雑記猫

君のことが大大大大大好きな100人の彼女の雑記猫のレビュー・感想・評価

3.6
 100回の失恋を経験した男子高校生愛城恋太郎は、偶然訪れた神社で、恋の神様に高校在学中に運命の人100人と出会うことを告げられる。さらには運命の人と出会った人間は、その相手と愛し合い幸せにならなければ死んでしまうのだという。意を決した恋太郎は高校で次々に出会う運命の女性全員と付き合い、彼女たち全員を幸せにするために奮闘する。


 男性向けラブコメ作品の場合、主人公の男性に対して複数のヒロインが好意を寄せているという設定はかなりオーソドックスなものである。その三角関係や四角関係の中で、主人公がそれぞれのヒロインと接近したり離れたりすることで、視聴者やヒロインたちがやきもきするというのが一般的なのだが、「その主人公の思わせぶりな態度ってヒロインたちに不誠実じゃない?」というのが本作の着眼点。「そんな思わせぶりな態度で何人もの女の子たちを振り回すくらいだったら、全員と真っ向から付き合った方がよっぽど清々しいだろ!」という「そうかな…そうかも…」という主張が本作の肝なのである。ただ考えるまでもなく、主人公は二股三股どころではない浮気野郎になってしまうため、普通にやると全く主人公に好感が持てなくなってしまうのだが、本作では登場するヒロイン全員と主人公が同時進行で付き合うという強烈な設定を様々なフォローによって不快感のない形で成立させている。主なフォローは以下の通り。

1) 主人公は神によって、運命の女性全員と付き合うことが運命づけられており、複数の女性と付き合うのは不可抗力であるというエクスキューズがなされている。
2) 主人公は他の彼女を全ての彼女に開示しており、隠し事をしない。
3) 彼女同士は基本的に互いに嫉妬したり、主人公に独占欲を出したりしない。
4) お色気ギャグこそあれ、性的な接触はキスまでしか描かれない。
5) 主人公は彼女に対して、性的欲求を向けない。
6) 主人公と彼女たちの関係について客観的な視点を向ける第3者が登場しない。

このような手厚い作中のフォローを行ったうえで、細かい部分は破天荒でハイテンポなギャグ描写で押し切ることにより、無理を通して道理を豪快に引っ込めることに成功している。普通にやったら最低のドロドロアニメになってしまうところを、突き抜けた不条理ギャグアニメに仕上げることで、謎の清々しさを生み出すことに成功している点が本作の興味深いところだ。そういったわけで、とにかく視聴者を正気に戻さず、狂った世界観にずっとつけておくことが本作の大事な部分であるため、大いなるギャグ展開の前フリとは言え、シリアスな方向に話が触れる終盤は少しこの狂った魔法が解ける危ない水域まで作風が行ってしまっていたように思われる。制作が決定している第2クールでは一瞬たりともこの狂った魔法が解けないよう、もっともっと入念なフォローとハイテンションなコメディに振った話運びをしてもらいたいところである。
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