tsura

6月0日 アイヒマンが処刑された日のtsuraのレビュー・感想・評価

3.5
ユダヤ人の大量虐殺に大きく関与したアドルフ・アイヒマンの処刑を巡り、市井のに焦点を当て歴史の瞬間を捉えたジェイク・パルトロウ監督の一作。

今再びイスラエルとパレスチナ(ハマス)の激しい応酬により戦争状態と化している。
作品と本筋は違うが私達が見聞する物は点に過ぎず語られる物語ばかりが真実ではない事の重みを痛感する。

作中のホロコースト体験を証言するミハの想い、対照的に灰の様に散りゆくダヴィッドの過去。
今、この瞬間も風化されんとする歴史の一部が確かにその時、そこに起きたのだ。
そしてこのイスラエルの暗部、戦後を生きる人々に積もったままの遺恨。
イスラエル建国史上一度しか行われたかった超法規措置である死刑に潜む隠された真実と、アイヒマンの死刑から見える戦後社会を生きる人々の心がショッキングなほどに繊細に露骨に描写されている。

私達はかつての戦争の事を分かっている気だろうが、あの時代から決して消す事の出来ない悲鳴、最早深層には辿りつけない真実の瞬間を今作を通じ垣間見る事で、引き継いでゆく物語がある事を忘れてはならないと唯一の被爆国でもある日本人からしても決して対岸の火事の様にはいられない作品だった。

某人気アニメではないが「真実はいつも一つ」だが、語られる物語ばかりが真実ではないということを。
tsura

tsura