ももすけ

彼女はキレイだったのももすけのネタバレレビュー・内容・結末

彼女はキレイだった(2021年製作のドラマ)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

1話2話は、宗介の態度が悪すぎて、また無理ある「イケてない設定」の愛が卑屈すぎて、物語に入れず、脱落するかと思った。
3話から宗介の人間的な可愛げが見えて、突然物語が息を吹き返したように感じた。
そこからはトントン拍子に、物語の世界に引き込まれていった。

宗介役の中島健人くん、愛役の小芝風花ちゃんは、本当に素晴らしいコンビネーション。
そして、この物語の何よりの立役者が、樋口役の赤楚衛二くん。
彼が樋口役でなければ、このドラマがここまで熱狂的に支持されることはなかったのではないかと思う。

樋口の明るさ、剽軽さ、かと思えば人に対する真摯さ。飄々とした軽みのある存在感とは裏腹に、その真の姿は誰よりも厚みのある、深い人間性を湛えている。そしてその闊達かつ清廉さゆえ、ふとした拍子に感情を溢れさせ、抑えきれない衝動を垣間見せる瞬間が、たまらなく心を揺さぶる。

……と思っていたら、終盤、愛への恋心を自認してからの宗介の愛おしさは圧巻。
「アイドルのプロ」の底力とはこのことかと激しく納得。

何よりも素晴らしいと思ったのは、梨沙と宗介をグチャグチャさせなかったこと。
見せ場としてついそうしたくなると思うけど、一切しなかった。
このドラマに大切なのは、見せ場とかテクニカルなことではなく、真心なのだと貫き通した。

梨沙の「悪事」は、愛への不誠実という捉え方、焦点とされたのは、愛との友情。
梨沙の恋心は出発点から間違っているのだから、存在自体認められないもの、ありうべからざるものなのだ、だから問題にすることすらあり得ないのだという非情なまでに厳しい倫理観があった。だから、梨沙が宗介に謝罪(と見せて体のいい弁解)の手紙を渡そうとする場面で、宗介がアウトオブ眼中で愛のもとへ駆け出すのは、本当にうまい!と思った。

そういう意味で、視聴率のために、物語の完成度を犠牲にして、話題作りの生放送などしたのは、ちょっといただけなかったなぁと思う。

でも、本当に楽しいドラマだった。
ももすけ

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