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ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2期の雑記猫のレビュー・感想・評価

3.0
 全国の高校に部活動としてアイドル活動を行う「スクールアイドル」と呼ばれる女子高生たちがいる世界を舞台にしたソーシャルゲーム「ラブライブ!」シリーズ。本作は、その1レーベル「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」のアニメ化作品で、一昨年放送の第1シーズンの続編となる。本作は、ソーシャルゲーム原作作品におけるリスクマネージメントの究極系とも言える作品ともなっている。


 ソシャゲ発メディアミックス作品の大きな特徴は、数名から数十名の主要キャラそれぞれにしっかりとした固定ファンがおり、このファン達の熱が作品全体を支える大きな柱となっている点である。本作もその例に漏れず、主人公のスクールアイドルたちそれぞれにファンがいるのだが、本作ではこれが総勢12名というかなりの大所帯となっている。ここで、この構造の作品において最も気をつけなければならないのは、この主要キャラたちの活躍に少しでも不均衡が生じると、割りを食ったキャラのファンから猛烈なブーイングが起こるという点である。そのため、主要キャラたちの見せ場は必ず限りなく均等にしなければならない。本作でも限りなく均等に全キャラに所謂「お当番回」が用意されており、アイドルアニメの華であるライブシークエンスも最終回に至るまでほぼ完璧に平等に割り振られている。さらに本作は、原作のゲームではプレイヤーの分身である「あなた」を、高咲侑という1キャラクターとして独立させ、彼女も主人公の一人として据えているという特殊な条件も内包している。彼女はスクールアイドルではなく、ライブ活動は行わないサブキャラなのだが、担当声優がイベント等にしっかり参加している等の理由から彼女にもある程度の固定ファンがいるため、出しゃばらせすぎず、蔑ろにしすぎないというかなり慎重なキャラクターの運用がなされている。


 さらにこの形式の作品で重要なのは、短期的にでもどのキャラにも視聴者からのヘイトが向いてはならないという点である。最終的に事態が丸く収まったとしても、一瞬でも主要キャラ同士が対立したり、場を乱したりしようものなら、これらのキャラクターには「戦犯」だの「不憫」だのといったレッテルが永遠にまとわりついてしまう。そのため、基本的には主要キャラ同士は常に仲良しでいなければならないし、もし対立等を描く際には、双方に正当性があり汲むべき点があることを素早く念入りにフォローしなければならない。主要キャラの一人で、本シーズン第1話の時点で他の主要キャラとの対立を宣言し、ヘイトの最危険水域まで行った鐘嵐珠ですら、言い争いになる前に誰か別のキャラが場を穏便にまとめたり、内心では他の主要キャラのことを憎からず思っているという描写が丹念に挟み込まれたりしている。この形での作品作りにより、主要キャラたちの目標や悩みなどが非常に抽象的・観念的なものになり、シリーズ全体のストーリーがグループセラピー的な非常に平坦なものになってしまっているという大きな問題も本作は孕んでいるのだが、本作のメインのファン層はいわば子供の運動会や授業参観を見に来るようなスタンスで推しキャラを観に来ているわけなのだから、そんな大きな山ははなから求められていないのである。


 ここまで述べたように、この手の作品はかくも地雷原の多いジャンルの中にいるのだが、本作はこのリスクマネージメントをほぼ完璧と言っていいレベルで完遂している。これはつまり、手厚いファンサービス作品として完成しているということであり、ソシャゲ発アイドルアニメとしての一つの完成形がここにあるということであろう。
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