紫猫

ゴールデンタイムの紫猫のレビュー・感想・評価

ゴールデンタイム(2013年製作のアニメ)
3.7
同じ作者の『とらドラ』と比較されて陰にやられてるけど良作ではあると思う。
ただ『とらドラ』の主人公があまりに出来た人間で、他の登場人物たちも関係性の中でしっかりと成長していった物語だったと思い知らされるような内容。
よく言えば、こっちの主人公は周りに流され自分に都合の良い嘘もつく現実的な人間なのかも。成長することなく、ずっと同じ話を繰り返し続けてるのも評価されない理由なんだろうけどリアルではある。
ラストを迎えても結局このあとまた同じ事でぶつかり合ってる未来が見えてしまうのも辛い。

記憶がないという想像すら出来ない設定があるとしても、彼女が嫌だといってる事を尽くやっていく主人公はやっぱりキツイ。周囲も周囲で、建前として言ってることをそのまま受けとって相手が傷つくであろうことを平然とやってしまう。リンダ先輩、そこで同窓会に誘うか?っていうガッカリさ。

本当の愛や恋がしたいと一話でいいながら、全て勢いに流されるように進んでいくのもリアルで悲しい。やっぱり最初の付き合い方が重要で、正直振られた流れで告白して付き合ってるようにしか見えないから、修羅場を乗り越えてもイマイチ惹かれないカップルになってる。現実的には別れたほうが幸せになれると思うし、終わった後に心から二人を祝福できた人は少ない気がする。

結局この物語は愛や恋とかではなく、記憶を失った自分と失う前の自分との完全な個の物語だったんだと思う。圧倒的聖者の二次元くんを除く主要人物も、一貫して自分のための行動や発言ばかりで良いセリフはあるんだけど響かない。
この作者さんは群像劇がうまいだけにテーマとの相性がいまいち良くなかったように思う。
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