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俺たち喧嘩スケーターのkahikoのレビュー・感想・評価

俺たち喧嘩スケーター(2011年製作の映画)
4.5
カテゴライズ「コメディ」になってますが、コメディというより「お下品アリのヒューマンドラマ」に感じました。
ちょっとティーン向けっぽさもあるポップなストーリー展開ながら、大人が見てもきちんと趣旨が伝わる内容です。ガチガチの泣けるヒューマンドラマが苦手な人にもお勧め。

あらすじ:主人公のダグは優秀な一家の次男だが、自分だけが何の取り柄もなく、適当に酒場で用心棒をして金を稼ぐ毎日。兄は同性愛者で、両親から渋い顔をされるものの、父と同じ医者になったことで両親とは一応上手くやれている。一方のダグは、心優しい性格で、家族に認められたい思いもあるものの、自信を失っていた。ある日友人に誘われアイスホッケーを見に行った先で、選手の同性愛者を馬鹿にする発言が許せず喧嘩に。用心棒をしているダグは難なく相手をノックアウトし、それを見ていた監督にアイスホッケーの喧嘩屋としてスカウトされる。喧嘩屋の実力を認められ、更に良いチームに移籍したダグは、問題を抱えたチームメイトのサポートと喧嘩屋として活躍するよう指示され、命じられるままに「喧嘩」をするが…

何の捻りもないのですが、そこがストレートで逆に新鮮かも。
台詞も場面も無駄を極限まで削ぎ落とし、殆ど全てにきちんと意味があり、しかし「駆け足で説明が足りない」という気持ちにもさせない。こういう映画を作るのは、実はかなり難しいのではと思います。テンポが速すぎると説明不足で伝わらず、テンポが遅すぎると退屈に。今作はそれらを一切感じさせません。
ただの感動モノで終わらせず、シンプルなのに意外と色んな「人生に大切なこと」が詰まっています。
自信を失ったダグを元気づける友人。親に認められず意気消沈するダグを慰める兄。徐々に分かり合い、信頼し合い、一丸となった仲間たち。どれも表現が素敵。

そして、この暴力的なストーリーに華を添えているのが彼氏持ちのビッチ、エヴァとの恋愛パート。
試合の合間にエヴァとの恋愛シーンが差し挟まるのですが、これがまた初々しい!
自称ビッチのエヴァが戸惑うほど、ダグはとってもピュアで愛情深かったのです。普段、恋愛映画は見ない派で、恋愛映画じゃなくても長々しいラブシーン(エロ、キス、イチャイチャだけでも)が入るともうウンザリしてしまうのですが、こういう恋愛ものなら見ても良いなぁと思わせられるくらい、純粋!純情!
試合が暴力の嵐なだけに、合間に入るこの恋愛シーンが微笑ましくて。
映画の恋愛シーンって、夢たっぷりのファンタジーでできた過剰に美しく見せたのとか、あるいは「恋愛ってそんな高尚なもんじゃないでしょw」と過剰にコメディに振った馬鹿っぽいのか、結構そういうのが多い気がします。どうしてもそういうのが撮りたい人が多いのか、よくわかりませんが、自分はその「過剰な飾りつけ」が見ていてウンザリしてしまうのですが、今作の恋愛シーンは特に過剰な感じがなく、「あー、純粋な人たちの恋愛って実際こうなんだろうなぁ」と思わせてくれる自然な雰囲気でした。
エヴァも自分のことをビッチと言っているけど、根はピュアだったんでしょうね。じゃなきゃこうはならない。
本作には悪役という悪役が出てこないので、普通の現実ってこんな感じなのかも、と最後まで爽やかな気持ちで見ていられます。いや、現実は信じられないくらいのクズも沢山いるし、ダグみたいな純情な人は少ないんだろうけど、何か妙に納得させられてしまう。
作品としてはライトなのに、「現実も悪くないよね」と自然に希望を持たせてくれる、そういう意味でかなりの秀作だったなと思います。

いや、何か久々にこういうタイプの映画を見ましたが、本当に良かったです。
良いなと思う作品って、良い作品なんだけど、2度は見たくないくらい重かったり、現実的…というよりネガティブな内容過ぎて、内容より気分が悪くなったことしか記憶に残らなかったり、「良作」というと真面目な話が多めですが、今作は良い意味で後に引きずらないので気に入りました。
ただこの作品、実話ベースらしいのですが、最後(EDの途中)に本物のダグの映像があり、いや何かこの人怖くね!?と思ってしまいました。本人の顔見ると、とてもあんなピュアな人には見えません。むしろ嬉々として暴力振るってそう…(失礼か)

気になったのは、アイスホッケーの話なのに、出てくるチーム名はラグビーから取ってない?ペイトリオッツ(ボストンのラグビーチーム)とか出てたような。もちろんチーム名を借りてるだけっぽいんですが、実話ベースなら現実のホッケーのチーム名か、それをもじったような名前とか、全然関係ない名前じゃダメだったのかな?
何でわざわざラグビー?と思ってしまいました。

しかし、日本ではこの作品、あまりメジャーじゃないのか?
自分は普段は映画.comの方にレビューを書いているのですが、何と映画.comの方には作品ページすらない!
というわけで久々にYahoo!映画の方でレビューを書くことにしたのですが、映画.comとYahoo!といつまでも掛け持ちするのも面倒なので、前々からずっと悩んでいたFilmarksに漸く登録しました。
映画.comやYahoo!映画の方が鑑賞日とか、どういう系統の映画か絵文字で登録できたりとか、細かいところが使い勝手良いです。Filmarksさんもぜひお願いします。他の方へはどうかわかりませんが、自分が後で見返す時に地味に便利なのです。

ところで今作、実は続編もあるらしいんですが…Netflixでしか見られない上にあまり評判が良くなかったので、自分は見ることは無さそうです。

今作は久々に(お下品が大丈夫なら)誰にでもお勧めできる映画でした。満足です。
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