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ユートピア / UTOPIA シーズン1のEikeのレビュー・感想・評価

ユートピア / UTOPIA シーズン1(2013年製作のドラマ)
4.2
イギリスのチャンネル4製作のドラマシリーズの第一シーズン全6話。
チャンネル4といえば超ブラックなオムニバスシリーズBlack Mirrorもスゴかったですが本作もインパクト、アリすぎ。
一応公共放送なのにこの内容で本当にいいのか(笑)。

物語は世界の裏でうごめく陰謀を描いたと噂されるマンガ(グラフィック・ノベルって奴です)UTOPIA Experimentのファングループが、本来存在しないはずの「続編」に接触してしまった事から起きる大騒動。
時を同じくして、強大な影のネットワークによる世界規模の陰謀の幕が上がる...。

陰謀論ドラマのパターンはすでに確立されてしまっている訳でストーリーそのもので従来作との差別化を図るのは容易ではないですね。
バリエーションは様々ですが、結局のところ巨大な陰謀(権力)に戦いを挑む弱者のドラマになる訳で本作もそのパターンに違いはありません。
では、どのようにして独自色を打ち出すのか。
要はネタの盛り込み方やキャラクターの色付け次第となる訳ですが、そこで変にカルト趣味を打ち出されても鼻につくだけでしょう。

本作のアプローチは中々にユニーク。
まずTV用に製作されたドラマであることを考えると異例なほど暴力的。
殺人、流血、拷問・尋問シーン多すぎ(笑)。
しかも描写は結構リアルで女子供にも容赦なし(見せ方に配慮はしてますが)。
この点については流石にイギリス本国でも放映時には論議を呼んだそうです。

でも、それでいて結構、笑えるんですよね。
恐ろしく殺伐とした物語でありながら登場人物たちの造形がうまいので意外にもヒューマンコメディの味わいもあるのだ。
その辺りの歪んだユーモアの盛り込み方はさすがに「英国流」です。

特筆すべきはその映像スタイル。
特に色の使い方が実に秀逸。
デジタル処理を加えているシーンも多いんでしょうが、タイトルのユートピアのイメージを生かしつつも、悪夢じみた世界が実に色彩豊かに構築されております。
サントラも奇妙でグロテスクなテクノサウンドなのですが妙にキャッチ―で中毒性があります。
そういう意味では非常にオシャレな印象も。

肝心の陰謀の概要はクライマックスできちんと明かされており、その意味では満足できます(一応次シーズンへのネタも盛り込まれてますが)。
しかもその陰謀の内容を考えると次第に何となく筋が通っているようにも思えて来るのがミソ。
我々が普段、目を背けている世界の不都合な真実への対処を迫る内容になっているのだ。
特に2021年、コロナ禍の最中で鑑賞すると洒落にならない気分になるかも…。

英国産ですから、たった6話しかない訳ですが脚本の濃さと世界観がかっちりと固められていることもあって思ったより満腹感があります。
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