daitenさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

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お吟さま(1962年製作の映画)

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端正でありながら情感豊かに紡がれる悲恋物語。愛と信仰、権力に翻弄されつつ信念を貫くお吟。一途な姿が凜として映る。逃げ込んだ茶屋でお吟の脚のけがを手当する右近、そして互いの告白がせつなくも官能的。4Kレ>>続きを読む

モスラ(1961年製作の映画)

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放射能で変異した菌の群生する島の森。小美人の見世物小屋に集まる大衆。本能のまま突き進み、あらゆるものをなぎ倒すモスラの幼虫。愚かな人間の行いがいかに自然からしっぺ返しを食らうか。娯楽性と強いテーマの両>>続きを読む

風花 kaza-hana(2000年製作の映画)

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食い詰めた男女の死への逃避行。情念は影を潜め、交じりあわない道行きもどこか軽やか。繰り返す自死のことばと裏腹に、どこかやり直したいと思っている二人の姿が印象に残る。みっともなくとも、生きてカエル。死と>>続きを読む

魚影の群れ(1983年製作の映画)

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全編にみなぎる異様な熱。テグス一本が生死を分かつ大間マグロ漁は大博打。力づくの世界で生きる男と女の情愛はひたすら激しく濃厚だ。マグロと漁師の格闘はドキュメントと狂気が渾然となる迫力。夫の帰りを待つ女の>>続きを読む

お引越し(1993年製作の映画)

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ちょっと早い親離れを強いられる11歳の少女。仲良かった父は異物、気丈な母には近親憎悪。コドモ扱いせんといて、でもコドモなところが切なくもリアル。彷徨いの果て幻想の家族は水に沈み、自分を抱きしめて再生す>>続きを読む

東京上空いらっしゃいませ(1990年製作の映画)

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生きてるって素晴らしいと幽霊になって気づく物語。そんな皮肉はお構いなく、一直線に生の喜びを表す主人公がまばゆい。いつか帰らないといけないから、今だけはふたりで精一杯、歌って踊ろう。自分の足で前に進めた>>続きを読む

偶然と想像(2021年製作の映画)

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まるで三つの教訓話。どこかに向かっていたはずの会話が、思いもしない出口に出てしまう。探り合い、騙し合い、畳みかける言葉の応酬は格闘技を観ているよう。そして得られるちょっとしたアフォリズム。人生はままな>>続きを読む

最初の晩餐(2019年製作の映画)

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同じものを食べているのに、考えていることは違う。食卓は、分かり合えない家族の象徴。夢を捨てた父と秘密を抱えた母。言えないことがたくさんあった日々を、もう一度味わいたかった。食卓に背を向けて去り、いま新>>続きを読む

ラブホテル(1985年製作の映画)

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犯される妻から逃げた時から、死に囚われる男。凌辱した女の思いがけないエロスに揺れる。妻とのセックスは自慰のような物悲しさ。雨の夜をくぐり抜け、天使と呼んだ女と結ばれたはずなのに、鏡に映る顔には絶望しか>>続きを読む

彼女が好きなものは(2021年製作の映画)

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スクリーンを見続けるしかできない無力感さえ抱かせる、衝撃的な映画。性的指向を自問し続ける高校生が痛々しくもリアル。自分事として向き合い、ファンタジーから抜け出すため賭けていく腐女子の凜々しさよ。主役ふ>>続きを読む

セーラー服と機関銃(1981年製作の映画)

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命がけの経験を重ねるたび、17歳の心には色とりどりの花が咲く。潑剌として生命力に溢れた花は、やがて大輪となり、男たちをも包みこんでいく。大人と子どもの狭間を、愛だの恋だのに立ち止まることなく駆け抜けた>>続きを読む

愛のまなざしを(2020年製作の映画)

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『接吻』より抽象度は高く、リアリティの欠如は確信犯。物語の整合を吹き飛ばす圧倒的な“狂気の愛”を期待したが、トラウマや苦悩は提示されても“悶え”として刺さることはなかった。虚と実が千々に乱れ、混じり合>>続きを読む

王将(1948年製作の映画)

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かわいさと男気で憎めない阪妻の坂田三吉に心酔。捨てた駒を後生大事に持ち続けた妻、将棋指しの父を冷静に見る娘。名人の座を賭けた盤上の戦いと家族愛が絶妙に織りなされる。格好いいカメラワーク、大胆な物語の省>>続きを読む

ボクたちはみんな大人になれなかった(2021年製作の映画)

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ひとり呑む時に何度も反芻するような記憶の断片。始まりと、終わりと、喉に刺さる小骨のような言葉と、エトセトラ。精緻な時代考証という匂い薬で、コロナからオザケンの時代に遡るが、読後感はノスタルジーより普遍>>続きを読む

馬鹿まるだし(1964年製作の映画)

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大いに笑い幸せな気持ちになった。港町に居着いた風来坊。おだてられりゃ怪力男を成敗し、煙突にも登ってしまう。親分と祭り上がられ、肩で風切ると思ったら利用される。禍福はあざなえる縄の如し、を地でいく男。ラ>>続きを読む

総理の夫(2021年製作の映画)

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総理の夫でしか見られない景色ってあると思っていた。美貌妻、実はやり手の増税政治家。支える老党首は権力に取り憑かれる古狸。誰でもいいから社会を変えたい取り巻き。盛り上がれば何でもアリの有権者。そんな人間>>続きを読む

(ハル)(1996年製作の映画)

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顔も声も知らないふたり。ちょっとした文体に人柄を感じ、嘘とホントで相手を試しながら、かけがえのない存在になっていく。“文字”だからこそ伝わる、心の中のモヤモヤ、やるせなさ、距離感。その切なさに胸いっぱ>>続きを読む

かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)

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反抗期のない高校生たちの物語。セームサイズの映像、2ショットの科白で心情が“説明”されていく。過剰とも思えるお互いへの気の遣いようや、親への無条件な思慕は今風なのだろうか。全体にピュアさより幼さを感じ>>続きを読む

ひらいて(2021年製作の映画)

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過剰な愛に“こわれゆく”女子高生から目が離せない。地方都市の凡庸な高校生活の中で秘かに育まれる恋と、どうしようもない嫉妬と狂気。いくら取り繕っても、大きく開かれた瞳だけは嘘はつけない。周囲を壊しながら>>続きを読む

赤い殺意(1964年製作の映画)

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不幸を呪う女が墜ちていく。差別と貧困とエロスが撚り合わさる俗世で、むき出しになる人間の業。その深さと滑稽さを、圧倒的映像力とユーモアで活写し観客の想像力をこじ開けていく。劇的な結末の後、呪いは笑いに変>>続きを読む

サンダカン八番娼館 望郷(1974年製作の映画)

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騙され、売られ、裏切られた老女。その熾烈な人生と向き合った研究者。ふたりの視線を通じて、必死に生きた異国の日々を追体験していく。信じたからこそ伝え、託されたからこそ忘れない。すべてを語り終えた老女の姿>>続きを読む

田舎司祭の日記 4Kデジタル・リマスター版(1951年製作の映画)

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聖たらんとする若き司祭が、世俗そのものの村で冷遇され懊悩する。信仰に踏み込む部分は難解だが、視線、手、音と“シネマトグラフ”の原点を感じた。

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)

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震災10年、強い問いかけが胸を突く。“自助”という原理原則のもと、被災者が被災者を追いつめ、一度は助かった命が奪われていく。声を上げなければ現実は伝わらない。その声はこんな形でしか発せられなかったのか>>続きを読む

ぐれん隊純情派(1963年製作の映画)

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チンピラの抗争物語かと思いきや、いきなり旅芸人ものに…。若者たちが一丁前の役者になる過程は潔くすっ飛ばされ、一座への意趣返しや芸人への差別が強く押し出される。色恋沙汰で始まる終盤も見どころは貫禄の老獪>>続きを読む

喜劇 女は男のふるさとヨ(1971年製作の映画)

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人臭さ満杯の映画。斡旋所の女将、さすらいのストリッパーと不細工娘。3人の女とダメ男の物語は、たすきリレーのように展開する。改造バスでの旅が素敵。人助けのため身体を許した不細工娘。その無垢な心を切々と訴>>続きを読む

草の響き(2021年製作の映画)

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繊細な映画だと思った。失調に苦しむ男、走ることでしか得られないギリギリの均衡が、函館の淡い陽光と鈍色の空の下で描かれる。縮まらない距離感のリアリティ。最後の一瞬に向けてのガマンの演出に、斎藤久志監督の>>続きを読む

恋する女たち(1986年製作の映画)

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みっともないほど自分の愚かさを知り、みっともないまでの執着に厭になり、それでも視線を外すことができない…そんな“恋のはじまり”の心模様が伝わる。

・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・(1988年製作の映画)

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トーキョー・80‘s・オールナイトロング。じれったいほどピュアで、無理に背伸びして、心根の優しいふたりがバブルの都会を漂う。ちょっと気恥ずかしいシーンもあったが、フィルムには若いふたりの繊細な恋心がギ>>続きを読む

空白(2021年製作の映画)

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父と娘で始まり、娘と父で終わる映画。凄惨な死を遂げた娘の“姿形”を追い求める父は、本来モンスターでも狂人でもない。娘との空白に気づき、悪意や誹謗中傷を乗り越えてでも溝を埋めたいという思いが際立てば、店>>続きを読む

くちづけ(1957年製作の映画)

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走って泳いで転んで歌って。魅かれあい離れていく若いふたりの道行きは、まるでダンスを踊っているような躍動感に満ち溢れている。翌日、厳しい現実を乗り越えてふたりは再会を果たす。理由を求めるくちづけは、激し>>続きを読む

夜の河(1956年製作の映画)

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愛が色に染められる。気が強く商才溢れる京染屋の一人娘。その自立した人物像は戦後日本の変化を感じさせる。劇中で注意深く選ばれる色は彼女の感情そのもの。情熱の赤、背徳の黒、別れの緑。一度きり結ばれた夜、二>>続きを読む

由宇子の天秤(2020年製作の映画)

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野心と誠実、両方を持つテレビディレクター。この人なら本当のこと話していい、と思わせる人柄。しかし、取材テーマと映し鏡の出来事が身に降りかかる時、彼女は自分を裏切り追い込んでいく。体面、愛情、嘘に翻弄さ>>続きを読む

恋文(1985年製作の映画)

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惚れちまったンだから。修羅場で笑うことしかできないこのダメ男に。かつての女に寄り添いたい、惚れたって。受け入れてやろうじゃないの。愛が残酷に試されている。でも手許にはダメ男との息子がいる。恋文は出した>>続きを読む