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スモール・アックスのFrengersのレビュー・感想・評価

スモール・アックス(2020年製作のドラマ)
3.8
第1話「マングローブ」試写@日本橋tohoシネマズ

filmarksではドラマ枠に入っていますが、この第1話は映画といっていいのではないか。海外のサイトを見ても映画の枠に入っていたりする。実際、歩く主人公を高台から撮影するロングショットはアメリカン・ニューシネマのオマージュに見え、物語が68~70年を描いてることと見事にシンクロしている。更に手元足元のショットや机を叩く動作、逆光や車中のショットの反復がキーになる。赤と青の配置や揺れる小道具の繋がりといった要素も見逃せない。歩くシーンの流麗なカメラ裁きや長回し、手ぶれのドキュメンタリータッチまでの縦断的な撮影スタイル、そして起承転結(ドラマ)というよりは回帰的なプロットと音楽の使い方とフィルム撮影。エンドロール後は、ついついこれは映画だと言いきってしまいたくなる。そんな作品です。「デトロイト」の最適解をみたような「シカゴ7裁判」の一歩先をみたような。2020年作の映画のトップテンのリストを作るとしたら間違いなく入る出来でした。

回しものみたいでイヤですが、スターチャンネルにて本作の無料放送が4/16にあります。素晴らしい作品の希少な機会ですのでとりあえず見てみることをおすすめします。


全話完走。個人の変遷を中心に置きながら、制度やコミュニティを描く。
冒頭と終盤は必ず主人公のショットで終わり、その変化が浮き彫りになる。嘗てのコミュニティが決裂する『マングローブ』、キリスト教的コミュニティから抜け出した時間だけを描写しながら、暴力や反体制と隣り合わせのロマンを描く『ラヴァーズ・ロック』、少年期のロマンが途絶え、結局昔の父親と同じ失望を味わう『レッド・ホワイト・アンド・ブルー』、自身の出自と学問に目覚める『アレックス・ウィートル』、社会的な呪縛を飛び越えて無限の可能性に帰着する『エデュケーション』(階段の反復!)。『ラヴァーズ・ロック』長回しによるムードの捉え方、ダンスフロアと屋外の照明の妙は類を見ないものだったとおもう。
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