kahiko

君の名は。のkahikoのネタバレレビュー・内容・結末

君の名は。(2016年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

「話題作だから観た」人達で成り立ってるのかな?という印象。
☆1ってことはないですが、この作品で☆4以上はまずないかな…自分には何も響きませんでした。
ちなみに泣ける映画ではすぐ泣く(ていうか泣ける系じゃなくてもとりあえず泣く)自分がまったく涙が出ませんでした。

母が話題の作品だから観たいと言うので、自分もついでに見たのですが…面白かったかと言われると…人に勧めることはまずないです。見終わった直後は普通に良かったかなと思いましたが、正直、今すでに内容がほぼ思い出せません。母も数日後もう思い出せないと言っていました。
序盤は少しジブリ的な雰囲気を感じましたが、後半はそうでもなかったです。

[良いと感じた点]
●映像・色彩はとても綺麗で、音楽と映像・ストーリーは非常にマッチしていて、映画を盛り上げていました。

●組紐や黄昏時など、身近なちょっとしたものがキーポイントになるよう、作品にうまく組み込んでいてロマンチックな演出です。


[良くなかったと感じた点]
●音楽自体は良かったが、台詞をかき消す勢いで大音量を出してくるので(しかも歌詞入り)、どうしても台詞・内容に集中できません。

●以前の『秒速5センチメートル』の時も強く感じましたが、女の子に対する押し付けがましいまでの異常な理想というか、偏見というか…無意味なブラ紐やパンチラ、内股走り、自分の胸を揉む等々、個人的には変に性的なニュアンスを強く感じて気持ち悪くなってしまいました。
『秒速~』も似た傾向の、もっと強烈な気持ち悪さを感じ、序盤でギブアップしました。まさかと思い先ほど調べてみて同じ監督と知りました。
気にならない人は全く気にならないと思いますが、これで最初に感じたジブリ的雰囲気は吹き飛びました。

●伝えたいことがたくさんありすぎたのか、それとも別に伝えたいことはないけど監督の書きたい物語が沢山あって、それを1つの映画に集約してしまったせいなのかわかりませんが、全体的にのっぺりとした印象。
「彗星が落ちて町が消滅」「男女の身体と精神が入れ替わる」「神様の力を借りて3年の時を跨ぐ(?)」「子供達だけで発電所を爆破・電波ジャックしてまで町を救う」…起こっていることはそれぞれおおごとなのに、今一つ「大変なことが起きた!」という緊迫感が伝わってこない。
瀧がいつ三葉を好きになったのか?それもわからない。キッカケは描かれておらず、「あの女、余計なことを…!」と言っていたのに、先輩とのデート帰りに「他に好きな子いるでしょ」と言われるシーンで観客は突然、瀧が先輩から三葉に心変わりしたことを知らされます。

そんな細かいところはどうでもいい!と思える人は良いですが、個人的には、ファンタジー的要素の強い作品は余計に人間性で現実味を出さないと、観客はキャラクターに共感できず、「他人の想像の産物でしかない、現実味のない世界に生きてる設定の興味も現実味もないキャラクターが何かワーキャーやってたなぁ」で終わってしまうと思うのです。
ストーリー自体は少しくらい「観客の想像にお任せします」という部分があっても深みが出て良いですが、キャラクターの心情については「こういうことがあったから、今このキャラはこんな気持ちなんだよ」というのはザックリとでも良いので、観客が察せられるようどこかに差し挟んでくれないと、どのキャラにも感情移入できません。
感情移入できない映画は映画ではなく、動く絵画と音楽を楽しむしか方法がありません。低評価の人達は、ここが引っかかっている人も多いのでは。

長くなりましたが、総合的には1回暇な時にレンタルや地上波放送で観られれば充分という感じです。ただ、映画館で観たらストーリーよりも映像美の力で感動させられたかもしれません。

ところで、この映画で「緻密に描き込まれた絵は目障りに感じる」ということを再認識しました。確かに有名絵画なんか遠目に見ると綺麗ですが、近くで見ると塗り方がかなり雑ですよね。子供の頃は「こんな雑な絵が…」なんて思ったものですが、ある程度の年齢になると「至近距離で見るものではない作品は、適度な雑さがなければむしろ美しく見えないのだ」ということがわかり、何事も丁寧なら良いってもんじゃないんだなぁと感慨深く感じました。
その緻密さもこの映画の売りのようですが、自分には明らかな減点ポイントでした。
音楽、映像、起承転結、全てがバランスの悪い出来で、雰囲気だけボヤーッと楽しむには良いかもしれませんが、とても高評価には届かないかと思います。
kahiko

kahiko