ShigeakiMiyano

PLUTOのShigeakiMiyanoのレビュー・感想・評価

PLUTO(2023年製作のアニメ)
4.5
タイトルの「プルートゥ」とは…
言わずと知れた漫画神 “ 手塚治虫 ” 先生の
名作「鉄腕アトム」の中のエピソード
「地上最大のロボット」に登場する敵役の
ロボットを指します

今作品はそのエピソードを深く大きく
再構築させたのは「20世紀少年」や
「Monster」を手掛けた浦沢直樹氏です
全8話400分を超える大作ですが一気見
させちゃうストーリーで観た者の心に強く
訴えて来ます

「誰かこの憎しみを止めてくれ」
このメッセージが根幹を貫く物語は
今現在、この世界に起こっている惨劇の
源とあまりにも通じ合っていて驚かされて
しまいます、憎しみの連鎖は何も生まない
そんな単純な答えにどうして辿り着けない
のでしょうか?

さて、本題の方も浦沢さん渾身の作品らしくとてもとても深い内容になっています
たとえ高性能のロボットとは限りなく人間
に近い存在になって行くのか?人工知能に
悲しみや怒り・憎しみと言った感情は
芽生えるのか?ついには人と同じように
殺人も犯してしまうのか?そんな疑問が
歯車となってストーリーが進行して行き
人間の持つ感情と複雑に絡み合いラストへ
一気に突き進んで行くのです

また余談になりますが…手塚治虫が生んだ
「鉄腕アトム」の物語自体が恐怖小説の古典
「フランケンシュタイン」と同じだと思える
のです、愛する我が子を失った天馬博士が
息子の代わりに作り上げたロボットが
アトムですが博士はそれを愛する事が
出来ずに苦悩するのは似ていますよね

世界最高峰のロボットが次々と破壊され
同様に屈指の科学者も殺害されて行く
事件を追うのもロボットの刑事ですが
捜査を進めていく過程で見えてくるのは
大切なものを失い抱える悲しみそこから
湧き出す怒りや憎しみの感情に支配される
傷ついた者たちです
浦沢直樹氏の画力が見事に登場人物の
心情さえ描き、ドラマチックな場面展開で
グイグイと引き込んでいきます

果てしなく続く憎しみの連鎖の一方で
深く暖かな愛情や慈しみのエピソードが
紡ぎ出されて一条の救いとなっていきます
しかし悪意の最終目的が明らかになった時
憎悪の化身と慈しみの象徴との最終決戦が
幕を開けるのです

リアルタイムで起こっている紛争の解決策
その答えにつながるような意義のある作品
手塚治虫へのリスペクトを超えた浦沢直樹
の最高傑作のアニメ化を心から祝福したい
そんな一本です。
ShigeakiMiyano

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