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ロキ シーズン1のEikeのレビュー・感想・評価

ロキ シーズン1(2021年製作のドラマ)
3.5
2000年以降のアメリカのエンタメ界最大のインパクトは新興のMarvelスタジオの躍進だろう。
同スタジオがDisneyの傘下に入ったことで文字通り「鬼に金棒」状態が続いて来たと言えるでしょう。
しかし、栄枯盛衰は世の常であり、作り上げたキャラクター達がストリーミングメディアの覇権争いの道具として安易に利用されるようでは質の低下の危険性も否定できないところだ。

それでも、これまでそれなりにMCUの諸作を楽しむことができたのはアメリカ映画らしい物量と最新テクノロジーの導入による映像革新が大きな要因。
しかし、それだけでないのは只の「マンガ映画」に一線級の演技陣や新鮮な人材を抜擢してきた大胆さによるところも大きい。
つまり新興勢力らしい攻めの姿勢がその勢いを生んでいたとは言えそう。

本作、LokiはThorで起用されたトム・ヒドルストンの単独主演作。
それまで一介の英国出身の俳優に過ぎなかったヒドルストン氏を一躍人気者に押し上げた文字通りの「当たり役」。
ThorとAvengersにおける「悪役」でありながら、どこか憎めない「いじられキャラ」を作り上げたのはヒドルストン氏の演技と魅力のたまものであり、その単独主演作である本作が予想外に楽しめるものになっているのは何より本作が「アメコミの実写化」ではなく「本格SFドラマ」になっているからだ。
もちろん過去のいきさつを含めてMCU諸作との関連は盛り込まれているものの、それらはファンサービス程度に抑えられており、早い時点でオリジナルのキャラクターの提示と独自の世界観を確立することに成功している点が大きい。
MCUの他のマルチバースとは微妙に異なる時空を管理する組織に収監されたロキの活躍は派手な動きもあって見どころ十分である。
成功の立役者はもちろんヒドルストン氏の演技とカリスマ性にある。
MCUでは「いろもの」扱いに甘んじていたヴィランであるLokiを苦悩と葛藤を抱えた人間臭い人物としてとらえなおして観客の関心をつかんで離さないのはヒドルストン氏の実力を伺わせます。
最初のエピソードだけでも画面に映っている時間、セリフの量を考えるとMCUにおける彼のこれまでの出演場面の合計より多いのではなかろうか。
しかし「シリーズドラマ」として作品を作り上げるには物語はもちろん、脇を固めるのキャラクターの魅力も不可欠なわけで…。
本作ではLokiの監察官にして相棒となるモービウスをオーウェン・ウィルソンが演じている。
永遠の若造と言った印象の強い彼が、過去を抹消されたTVUの中年エージェントを演じている点は意外性もあって良い配役である。
ロキとモービウスのコンビにより、本シリーズは中盤以降、ある種の「バディもの」にシフトしていくわけでこの二人の相性はとても重要なのだ。
英国演技派のがっちりと固められた基礎が感じられるヒドルストン氏と万年アメリカンボーイのイメージが強いウィルソン氏のレイドバックした演技のケミストリーが予想以上に上手く行っていることが本作の魅力だろう。
お話の方は時空を超えた展開で正直言ってかなりややこしいのだが、Loki君のニュアンスを活かしたパフォーマンスを見ているだけで充分楽しめた。
結局キャラが立ったLokiという人物がいてこそ生まれた物語である訳でMCUのキャラクターの中でもトップクラスの「勝ち組」ということなのね。
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