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ベティ・ブルー/インテグラル 完全版のWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

4.2
『 blue 』


僕の部屋の片隅にはDVD「ベティ・ブルー」を包んでいたあの碧いスリーヴケースが飾ってある。

「ベティ・ブルー」がある種の神話性を帯びて見えるのは、ゾルグとベティのカップルがまるでこの地球上でたった二人だけ生き残った真に純粋な愛を貫く男女であるかの如く我々の眼に映るからであろう。


もしもこの世界には自分達という男女二人しか人類が存在していなかったとしたら、相手が例えどんなに常軌を逸した人格の持ち主であろうと厭わずに愛し抜くしか無いのではないだろうか。
「ベティ・ブルー」が内包している問い掛けはまさにそこに在ると感じられる。

つまり、誰かに心から想いを寄せる時それは即ち神話の中のアダムとイヴになることを意味するのであり、人類の集合的な潜在意識の中に埋め込まれたこの神話の物語を我々は無意識のうちに再現することになるということである。

イヴが犯した罪によって二人は楽園を追放されてしまうがそれでもアダムはその運命を受容しイヴを愛し続ける。
ベティの狂気を目の当たりにしても尚寄り添い続けるゾルグの姿は旧約聖書に登場するアダムを彷彿とさせる。

本気の恋愛なら相手を運命ごと受け入れるしかないし、そこに常識や倫理が入り込む余地など無くなってしまうという普遍的な真理がこの映画の底部に流れているように感じられる。

発狂して人間性を崩壊させてゆくベティに対しゾルグが最後に採った手段は、まさに彼女の絶望的な運命をまるごと受け入れるという最終的な決着の付け方であったのだろう。


「ベティ・ブルー」のイメージを決定付けたあの紺碧のブルーは、恋することの神話性と狂気性の両者を霊妙に孕んでいる様に感じられて僕はとても好きなのだ。


↓「ベティ・ブルー」のテーマ曲
https://youtu.be/jUJwm7VRtog
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