“お蝶夫人”こと竜崎麗香に憧れて、親友マキとテニス部に入部した西高一年の岡ひろみ。地区大会を一週間後に控えたある日、宗方仁が現れる。着任早々、過酷な練習を課す宗方に反感を抱くひろみ。そして、代表メンバーが発表されるが、その選出は全部員の予想外のものだった。
地区大会の代表メンバーとして抜擢されたことにひろみは困惑、先輩たちも不満を隠せない。お蝶夫人にも促され、宗方に選手辞退を申し出るが取り合ってもらえず、ひろみはお蝶と宗方の二人の板挟みに苦しむ。それでも男子テニス部のエース藤堂に励まされ、ひろみは奮起するが、先輩達の特訓で完全に打ちのめされてしまう。
上級生達の嫌がらせで靴に画鋲を仕込まれたひろみは、大けがを装い再び選手辞退を試みるものの、宗方を誤魔化せない。ある日、練習試合が組まれた。ひろみに練習相手を申し入れた音羽の思惑は、実力の差を証明して代表選手の座を奪うことにあった。だが、惨敗したにも関わらず、宗方はひろみの代表決定を覆さそうとはしなかった。
地区大会前々日、ひろみは新聞部の部長、千葉から「新人・大抜擢!抱負を語る」の原稿を依頼される。調子に乗って引き受けたものの、徹夜になってしまい、しかも寝坊して肝心の試合に遅刻。さらに睡眠不足からケイレンを起こして棄権するハメに。そんな、ひろみをお蝶夫人や男子テニス部員・藤堂は暖かく見守るが……。
試合を棄権してしまったことで、代表選手降板を決め込んだひろみだが、宗方の決意は揺るがない。ひろみに対する音羽の嫉妬は激しさを増し、ひろみがお蝶夫人から譲り受けたラケットを隠すという嫌がらせにまで出てしまう。その上で音羽は宗方に対し、選手の再選考を賭けて、ひろみとの対決を迫った!
音羽との対戦には勝利したものの、ひろみに向けられる上級生の視線は相変わらず冷ややかだった。さらに宗方の連日の特訓で、心身ともに憔悴しきっていたひろみだったが藤堂の励ましに奮起。そして、特訓の甲斐もあって、ひろみは苦戦しつつも遂に地区大会準決勝で勝利を掴む。
地区大会での活躍が校内新聞に掲載され、ひろみに対する上級生の反感はますます強くなった。そんな中、決勝戦のひろみの相手は“弾丸サーブのお蘭”こと加賀高の緑川蘭子に決まった。その長身から繰り出される猛サーブを目にしたひろみは自信を喪失。大会当日、とうとう試合から逃げ出そうとするが……。
ひろみの不注意で怪我をしたお蝶夫人は、翌日、学校を欠席してしまう。心配でたまらないひろみはお蝶夫人に赤いバラを届けるのだが、そのお蝶夫人はひろみにある予感を抱き始めていた……。地区大会の個人戦、ひろみは皮肉にもお蝶夫人と対戦することになってしまう。憧れのお蝶夫人を前に、萎縮していたひろみは全力で挑もうとするが……。
ひろみとの試合には勝ったものの、その内容に戸惑うお蝶婦人。可愛がってきた後輩・ひろみと戦うことに恐れを抱いたお蝶夫人は、自分かテニスのどちらかを選ぶよう、ひろみに迫った。お蝶夫人を慕うひろみは困惑し、その真意を理解できぬまま、テニスを辞めることを選んでしまう。しかし、ひろみの中でテニスへの思いを断ち切れないでいた。
4日ぶりにコートに戻ってきたひろみを待っていたのは宗方による猛特訓だった。その気迫と励ましで、ひろみはテニスへの情熱を新たにし、徐々にではあるが自分自身のプレイスタイルを確立してゆく。その姿を見て、お蝶もまた、ひろみとの決別を確信する。そんなある日、ひろみは、お蘭から「打倒!お蝶夫人」の宣言を聞かされる。
お蝶夫人対お蘭の地区大会個人戦決勝戦。女子高生とは思えないハイレベルの試合展開となるも、お蘭が手の故障でやむなく棄権してしまう。悔しさのあまり、宗方の胸で泣き崩れるお蘭。だが、その親しげな様子に不思議に思ったお蝶夫人は、試合終了後、宗方につめよる。ひろみは偶然、その様子を立ち聞きしてしまい……。
宗方とお蘭が異母兄妹!? 予想外の二人の関係に驚くひろみ。そんなひろみとお蝶夫人に対して、宗方はダブルスを命じた。果たして、二人の息は全く噛み合ず、ひろみは思い悩む。そんな中、怪我をしたお蘭と出会ったひろみは、「テニスができる上での悩みなど何でもないはず」と諭される。そして関東大会に挑むが、予想通り、ひろみへの集中攻撃に苦戦し……。
お蘭の励ましもあり、勝利したお蝶夫人・ひろみペア。次なる対戦相手は宗方の同期・太田コーチ率いる大原高。またしても標的にされるひろみだが、お蝶のカバーで勝利し、決勝進出を決めた。その二人の試合振りに、太田は宗方のある思惑を見ぬく。
セントヒルダ高との関東大会ダブルス決勝戦。ミスが目立つひろみをお蝶夫人が巧みにカバー、辛うじて勝利した。だが、ミスの連発に負い目を感じたひろみは素直に喜べない。それでも、藤堂の励ましもあり、ひろみはある思いを抱き始める。「強くなりたい、自分のテニスをしたい」……。
全日本ジュニア一次メンバーに登録されたひろみ。だが、新学期の軽井沢合宿では、藤堂への恋心から練習中も上の空だった。そんなひろみに対して、宗方は「目標達成までは恋を忘れろ!」と一喝する。やがて、ひろみは宗方が自分に託そうとしているものに気づき始める。
合宿から戻ったひろみは、早速、全日本ジュニア選抜の合宿に山中湖へ向かう。そこで遭遇したのは、帰国子女にして自信家の宝力冴子、過保護な母親が同伴する美咲優子といった強豪選手達。自信を喪失したひろみに対して、宗方は「自分の力を信じろ」と諭す。その言葉で立ち直ったひろみは選抜試合に立ち向かっていく。
猛特訓の成果もあり最終選抜大会で、ひろみは宝力との試合には勝ったものの、次の対戦相手はお蘭。健闘むなしく敗戦したひろみに残されたのは残り1試合となった。だが、最後の試合相手はお蝶夫人だった。その試合で披露される華麗なテクニックに翻弄されるひろみ。だが、そのプレイにはお蝶夫人のある思いが秘められていた……。
選抜大会では敗退したものの強豪相手の健闘ぶりが評価され、ひろみは全日本選抜メンバーに抜擢された。再開される猛特訓のさなか、宝力が全欧オープン出場選手であるオーストラリアのエディ・レイノルズとその妹アンジーを連れてきた。そして宝力は、ひろみとアンジーの試合を設定する。
来るべき新人戦に向けて一年生の指導に励むひろみ。だが、宗方は指導者としてのひろみの欠点を忠告する。そんな中、選抜メンバーの合宿に参加したひろみは、ランニング中にこむら返りを起こしてしまう。藤堂に介抱されたひろみだが、突然の悪天候に襲われ、海辺の小屋で雨宿りすることになり……。
豪州テニス協会からの招待状を受け取ったひろみは、宗方たちとシドニーへ向かった。宗方の目的はテニス王国での武者修行、すなわち、ひろみに本場のテニスを体験させることだった。果たして、ひろみは慣れぬ芝コートでの中学生相手の練習試合で、疲れた足にまとわりつく芝も敵となり、敗戦を喫してしまう。
強豪エディから、やっとの思いでエースを取ったひろみ。しかし、喜びもつかの間、二度とエースを奪取できなかった。迫り来る帰国の日と、残された時間がわずかであることに焦りを感じた宗方は、お蘭の制止も振り切り、ひろみの練習相手としてコートに立った。ひろみも宗方の意図を必死に感じ取ろうとするが……。
新学期を迎え三年生になったひろみは、新人テニス部員たちの憧れの的になっていた。そのひろみは体調を崩している宗方の代わりに、新たに西高のコーチとなった太田から猛特訓を受ける。そして関東女子インターハイ決勝戦、来日していたランキング・プレイヤー、ジャッキー・ビントも見つめる中、ひろみは宝力と対戦するが、宝力はなぜか凡ミスを連発し……。
ジャッキー・ビントの来日目的が、全豪プロ選手権におけるダブルス・パートナーとしてひろみをスカウトすることだと知り、動揺するお蝶夫人。一方、ひろみも世界アマチュア選手権選抜大会で、お蝶と対戦することに迷いを感じていた。だが二人は順調に勝ち進み、迎えた決勝戦、お蝶夫人とひろみは遂に宿命の対決を迎える!
母親の命日、宗方は母の墓前で己の運命とひろみに思いを馳せていた……。そして、日本代表として渡米する藤堂やひろみたちに、同行できないことを告げる。その宗方の優しげなまなざしに、不吉な予感を覚えるひろみ。果たして、その予感は現実のものとなってしまう……!
病に倒れた宗方を案じて駆けつけたひろみ達。心配させないよう笑顔で迎えた宗方だったが、残された時間がわずかであることを悟っていた。宗方は、自分の胸の内を藤堂だけに明かすと、ひろみを藤堂に託す。そして、ひろみたちがアメリカに向けて旅立とうとするまさにその時、宗方の命は燃え尽きようとしていた……。
(C)山本鈴美香/集英社・TMS