しゃりあ

王ドロボウJING in Seventh Heavenのしゃりあのレビュー・感想・評価

王ドロボウJING in Seventh Heaven(2004年製作のアニメ)
4.7
再見

シャレ腐ったセリフ回し
スクーデリアエレクトロの劇伴が良すぎ


契機となる夢玉の話が終わってから、
(浮いている酒と踊る女は夢の中っぽい演出だが、それよりもネズミが出てからが契機だろうか)
いなかったはずの者が現れ、被写体の位置関係が狂い始め、唐突な画面が挿入されだすことで、作品内のリアリティラインを超えたなーと分かる

ファンタジー世界なので巨大ななネズミの存在自体には違和感はないが、やはり脈絡なく急に誰か/何かが現れるところが肝

それは物理的にどうこうと言うのでなく、編集スピードに依るものが大きい
現実ならカットとカットの間にはカメラには映らない時間/移動があるはずだが、キャラたちの会話はそれを無視して編集と完全に同期しだす

つまり、作品内に世界があり、その世界で起こっていることをカメラを通して見ているのではなく、作品内世界=編集、と完全に同期することで、ある種第四の壁を超えてくれる

この辺りはパプリカの「イマジナリーラインを超えてるぞ」と呼びかけるシーンの虚構と現実感と通じる部分がある


夢の中に入ると場面/画面転換は明らかに加速する
デキリコ、エッシャー的なシュルレアリスムの夢世界がパッチワーク的に切り替わっていくし、唐突な画面分割などの演出が挿入されるようになる

夢の各セクションにあるギミック(建物をお貸しの箱のように倒したり)は夢としてのおかしさを演出する世界観としてではなく、テンポの速さを担保して、この酩酊感を保つための手管のひとつ

上記のデザイン的おもしろさや夢のディティールも大事だが、
この移動と画面効果の切り替えの唐突さ自体が"夢"感であるし、seventh heaven世界及びOVA全体の酩酊する面白さを作り出している



キャラに関して言えば、
主人公のジンとバディのキールはこの世界を回遊するだけ

メインなはずのジンは夢世界で行動に迷うことなく、ただ狂言回しに徹している

ヒロインのベネディクティンは同じく、回遊の導き手として機能している
早々に夢の中の登場人物であることが明示されて、"いるわけがない者"、虚無として描かれるから、メイン軸としてジン/キールとのラブロマンスが展開されないことが予見される
そもそも"各話ヒロイン"であることも加味すると、だいぶ構造の一部でしかないことが強調されていて儚い


OVA2話では、原作でも別の話の過去話が挿入される
マジこのシリーズ構成の仕方はすごい
上記の酩酊感もさらに増すし、その中でリアリティラインが元に戻ることで、明晰夢的なものから、完全な夢中夢としての雰囲気が演出されている
カシスも幼馴染ポジなのに各話ヒロインだし

OVA3話はAwake (in seventh heaven)の通り、ジンたちの行動が"回遊"から、カンパリが矢面に立つことで、"ドラマを追う"に切り替わる
また空間移動というより場面転換に重きが置かれることで、1話より酩酊感とテンポはだいぶスローダウンして、起きてるんだか夢を見てるんだかわからない温度感が演出される

これはカンパリのアカシア族のモノローグをクライマックスに持ってくるためのBPM調整で、いざセリフシーンに入ってもトロさのギャップを感じさせずチグハグな印象を与えない

さらにテンポはスローテンポなバラードになって、結婚のシーン
普通のアニメとか別の話数なら、主人公の物語を追っているので、サブのカンパリの話がメインに来ても割とどうでも良さそうなもんだけど、これに至ってはジンが狂言回しでしかないので、すんなり観れるのもかなりスマート


グダグダ書いたが、
要はこの"回遊"パートのワードサラダっぽい切り替わりの速度(≠編集/演出速度)による酩酊感が本当に好きだし、
それをやりながらも破綻なく、むしろコンセプトとしてOVA3話全体を綺麗にまとめ上げている完成度の高さを褒め称えたいよ俺は

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