映画ケーン

∀ガンダムの映画ケーンのレビュー・感想・評価

∀ガンダム(1999年製作のアニメ)
4.8
丸くて髭の生えたダサいガンダムも富野演出の元では超格好良く見えて、気付けば好きになってる。

『ガンダム』20周年記念作品でありながら、これまでの全シリーズを「黒歴史」と一蹴。
機械仕掛けの人形を崇める人々に終わりを告げる。この世で最もガンダムを殺したがった男、それは他でもないガンダムを作った男だった。富野さんの尖り具合に痺れる。
「黒歴史」は、しかし富野さんにとってはもっと幅の広いものであった。核兵器がそれだった。

『ダークナイト』『デスノート』『リコリス・リコイル』『東のエデン』『残響のテロル』の様に抽象的な象徴・概念としての「善と悪」を語るのではなく、そこで起きている具体的な偏見や誤解によって生まれる戦争、「善と善」の対立を描いてる。ここまで丁寧に描く作品が他にあるか。
作為的・恣意的な象徴じゃなくて、そこに正に等身大の「人」が居る。

差別や偏見が原因で起きた月と地球の戦争が、個人の思惑による戦争へとスライドしていく流れは痺れた。他のアニメや映画では見られない。

ただ、核兵器が爆発した辺りまでは良かったけど、それ以降は「何だかな」って印象。
初代『ガンダム』は各話が短編として完成してて終わる毎に余韻が残るから、次の話ではアムロ含めた登場人物の成長が分かりやすい。ただ、今作(特に後半部)はそうじゃないから、ロラン含めその他のキャラの成長が分かりにくい。
初代は「戦争」というテーマをやりながら、「人間関係」の話でもあり、青年の「成長」という一貫性があった。
今作は初代の「戦争」の部分”だけ”を取り出した様な印象。
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