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ロキ シーズン2のEikeのレビュー・感想・評価

ロキ シーズン2(2023年製作のドラマ)
4.2
MCUからストリーミングサービスに展開した作品で現時点までで唯一セカンドシーズンにリニューアルされたヒットシリーズ。
今回の第6話のエンディングにて物語は大きな節目を迎えることになった訳ですが個人的には見事な大団円だと感心した。

本作のヒットの要因はもちろんトム・ヒドルストン氏が演じるヴィラン、Lokiのキャラクター造形にある。
しかしその魅力を生かすための物語と脇を固めるキャラクターとのアンサンブルこそがカギとなっているのは明らかだ。
Avengers:End Gameから「退出」したLoki君が時間を司るTVAに収監され、組織に抵抗してテロを繰り返す凶悪犯の探索に駆り出されるのだが、その相手がLokiの「派生」であるという意外性をもたらしたS1。
この展開はおよそMCUの単体作では描き切れないややこしい物語である。
その点ではストリーミングメディアへの展開も納得できる。
S1ではそのテロリスト、SylvieとLokiの関係性が大きなカギになるとともにTVAという「組織」の謎がクローズアップされていた。
この1stシーズンのエンディングでは物語は全く収束しておらず、今回のS2ではTVAの存在が危機に直面し、どうにかして世界の崩壊を食い止めるべく奔走するLokiたちを描いている。

言うまでもなくLokiはヴィランである。しかしThorとAvengersにおいてもどこか憎めない「いじられキャラ」であった訳で、そんな人物を主役に据える以上はそのキャラが主役にふさわしい行動をとる様を納得できる形で提示しなければならない。
身も蓋もない言い方をすればLokiがいかにして「悪役」から「ヒーロー」へと変貌するのかを説得力をもって視聴者に受け止めてもらえないと失敗ということである。
その意味でユーモアとペーソスを備えたLoki君を造形したヒドルストン氏の功績は賞賛に値するだろう。
エピソード5でSylvieからBarでなぜTVAを救うべく奔走するのかとしつこく追及されてついに自分でも意識していなかった本心を吐露するシーンにも説得力があって中々沁みる。

このLoki君の変容。実際にはかなり甘い印象があってもおかしくないのだが、ヴィランとしてのLokiの孤独や疎外感がヒドルストン氏の演技によってここまでずっと支えられていた訳でしっくりとくるものになっている。
これはS1からのモービウスを演じるオーウェン・ウィルソンとのコンビネーションのケミストリーが最大限生かされた結果でもあり、満足のいく展開だ。
この第二シーズンで参加したキー・ホイ・クワン氏の効果も特筆ものである。オスカーをもたらした「エブ・エブ」の好演がフロックでないことを印象付けるエキセントリック&善良さを備えたOB:ウロボロス君のコミカルな存在感はともするとシリアスになり過ぎな物語にいいアクセントを与えている。

しかし今シーズンの成功の要因は何と言ってもドラマチックさを増す後半4話の演出をジャスティン・ベンソン&アーロン・ムアヘッドのコンビに任せた点だろう。
この二人がMCUに参加したのはMoon Knightからだが、この二人は基本的に生粋のインディー系映画人であり、2010年代から活躍を始めてこだわりを感じさせる作品を送り出してきた訳ですが一本もメジャースタジオでは撮っていない。
しかしこの「こだわり」の部分が今回のLokiにピタリとはまったということだ。
特に彼らの作品において「時間と空間」は常に大きなテーマである訳だから猶更である。
今回のS2のエンディングは非常にパーソナルでありつつも壮大なものであっただけに、そのさじ加減はとても難しかったと思うのだが過剰に煽ることをせず、ヒドルストン氏のニュアンスに満ちた演技に委ねた演出がお見事だ。

それとやはりCGを筆頭としたデジタル制作の強味をつくづく感じたシリーズでもあった。おそらくMCUでこれまで最大の衝撃的な映像と言えばInfinite Warのラストでヒーローたちが灰となって次々と消え去っていくシーンであっただろうが、今回のLokiでは時間と空間そのものがカオスと化していくシーンを真っ向から描いており、正に「見たことないモノ」となっているのだ。全てが「スパゲディ状」に崩れていくことで時の流れがほどけてしまうことを表現している訳で凄いビジュアルである。

MCU・ディズニーの今後の展開には不安要素が山積だが今回のLokiを見れば分かるが結局は「面白いお話」を熱意をもって描くことが出来ればそれでいい筈なのだ。(結局創作物はできあがった結果でしか評価されないからね)
その意味で面白いドラマでした。
Eike

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