一匹の母猫によって育てられた火吹き竜。本来であればこの世に生まれ落ちることのなかった存在。とある理由で極度の人間嫌いの竜は、母猫への恩を返すかのように森の猫たちに寄り添い続けた。猫たちはそんな竜のことを親しみを込めて「羽のおじちゃん」と呼ぶ。森の猫たちは十猫十色。人間の王子と冒険の旅に出る猫。街に暮らし人間観察を趣味にする猫。代々猫じゃらしの畑を守り続ける猫。少女に魔法を教える猫。そんな好奇心旺盛な猫たちを竜は助け、見守り続ける。そしてはじめは人間を嫌っていた竜も彼らを通して人間を知り、やがて……。これは猫に育てられた一匹の竜と猫たち、そして人間たちの、温かくて、不思議で、ちょっと切ない物語。
©アマラ・大熊まい/宝島社