トノモトショウさんの映画レビュー・感想・評価

トノモトショウ

トノモトショウ

屍人荘の殺人(2019年製作の映画)

3.0

しっかりとコメディもできる神木・浜辺の起用と、クローズド・サークルを作るためにゾンビものをミステリに組み込む荒唐無稽さが絶妙に合っている。しかしながらそれが逆にチープさを助長していて、推理の面白さが削>>続きを読む

オール・ザ・キングスメン(1949年製作の映画)

3.0

おそらくあらゆる政治家が彼と同じように、最初は高い志を持ちながら、権力という美酒に溺れていく。歴史上の独裁者が押し並べてスピーチで民衆の心を掌握するように、彼もまた力強い言葉(演技)によって我々を魅了>>続きを読む

ドーン・オブ・ザ・デッド(2004年製作の映画)

3.0

ロメロ版の要素は少なからずあるが、ほぼ踏襲されてはおらず、かといって真新しさを感じない。走ったり登ったりするゾンビ達は、さらに厄介な存在となっているが、基本的に生存者達は立て籠っているので、あまりその>>続きを読む

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

3.0

因習村におけるミステリ展開に、妖怪の要素を付加させた物語は、横溝正史的な既視感があって、これといった面白味は感じなかったが、妖怪と人間のバディものとして見ると、ある程度の胸アツさはある。「墓場鬼太郎」>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

2.0

幼少期にバービー人形で遊んだことがある女性(それはつまり「定番」のアメリカ人女性)にのみ向けられた作品で、ダイバーシティをテーマにしておきながら結果的にポリコレ的な物語になってしまっている。もちろんそ>>続きを読む

女の都(1980年製作の映画)

4.0

フェミニズムをテーマにしていると見せかけて、アンチ・フェミニズムを描いているのかと思いきや、実は大きな乳と尻が大好きな男の愚かさを示しているだけ。それはいわば女性に対する恐怖であり、敬慕でもある。後半>>続きを読む

20世紀少年<最終章> ぼくらの旗(2009年製作の映画)

2.0

前2作で張り巡らせた伏線の回収に忙しく、本来の物語の厚みを伝えきれずに、謎が解明されていく面白さすら取りこぼしていく。それでもラストはケンヂの歌の効果もあって感動的ではあるが、これは原作を読み込んでい>>続きを読む

20世紀少年<第2章> 最後の希望(2008年製作の映画)

2.0

1作目同様、詰め込み過ぎてしまったせいで物語の焦点が合わなくなってきている。「ともだち」を中心とした民衆の不気味さと、SF味を増した世界観は原作に忠実ではあるが、その割にスケール感がない。平愛梨の瑞々>>続きを読む

20世紀少年 <第1章> 終わりの始まり(2008年製作の映画)

3.0

キャラクターの再現度と、原作が持つストーリーの強度は感じるが、映画として再構築する上で極端に詰め込み過ぎていて、全体的にとっちらかった印象。もう少し削ぎ落とすべきだし、時系列の分かりやすさが欲しかった>>続きを読む

ジャッキー・チェンの燃えよ!飛龍神拳/怒りのプロジェクト・カンフー(1978年製作の映画)

3.0

3D用に作られた画面は奇抜さがあるが、2Dでも充分に迫力がある。三者三様の立ち回りが素晴らしく、特にブルース・リャンの足技には魅了された。物語はとっちらかっているものの、アクションの分量が多く、飽きさ>>続きを読む

マスク(1994年製作の映画)

3.0

カートゥーン的面白さを初めて実写に落とし込んだ作品だが、コメディアンとしてのジム・キャリーの底力があってこそ成立するものだ。細かな動き・表情・声色すべてが芸として一級品。キャメロンの美しさ、賢くて可愛>>続きを読む

続・激突!/カージャック(1974年製作の映画)

3.0

若い夫婦がただパトカーをジャックするだけでなく、そこに彼らなりの切迫した理由があることで、大衆を味方につけてしまったり、巡査や警部すら同情心が芽生えていく、という物語の枠組によってラストにおける悲哀や>>続きを読む

醜聞(スキャンダル)(1950年製作の映画)

3.0

いわゆる「熱愛記事」というものの馬鹿馬鹿しさ、マスコミへの痛烈な批判に満ちた佳作だが、物語の緩急が弱く黒澤らしいスペクタクルを感じない。テンポ良く展開するものの裁判モノとしては軽快過ぎるか。志村喬の演>>続きを読む

百万長者と結婚する方法(1953年製作の映画)

3.0

玉の輿に乗りたい婚活女子3人のコメディとして、オチの1シーンのために90分のドラマがある感じ。金より愛の方が大切、というほど愛に傾くような単純な展開ではなく、金に対しても一定の距離感を保ち続ける現実的>>続きを読む

Vフォー・ヴェンデッタ(2005年製作の映画)

3.0

殺人・テロを引き起こすアンチ・ヒーローであるVは、一つの民意としての象徴と言える。物語自体はファンタジーではあるのだが、歴史の中で似たようなことはいつだって起こっていて、ある種の現実味がある。必然性が>>続きを読む

狂覗(2017年製作の映画)

4.0

『狂覗(きょうし)』というタイトルが「教師」に掛かるように、それぞれの狂気があらわになっていく。チープさはあるが、撮影・演出にこだわりを感じるし、主人公である杉山樹志の演技も極まっている。ここまで気味>>続きを読む

AVP2 エイリアンズVS. プレデター(2007年製作の映画)

1.0

プレデターがちまちまやっている間に、エイリアンは増殖・虐殺を繰り返していく。善人だろうが女子供であろうが無差別に被害に遭い、最後は街ごと吹き飛ばされる展開に、胸がすくわけがない。人間の無力感は描けてい>>続きを読む

エイリアンVS. プレデター(2004年製作の映画)

3.0

エイリアンとプレデターの夢の対決に、どう意味づけしてストーリーに落とし込むかという点で、もちろん荒唐無稽ではあるのだが、一応ちゃんと筋は通っている。人間が介入する余地はなさそうだが、一人の女性を配置す>>続きを読む

プレデターズ(2010年製作の映画)

3.0

新しいタイプのデスゲーム設定にはワクワクさせられたが、展開は1作目とさほど変わらない。寄せ集めだからこそ各々に見せ場があって、芽生える友情や裏切りといった(ありがちではあるが)物語性は備えている。しか>>続きを読む

プレデター2(1990年製作の映画)

2.0

プレデターのバックグラウンドが徐々に明確になって、SFパニック映画然とした形へと切り替わったことで、前作よりも物語性は増した。だがマッチョなシュワちゃんではなく、無鉄砲なオジサン刑事一人で倒せる程度の>>続きを読む

プレデター(1987年製作の映画)

2.0

中盤あたりまでシュワちゃん映画っぽいゲリラ戦が繰り広げられるが、どこからか現れる異星人とのバトルに切り替わる突拍子もなさ。結局、目的も正体もよくわからない敵と孤軍奮闘の末、いつものタフネスでやっつけち>>続きを読む

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.0

本来交わらないヤクザと中学生という関係がカラオケを通じた友情へと繋がる上で、主人公二人がなんとも可愛らしい。ライトな物語ではあるが、身近な楽曲や個性豊かな演者らによって、程良いコメディとなっている。ラ>>続きを読む

オペラハット(1936年製作の映画)

3.0

善良で正直であることが変人と捉えられる背景には、ほとんどの人間が自己の損得だけを見据えていて、そこにやましさを抱えているからなのかもしれない。法廷で暴力を振るっても不問にされるという時代性はあるが、逆>>続きを読む

旅芸人の記録(1975年製作の映画)

3.0

ホームを持たない旅芸人は、戦争・占領・内乱によって祖国の形が不安定なギリシャそのものを象徴する。物語としてみると退屈ではあるが、全編を歌や音楽で彩りながら、そこに日常感を出すことで、よりリアルさをもっ>>続きを読む

かがみの孤城(2022年製作の映画)

3.0

様々な理由で学校に行くことができない少年少女達にとっての逃げ場として孤城がある。それは相談できる相手だったり、フリースクールのような別の環境だったり、そういった救いとなるものの象徴なのだろう。わかりや>>続きを読む

禁じられた歌声(2014年製作の映画)

3.0

戒律は都合良く解釈され、理不尽な法となる。イスラム過激派のニュースは耳にすれど、そこで生活する人々の現状まではなかなか伝わってこないものだが、映画として提示されると改めてショッキングに感じる。

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)

3.0

ヴィーガンは草食だから精肉したら美味いかも、という狂ったアイデアが生んだ奇抜な映画だが、そこにブラックなコメディ感を加えて批評的な解釈をも与えている。カニバリズムの不快感も馬鹿馬鹿しさの前ではシュール>>続きを読む

春夏秋冬そして春(2003年製作の映画)

4.0

湖に浮かぶ庵、四季折々の風景の中で、人間の業や輪廻転生といった仏教思想を、一人の男の生涯を通した物語として描く構成の巧さには感嘆させられる。美しさと侘しさがあって、のどかなのにセンセーショナルでもある>>続きを読む

美しき諍い女(いさかいめ)(1991年製作の映画)

4.0

描画を丁寧に切り取ることで濃密な時間が流れる。ペン先と紙、絵筆とキャンバスの擦れる音だけが空間を支配しているのに、画家とモデルそれぞれがのめり込んでいく。一枚の「完成された絵」のために、主体と客体の関>>続きを読む

ボーイズ・ドント・クライ(1999年製作の映画)

4.0

胸糞にも程があるだろうと言いたくなるが、実際の事件に基づいている限り現実の方が悲惨なのかもしれないと思うと胸が苦しくなる。LGBTに過剰に配慮する現代社会には違和感を持っていたが、このようなヘイトクラ>>続きを読む

サウルの息子(2015年製作の映画)

3.0

極端に限定的な視点は、物事の残酷さを想像力で無惨にも補わされる効果があり、同時に主人公の行動に肉薄させることで常に緊張感がつきまとう。物語には何一つとして希望はないが、ラストの男の笑顔から、彼だけは悲>>続きを読む

アミューズメント・パーク(1973年製作の映画)

3.0

老人がひたすら不憫な目に遭う遊園地、という高齢化社会を批評的なメタファーで描いた佳作。冷遇され、搾取され、時には見世物になったりもして、年を取ることが恐ろしくなってくるくらいにはホラー性がある。

トゥモロー・ワールド(2006年製作の映画)

3.0

平和や幸福の定義としての「子どもたちが笑って過ごせる社会」であるべきというメッセージを受け取った。その前提が崩れたとき、争いは起こるべくして起こり、ディストピアと化すのだ。長回しのショットによって常に>>続きを読む

ジョー・ブラックをよろしく(1998年製作の映画)

3.0

全盛期ブラピの美しさとミステリアスな雰囲気があって、そのどちらをも物語に落とし込むためのドラマがある。はにかむクレア・フォーラニの視線の細やかさが、よりロマンスらしさを演出していて堪らなくなってくる。>>続きを読む

バーン・アフター・リーディング(2008年製作の映画)

3.0

豪華な俳優陣を使って(良い意味で)クソくだらないコントをやらかしてくれた。マルコヴィッチのキレ演技も堪らないし、クルーニーのバカっぽさ、マクドーマンドのヤバい女感、ブラピのチャラさと不運さなど、すべて>>続きを読む

レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い(1994年製作の映画)

3.0

馬と草原がブラピのワイルドさに合致していて、奔放なキャラクターに息を吹き込んでいる。時代に翻弄され、一人の女性に魅了される兄弟の細かな心情がしっかりと描かれており、2時間の映画とは思えない重厚感がある>>続きを読む

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