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星の王子さまのWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

星の王子さま(1974年製作の映画)
5.0
『王子さまとは誰だったのか?』


主人公であるパイロットが降り立った場所。
物語の中でサハラ砂漠の何処かと説明されるその場所には、不思議な既視感が感じられる。
荒涼とした大地が広がる、世界の始まりを思わせるあの原初的光景。
どこか懐かしさを感じさせるその場所は、無意識(潜在意識)の存在するところ・・・
その時スクリーンには、心の中の原風景が映し出されていたのだった。

人生はよく旅に例えられるけれども、あのパイロットの彼がまさしくそうであったように、モチベーションという名のエンジンに重大な瑕疵(かし)を負った時に我々は人生の予定航路から大きく外れて失速した挙げ句、不時着を余儀なくされるものだ。
そうして先に述べたように心の深い場所へと降り立った僕は、まるで王子さまの様な姿をした、かの少年と出逢ったのである。


↓以下、ネタバレなので読まないでね!


王子さまとの対話は多くの学びをもたらすものだった。

僕たちはよく業(ごう)やカルマについて語り合うけれども、僕たち一人一人が元々居た星にはそれぞれにそうした固有の磁場があって、そのカルマがあるおかげで新しいことを学ぶ時には必ずそれが「エゴ」と呼ばれる壁となって立ちはだかる。
これが、僕たちが遥かなるこの地球へとやってきた大きな理由だ。
この星には沢山の新しい学びが溢れているけれども、やっぱりエゴの壁を打ち破ることはとても難しいし、故郷の星を懐かしむあまりカルマに引き摺られて人生を無駄にしてしまう。

この星は不思議なところだ。

その中でも特に不思議なことは、たとえそれがどんなにありふれた物に見えていたとしても、自分の目の前に在る対象の中に何か特別な意味が隠されていると心が信じた瞬間に、その相手は光を帯びて美しく輝き始めるということだ。
だから、いつでも大切なものは目には見えない。

あまりに何度もこの映画を観てきたおかげで今ではもうとても他人とは思えなくなってしまったキツネやヘビやバラとの思い出を王子さまと一緒に追体験することは、この星で出逢うことになった「友だち」という不思議な他者が持つ意味や、抗しがたいほどに甘美で魅惑的な「死」への誘惑や、僕にとっての「運命の人(ファム・ファタール)」の不在の理由について、謎を解き明かす学びの旅となってきた。
それでも、最大の疑問が残されていた。


王子さまは一体誰だったのだろう?


普段は王子さまをとても遠くに感じることがあるが、そんなある時はっと気が付いた。

僕が砂漠のような原風景の中で出逢ったあの王子さまは、本当は僕の中に存在する子供のときのぼくだったのだ。

この世界で生きるうちにいつに間にか蔑ろにされてきた僕の中の純粋無垢な子供のままの原初的な魂が、人生に躓(つまず)いた時、気づきをもたらすために意識の中に具象化して姿を現していたのである。
世間の人はそれを、「インナーチャイルド」と呼んだりしているけど。
(王子さまが、パイロットが描いた絵を見てすぐに「象を飲み込んだウワバミ」だと判ったのは、そういう訳なんだろう。)

何度も躓いては王子さまと出会い、オンボロになった機体のエンジンを修復してきた。
そうして、再び人生の旅は始まる。

今ではもうそんなに会えなくなってしまったけれども、映画のエンディングでいみじくも描かれている通り、相変わらず王子さまが宿る星はこの旅の行く手を明るく照らし出してくれている。


↓ヘビ役のボブ・フォッシーのスネークダンスにインスパイアされたマイケル・ジャクソンのカッコいいダンス!
Billie Jean / Michael Jackson
https://youtu.be/ZXmjhRkPVFc
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