだと、良く出来た戦場シーンをたっぷり見せてもらうことで気付く。それから一転しての北海道のシーン。杉>>続きを読む

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

4.3

滑り込みで観られた。ギャスパー・ノエ最高!カットで繋ぐ絵を横に開いて同時にみせる。展開図みたいでおかしいけれど計算された絵作りだからとても見易い。それで今回はテクニカルは横に置いて、立派に物語してたな>>続きを読む

彼方のうた(2023年製作の映画)

4.1

「春原さん」のガワを使って全く別の世界を描き出す、あの店、あの部屋、あの2ケツが別の物語を語り出す。こんなのアリなんだと感心する。映画の鬼太郎を観た後だったからなのか、小川あんは目玉のお化けみたいに見>>続きを読む

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)

4.0

新年一本目。フィクションとして観た場合、この主人公は死なねばならない。しかし、生き続けたままベストセラーを書くことになるところが、人生のままならないところ。俳優陣が素晴らしく、岡山天音のパーソナルベス>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

川柳を作りました。「ねえ平山、ジャンヌ・ディエルマンは馬鹿だなあ」。
いまどき晴耕雨読かよとか、あんな綺麗な公衆トイレがあるかよ、とかいう批判は的外れだと思うし、ヴェンダースの目に映る東京を描いてくれ
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ゴーストワールド(2001年製作の映画)

4.2

2001年の傑作「ゴーストワールド」未見だった。「ライアンシリーズ」の娘役で憶えていたソーラ・バーチの怪演が光る。スカヨハも若いなあと。毒舌、冷笑的なユダヤ人の主人公の口舌は心地よいが、高校卒業したば>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

古いラジオから聞こえるウクライナ戦争のニュース。旧作かと思うくらい、この監督の描くヘルシンキの表情は同じで、うら寂しく、とぼけている。2020年代にジャームッシュの一番の駄作が映画館で上映されてるんだ>>続きを読む

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)

4.1

古典的ベストセラーだが、いま映画化する意味しかないなと思えた。五島慶太が構想した田園都市の豊かな暮らしと戦争の対比。そこに生を享けた妖精のような女の子が、周囲の深い愛情に包まれながらゆっくりと大きくな>>続きを読む

市子(2023年製作の映画)

4.1

何かが失われたところから始まる物語。松居監督の「ちょっと思い出しただけ」みたいに、時間、記憶を遡りながら進む展開は好みかな。社会から存在を消されてしまった人間が、どのように自分自身の輪郭を保つか、もっ>>続きを読む

さよなら ほやマン(2023年製作の映画)

4.2

「さよなら ほやマン」、キワモノだと思うでしょ、全然違います。3.11からの日々を描いた作品で最も腑に落ちるものだった。上手く言語化できない種類の映画でもあり、一つには俳優の演技のブレが、風の強い島の>>続きを読む

サイレント・ツインズ(2022年製作の映画)

4.0

ポーランド映画祭で観た、英国のバルバドス移民の物語。座組が複雑すぎて脳がバグるが、映画は立派なものだった。精神医学には「二人の愚者」という言葉があるそうだが、双子がお互いにネガティブな影響を与え合って>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

4.0

人気のある作家、作品を原作とした映画は難しい。幸いこれは原作を読んでなかったし、予備知識ほぼゼロで観ることができたので、自動的に「無知のヴェール」を纏うことができた。感想は一言、「原作読もうと思った」>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.0

映画館であっても客を206分椅子に縛り付けておくにはそれなりの設え、企みが必要。戦略家スコセッシの面目躍如といったところか。時系列を入れ替えた大胆な編集、エピローグをラジオドラマにしてしまうアイデア、>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.0

最先端のVFXを駆使し、戦争の描写の細部にも拘りを持ち、凡庸なヒューマンストーリーを最高の俳優が演じる。「シン・ゴジラ」を観ながら山崎監督は「俺ならもっと面白く作れるのに」と思っていたのかもしれない。>>続きを読む

愛にイナズマ(2023年製作の映画)

4.2

そのままで生きよ!今作でも石井裕也の莫大な肯定力に心を持っていかれる。何かを失いかけていた人間たちが、家族とか、家族的な結びつきの中で、自らをかろうじて救済していく。家族の価値とか、意味とか信じていな>>続きを読む

アンダーグラウンド 完全版(1995年製作の映画)

4.3

世界の人々が「民族浄化(エスニック・クレンジング)」という言葉を耳にしたのはホロコースト以来だっただろう。1990年、旧ユーゴスラビア領で起きたボスニア戦争は言葉を失うような凄惨さ、容赦のなさが事後的>>続きを読む

キリエのうた(2023年製作の映画)

4.2

アイナ・ジ・エンドと子役・矢山花にもたれかかった映画という見方も出来るけれど、二輪の花をここに植えたのは岩井俊二だから、それも含めて監督の手柄なのだと思う。三つの時間を行き来する脚本も強靭だし、なによ>>続きを読む

アンダーカレント(2023年製作の映画)

4.1

オリジナル作家のイメージが強い今泉監督だが、原作モノも積み上がってきて、そこでは原作に対する読みがますます深まっている様子が見て取れる。例えば冒頭堀が現れる場面で、原作では「釜場を見せもらっても…」と>>続きを読む

シークレット・サンシャイン 4K レストア(2007年製作の映画)

4.5

人の魂は何によって救われるのだろうか、ずっとこの問いを反芻しながら観ていた。主人公にとって人生はどんどん辛いものになっていくが、それでも人間はなぜ生きていこうとするのか、真正面から描いたこの作品は尊い>>続きを読む

福田村事件(2023年製作の映画)

4.3

見終わって総毛立つ心地がした。観ている間ずっと森達也に強く見つめられているように感じ、あなたはどう考える、何をする?と言われているような気がした。そして、このドキュメンタリストは何一つ諦めてはいない、>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

4.0

ウエスの世界は穏やかに継続していました。その世界の住人は、オスカーの獲得数とか、たたき出した興行収入とかと無縁に、ただそこに住むことに充足しているように見えます。トム・ハンクスも、スカヨハも、マーゴッ>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

4.1

まさに衝撃作。この映像体験は忘れられないものになるだろう。実話だからこそ、こうした手法が必要だったのだろうし、ドイツ語の響きはあくまで不気味だった。そしてとどめのワグナー。こうしてナチズムは現代にまで>>続きを読む

街をぶっ飛ばせ(1968年製作の映画)

4.0

アケルマンの第一作。初めて観ることができたが、たしかにここに、ジャンヌ・ディエルマンの監督がいた。勤勉な自殺、それはジャンヌが壊れていった同じ台所で起こった。

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.1

エドワード・ヤンはアジアにおけるロバート・アルドリッチであると思っている。構図主義というか、ガッと構図を取り、その中で登場人物たちが各々の心情を吐露したり、隠蔽したり、装ったりする。アルドリッチはカッ>>続きを読む

さよならエリュマントス(2023年製作の映画)

4.0

大野大輔フアンだから一票入れますが、絵に描いたような企画もの。アイドルの群像劇だから、いろんな制約があって面倒臭そうな案件。たださすがに大野監督で、ちゃんと作品に仕上げていた。地方をどさ回りするアイド>>続きを読む

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