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チェイサーのkahikoのレビュー・感想・評価

チェイサー(2017年製作の映画)
3.0
テーマは良いし、よくあるゴリマッチョの強い女性でなく普通のウエイトレスやってる母親が車乗り回して…というのは珍しとくて、そこも良かったと思います。
ただ、登場人物がやけに少なく(脇役はそれなりにいるけど)、一応色々なことが起きているにも関わらず単調に感じ、製作費なかったのかな?と思ってしまいました。1時間半しかないのに、単調なせいで長く感じます。

以下あらすじ↓
食堂でウエイトレスとして働く主人公カーラは、離婚した不動産業者の元夫(既に別の小児科医の女性と結婚している)と親権争い中。その最愛の息子と車で公園(て言っても日本でいう遊園地に遊具を足したみたいな広大なやつ)に遊びに行った先で、弁護士から親権問題について電話があり、様子を見ながらも息子に聞かせないよう少し離れた隙に息子が誘拐されてしまう。
あとはひたすら息子を誘拐した犯人を車で追いかけまくり、息子奪還!!

…ていうだけの話です。
CM見て「普通のお母さんと誘拐犯のカーチェイスかぁ面白そう」と思ったけど、ホントただひたすら走ってるだけ。途中何度も中弛みします。最後まで見られないことはないけど、やっぱり盛り上がりもどんでん返しもないので退屈な印象でした。
製作費製作費と突っ込んでいる理由ですが、登場人物が少なすぎて、主人公がずーっと独り言を車の中でブツブツ呟いてるシーンがずっと続くので…何かもう、途中から息子の誘拐よりずっと独り言呟いてることの方が可哀想になってくるというか…これは流石に違和感しかなかったので、できれば2時間に延ばしても良いからもう少しストーリーを作り込んで欲しかった。
…製作費足りなくて人雇えなかったんならしょうがないかな…

見所を強いて言うなら、ハルベリーの演技力です。ストーリーは単調でしたが、それでも随所で手に汗を握るというか、思わずこちらも緊張してしまうような迫真の演技でした。ストーリーではなく、ハルベリーの演技力にだいぶ救われていると思います。最初は怯えや焦り、パニックの方が強い表情ですが、終盤は「ブッ殺したらァァ!!」くらいの般若のような表情です(笑
ハル・ベリーは2013年に『ザ・コール [緊急通報指令室]』という映画にも出ていて、そちらも今作程ではないですが、殆ど一人芝居なんですよね。そちらが凄く良かったので、余計にこちらはちょっと残念な出来でした。

あとは、細かい事ですがハルベリーと息子があまりにも似てないとか(そういう子もいるけど)、あれだけ主人公は息子を大事にしているのに、夫が何故親権を無理やり奪おうとするのか?その理由はぼかしてあります。
序盤の「夫が親権を欲しがるのは単に…(ここで切れてしまう)」という台詞から、「夫は息子を愛しているから親権を欲しているのではない」ということが察せられます。でも、じゃあ何故なのか?は描かれていません。伏線かと思いきや、というか思わせてるんでしょうが、結局重要ではなく。

ただ、他のレビューで「親権がどうなったのかも知りたかった」と書かれているのを見ますが、これは最後に「この母親は英雄だ」と報道されているため、結局主人公が勝ち取ったのではないかなと思います。
元々、貧しいけれども定職に就いており、ドラッグやアルコールに溺れている様子もなく、人格に問題もなく、息子を溺愛している。しかも息子はまだ6歳ですから、どちらかというと母親の方が引き取ることが一般的には多いです。もちろん小学校に上がる時、あまりにも貧しければ夫に任せた方が幸せなのでは…となる場合もありますが、そこまででもなさそうですし。
確かに夫の方なら義理でも一応両親とも揃いますし、裕福なのも夫の方ですが、だからといって主人公の方にも何も問題はないはずです(ちなみにシングルマザーはアメリカでは大して問題にされません)。
そこに「英雄」が加わったわけですから、危険を顧みず身一つで誘拐犯から息子を助け出した主人公と比べ、何となくにしろ「息子を大切に思ってはいないのではないか?」と察せられる夫の方に親権が渡るとは考えにくいかなと思います。
まぁ、カネカネカネのアメリカなので、金払えば裁判で夫が親権をむしり取るのは、その気になれば簡単でしょうけど。
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