カニ組長

ヴィンランド・サガ シーズン2のカニ組長のレビュー・感想・評価

5.0
 作品全体としてはトルフィンが次の段階に成長するための繋ぎのような物語だが、完成度が凄まじ過ぎて、繋ぎとして以上の魅力が詰まった最高の第2期だった。
 今期で描かれているトルフィンは、1期の頃とはまるで別人な、生気の無い、髭が生えて老け込んだ哀れな奴隷だ。アシェラッドの死によって復讐対象を失い、我に返った事で初めて自分の過去の行いの惨さを知り、恥と後悔と懺悔の念だけが残ったトルフィン。今期前半はそんなトルフィンが立ち直り、精神的に成熟するまでが描かれる。
 彼の成長に大きく関わるのが、今期初登場のもう1人の主人公、エイナルだ。彼はヴァイキングに母と妹を殺された過去を持つ元農民の奴隷。彼にとってヴァイキングとは恨みの対象であり、理解の出来ない蛮族そのもの。トルフィンにとってそんな彼は父親を失ったかつての自分であり、同時に復讐に囚われ略奪・殺人行為に手を染めた自分への戒め的存在だった。そんな水と油な2人の主人公が、ぶつかり合い、過去に向き合い、段々親友、相棒へと成っていく様はまさに王道の少年漫画のように熱い。物語が悲惨になっていく中でこの2人の安定感だけは抜群で、相互に信頼のある良い関係性だと感じた。
 その一方で、この作品は現実の残酷さも教えてくれる。農民奴隷として働き、土地を開墾すれば自由の身になれるトルフィン達はまだ良い方で、エイナルが恋をする女奴隷のアルネイズさんの生い立ちから顛末に至るまでは思わず目を背けたくなるほど辛い。そして何より、前王の呪縛に囚われ、すっかり冷酷な王となったクヌート殿下による理不尽な要求が引き起こす新たな争い。1期の頃とは違い、友のおかげで成長したトルフィンは何を思うのか?是非本編を見届けて欲しい。
カニ組長

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