パワードケムラー

ピースメイカーのパワードケムラーのレビュー・感想・評価

ピースメイカー(2022年製作のドラマ)
4.5
 トロマ時代から培われてきたジェームズ・ガン監督の「負け犬たちのチームアップ」という点は『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』や『ザ・スーサイド・スクワッド』などとも同じだが、そこに「学校における『いじめっ子』と『いじめられっ子』の関係性」や「自分をヒーローと思い込むことだけが心の拠り所のピースメイカー」、「発達した宇宙人たちの視点」を加えることで現代の社会問題である「ポストトゥルース(日本で俗に言うネットDE真実)」や「ナショナリズム」に、「過度なポリコレ批判という名の白人男性至上主義やマチズモ」、「白人ということだけが拠り所になっているホワイト・トラッシュ」などを描いているのが秀逸。
 
 特にピースメイカー/クリストファー・スミスという白人かつマチズモの男を中心にすることによって、「マチズモと白人至上主義の中で育ったことにより社会のアップデートに適応できなくなった哀れな中年男性」を生々しく描きながら、ジョークとしても成立させる手腕には驚いた。彼の発言の節々やレオタ・アデバヨの「今の世界は白人のノンケ男にはさぞかし息苦しいでしょうね」という皮肉は文字通り芯を食っていた。

 だが、唯一残念なのは作中でバットマイトやグリーンアローなどのDC各種ヒーローやヴィランに触れているのにも関わらず、既にDCEUが崩壊寸前なので何も意味をなさなくなってしまったところ。グリーンアローが登場すると言われていたHBO Maxオリジナルの配信ドラマ『ブラック・キャナリー』は制作中止が危惧されているし、エズラ・ミラーの逮捕によって「フラッシュには会ったことはあるが凄く嫌な奴だった」が真実になってしまったことだろう。一応、ジェームズ・ガン監督はシーズン2は制作されるとしているが、真実はわからない。