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ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~ シーズン1のEikeのレビュー・感想・評価

3.4
2022年に出たAmazon Primeのオリジナルドラマ。

20作以上出版されているベストセラーシリーズの映像化だが先にT・クルーズが2012年に「アウトロー」、2016年に「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」を作っている。
彼が手を引いたことで本作が製作される事になったのかな。

このシリーズはタイトルが表す通り、ジャック・リーチャーという元米軍憲兵隊捜査官を主軸に据えたミステリー・アクション・サスペンス作である。
リーチャーは退役軍人だがほぼ「住所不定」状態で一か所にとどまることなく放浪を続けている謎めいた男。
彼がその行く先々で事件に巻き込まれ、手段を問わないスタイルで身にかかる火の粉を振り払っていくのが物語のスタイル。

って、これじゃまるで西部劇における「流れ者」か時代劇における「股旅物」だ。
実際、この設定自体は特に目新しくもなく温故知新とも言えるものである。
ただ、いつの時代でも不屈のタフガイがその持ち味を生かして悪を懲らしめる様は結末が決まっていたとしても(もちろん「正義は勝つ」)非常に座りが良い。
その反面、予定調和過ぎて面白みに欠けた内容になっても可笑しくないのだが。

ところが本作は素直に面白い。
何故かと考えると、2時間の映画では駆け足に成らざるを得ないところが、本作は1時間x8話としっかりと尺を使ってアクションだけでなく人物像や登場人物たちの交流を描くことが出来ている点が大きい。
またストリーミングメディア作と言うことでアクションシーン、暴力描写もパンチが効いていてエンタメ度が高い。

原作のイメージを100%生かしていると評価が高い主演のアラン・リッチソンはタフガイらしく台詞は多くないが見栄えの点では大成功だろう。
しかし最大の魅力はリーチャーのキャラクター造形にある。
「大男総身に知恵が回りかね」なんて言葉もある訳だが、リーチャーは少々毛色が違うのだ。
まず元敏腕捜査官であり、犯罪捜査にも通じていて観察力/推理力にも長けているのだ。つまり何でもかんでも暴力で片付けるタイプではないのだ。
しかもリーチャーの放浪癖?の裏に垣間見える「弱さ」がきちんとほのめかされている点も人間臭さがあって親しみが持てる。
深く人間関係を築くことに踏み出せないことをリーチャー自身が自覚していて繊細さすらうかがわせるニュアンスが出ているのがなによりユニークだ。

この1シーズンではジョージア州のとある町で起きた殺人事件にリーチャーが巻き込まれ、地元警察の署長、女性警官と協力して地元を取り仕切る有力者の陰謀に挑む。
東部の名門大卒のフィンレー署長との掛け合い、タフな女性警官ラスコーとのケミストリーもきちんと出ているのは急ぐことなくじっくりと彼らとリーチャーの交流が描けているからだろう。
脇のキャラクターをおざなりにしないアプローチもやはり嬉しいところである。
そんな具合でなんとなくよくあるアメリカ製アクション篇として見落とすにはちょっと惜しい作品である。

先日、待望の2ndシーズンが開始。
今回も出来が良く既に3rdシーズンの制作も決定済み。
週末にリラックスしてみるのにお勧めである。
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