平和を祈るヒツジくん

平家物語の平和を祈るヒツジくんのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
4.9
『祇園精舎の鐘の音〜』『たけきもの遂には滅びぬ』で始まる平家物語。今まで平家は軟弱貴族でそれを倒す義経カッケー!っていうのが今までの感想でした。

全11話で14年の動乱を紹介するのでかなり巻き気味で話が進行していきますが、話のテンポが子気味よいですね。京アニで名作を連発した山田尚子監督&吉田玲子さんのタッグは間違いないですね!ジブリの『かぐや姫の物語』みたいな作画で、放送前は重っ苦しい話になるかと思ってたのですが、蓋を開けてみれば主人公のびわちゃんが可愛く癒しで思ってたよりも肩の力を抜いて見れる作品だったので驚きました!
数ある登場人物の中で平徳子が印象的です。徳子は平清盛の娘で、政略結婚で高倉天皇と結婚させられます。当初は「好きでもない男と結婚なんて」と思っていた徳子。自分の父清盛も、兄の重盛も、後白河法皇も、高倉天皇も、とにかく自分の運命を捻じ曲げた全ての人間に辟易した徳子。しかしびわとの出会いや高倉天皇や後白河法皇に献身的に仕えていくことにより徳子の心境に変化が訪れる。
高倉天皇が危篤になったとき、平清盛が「高倉天皇死にそうだしさっさと徳子の息子を天皇にするぞ!」と思い立つが徳子はこれに強く反発。生涯で1度きりの反抗であった。そして成長した徳子がいう「でも私は世界が苦しいだけじゃないって思いたい。だから私は許して…許すの」という言葉は非常に胸打たれました。 最終話では訪ねてきた後白河法皇から「どうすれば苦しみを越えられるのかのう?」という問いに「ただ祈るのです」と徳子は答えました。キリスト教、聖書でいうイチバン大切な掟『貴方の隣人を愛し合いなさい
心を尽くし、思いを尽くし、全力で主に仕えよ-マルコ12:29〜31』という教えに通じる、徳子という人物がひたすらに魅力的でした。
早見沙織さんの声が平徳子という役柄にマッチしていると思います。

随所に出てくる花の花言葉がそれぞれ劇中にリンクしているらしい。花言葉全部は把握してませんが、椿が人間の首をオマージュしているのは上手いなと思いました。グロくならずかつ耽美的な表現。
あとやはりBパートで挟まれる琵琶のシーンが毎話ごとに圧倒させられます。ベテラン声優の悠木碧さんの本気が見れます。

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』と同時期に放送がスタートし、併せて見ることで鎌倉時代への理解がより深まるのがいいですね。