終戦記念日の前日に鑑賞したのにレビューを書きそびれてました。
戦争映画は幾千あれどここまで日本兵の戦場の現実を見せつけたこの作品以外では私には記憶にない。
塚本晋也監督自らが兵士の役で身体を張って地獄を炙り出した。
自身が病気を患った事から所属している部隊を追い出され、ただ"生きる"それだけの為にフィリピン・レイテ島の原野を彷徨う姿が描かれるわけだが兎に角四方八方この世の光景ではない。
勿論、この作品の残酷な一面にはあっと驚かされる。
しかし同時に哀しみにも支配された。
その戦さ場には最早、倫理や人間らしさなど無いわけでただ生きたいという動物的な欲求でしか人は行動できていないからだ。
ここに理性はないのだ。(恐らく日本兵の大半が餓死というのだから、この描き方は間違ってないように思う)
そしてこの眼前に映し出される世界を眺めてると私の知らない曽祖父の話が脳裏を過ぎる。
話せば長くなるのでまた機会があれば何処かでと思うが、曽祖父はユーモアに溢れる人物だったそうで、祖母宛に送られた手紙にはとても戦場から届いたとは思えない明るい内容と自身の娘(私にとっての祖母)を想う内容がしたためられていたそうな。
そんな曽祖父も第二次世界大戦末期の昭和19年、ニューギニアで戦死しており今は靖國で安らかにねむる。
祖母の話だけを聞くとユーモアに溢れ、明るく、聡明で且つ頭脳明晰だったそう。
そんな曽祖父もこの作品のように飢餓との戦いを強いられたのだろうかとついつい推察してしまうと、胸が痛んだ。
この世の中にはこんな体験談を持っている人、伝え聞いた人、沢山いると思う。
何もこれは私だけのストーリーではない。
1人の兵士が体験した世界。
しかしそれは二度と誰もが体験してはならない世界なのだ。
過度に残虐とも捉えかねない映像に言葉を失う人もいるだろうが、例えこれが作り物だとしてもその細部に込められた想い、息吹に触れてみて欲しい。
何処まで意図的なのかは私には汲み取れなかったがこの作品の反戦を願うメッセージは強烈だ。
私には充分すぎる程伝わった。