ニジム

SLAM DUNKのニジムのレビュー・感想・評価

SLAM DUNK(1993年製作のアニメ)
4.3
大きく丈夫な身体を持て余していた新入生がかわいい女の子に誘われて入部したバスケットボールの面白さに開眼し、才能を花開き活躍する成長物語、かと思うと、ちょっと違う。

主人公の桜木花道は、まず、成長しない。いや、ある意味してるのだけれどそれは人間的成長ではなく、バスケットボールの技術とか、そういったもの。人間関係は持ち前の明るさ、前向きさ、(偏った)ひたむきさなどで解決する。表面的には大胆で無神経で自己中心的なのだけれど、それらが拡大解釈で長所にもなってくる。近くにいたらすごく迷惑な人間だろうけれども、時々うわっというような場の深さを見せてくれて、それがまた魅力的なんだよな。いわゆる不良が雨の中捨て猫拾う図ですよ。

そして、バスケットボールを描くだけなのに、なぜか面白い。高校生なのにみんな次々とスーパープレイを見せてくれるのはすごいけれども、ちょっとやり過ぎかな(笑)。やたら超高校級といあかそのままプロになってもいけるんじゃないの、という体格とテクニックだし、あんな中で普通の高校生のバスケットボールをしようとしてる生徒はかわいそう。生まれてくる時期と場所を間違えたね。ルールも、現在とは違っているところもあるらしいけれども大まかに楽しむ程度には理解できるようになる。何より主人公が嬉々として悪い見本を見せてくれるので、それにツッコミを入れながら楽しめるんだろうな。

そして、驚きなのが、これはテレビシリーズのアニメでは、らしいけれども、たった半年にも満たない期間の話なんですよね。普通、スポ根漫画って血の滲むような努力をして最後に全国大会決勝へ、といった一直線の道筋がある。この作品もそうではあるのだけれどもそれは登場人物らが漠然と言う「全国制覇」という言葉によってのみであり、花道が入部した時点では地方大会でも一回戦突破も難しいようなチームだ。それがスーパールーキーの入部や怪我や屈折で部から離れていたプレイヤーの復帰があり、それまで踏ん張った赤木キャプテンのもとに集まることになる。それは安西というかつては鬼と恐れられた監督がいるからでもあるのだけれど、この人どうしてここに来たんだろうとずっと不思議だった。湘北は公立高校だし、彼なら引く手数多だろうし、謎に立派な日本家屋の自宅庭には鹿威まであった)や、一体何歳の設定なんだと色々勘ぐりたくなった。ちなみにいつも湯呑みでお茶を飲んでいるが、ところによって色が違うけど、携帯用カップとか持ってるんだろうか。奥様は和服だけれど顔立ちはくっきりとバタ臭い美女である。
チームメンバーの登場が固まったチームに新入生が入るのではない点、対戦相手も魅力的でそれぞれに思い入れの強いファンがつきそうな構成点、その他色々練られているなあと感じたポイントが。これだけの求心力は分かる気がしました。

それを言うと彼らの家族がほとんど出てこないのもすごい不思議。敢えて消してるんだと思うけど、赤木兄妹が家で夕飯を食べているときも、父母に話しかける場面はあるが、姿も返事も無い。赤木の家に大学のスカウトが来るが、相手をするのは家にいた妹でヒロインの晴子と本人のみだ。赤木はあれだけ優秀だし家も裕福そうなので普通の大学に行くと思ってたけど、どういうプラン立ててたんだろう。まあそれを言えば同じ学校で成績の差があり過ぎるというのもあるけど、これは他の学園漫画でもありがちだしなあ。

まあ、そんなの吹き飛ばすほどに面白かったですよ。漫画も読みたくなった。
単に、マッシュアップされるほどの基礎教養でもあるからAmazonプライムの見放題から消える前に見ておこうと思い、見出してから101話あると知って怯み、でもどうにか観終えられた。
主題歌やエンディングテーマ、劇中歌など、いわゆるビーイング系でまとめ上げられていて、歌詞は改めて見ると陳腐なものが多いっすね。サウンドだけだとそれなりなんだけど。

それにしても、あのチラッと出てきたオープニングの踏切シーンで今や海外からも記念撮影しに訪れるというスポットになったのはすごいな。別にメンバーが通ったシーンがあるわけでもない(だよね?)。
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