ひろ

DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機のひろのレビュー・感想・評価

5.0
素晴らしかったし、本当に意義の大きい作品だと思う。
サックラー家、パーデュー社と販売員、調査する検事、DEA、被害者とその家族。という複数の視点を通して、オキシコンチンがどんな薬か、いかにして意図的に蔓延させられていったか、どれほどの悲劇をもたらしたかを丁寧に描いている。

痛みを緩和したい、目の前の患者を救いたいという、ただそれだけの思いで使った薬が、その人たちの人生や命までも簡単に破壊してしまうというのが本当に酷い。
そしていったん依存症に陥ると薬を断つことが非常に困難であり大変な苦しみであり、本人だけでなく家族や地域までも破壊される。いかに大きな悲惨かが、強いメッセージとして丁寧に表現されていたように感じる。
その悲劇の上に富を築いて呵呵大笑している製薬者側の醜悪さ。8話で被害者家族が製薬会社幹部に言い放った、あなた達は悪そのものだという言葉はまさにその通りだ。

中毒とは薬だけの話ではない。お金もまた酷い中毒を引き起こし、こんなにもモラルを破壊するものなんだと嫌になるくらい見せつけられる。

粘り強く事件を追いかける検事とDEAの捜査の過程も見ごたえある。
検事二人組が凄く良いコンビで。キャストそれぞれの演技や背景もちゃんと描かれていて、観ていて飽きない。

ベッツィが失ったもの、苦しみ、そして娘を何とか救いたいと願う両親の姿には涙しかないし、同様の家族がどれほどいたか。
そして癒着した医者ばかりではなく、目の前の患者を地獄の苦しみに突き落としたという自責の念に苦しむ医者も多かったろう。

私たちの生活はありとあらゆる企業に支えられていて、そのモラルが保たれていることを前提としている。
それが崩れた時にもたらされる被害の大きさを目の当たりにして、自分たちの生活はただ「信用」という目に見えないもので支えられているに過ぎないということが少し怖くなった。
ひろ

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