パワードケムラー

ボバ・フェット/The Book of Boba Fettのパワードケムラーのレビュー・感想・評価

4.0
SF×任侠×西部劇=ボバフェット!

 内容としては『ボバ・フェット』というよりも『マンダロリアン外伝』に近く、ボバ・フェットが如何にしてEP6を生き残り、そしてマンドーと出会ったのかを回想する場面とスパイス(=麻薬)カルテル「パイク」との仁義なき戦いの二部構成となっている。

 しかし、『マンダロリアン外伝』と称したようにマンドーの活躍シーンが多いが、一方でグローグーとの再会やマスタールークによるジェダイ寺院再建と修行、そしてアナキンの弟子であるアソーカとアナキンの息子であるルークの会話などは「EP6の正統続編」ということを意味しているのかもしれない。そのためEP7-9に不満を抱いたファンの溜飲をが下がるような場面も多いが、一方で「グローグーにベスカーの鎖帷子(マンドーと再会できるが執着を持ったとしてジェダイの道は断たれる)とヨーダのライトセーバー(再建されたジェダイアカデミー最初の生徒として騎士の道を歩むが、マンドーとは会えなくなる)のどちらか一方を選ばさせる」という冷徹なEP7-9のルークの片鱗を見せる。

 これはルークなりの優しさと捉えることもできるし、カイロ・レンによるジェダイ寺院破壊とパダワンたちの殺害の被害者にグローグーはいなかった説明付けと『マンダロリアン』シーズン3にグローグーを出すためのご都合設定にも思える。正直、ここまで来たらバッサリとEP7-9は切り捨てても良いように思えた。

 だが、欠点だけではなく次郎長のようなボバ・フェットに様々な種族の文化的描写(特に蛮族の盗賊扱いされていたタスケン・レイダーたちが棍棒を自らの手で作ることで部族の一員として認めるという「先住民的文化」と「ジェダイのライトセーバーづくりに近い文化」を持つ種族だと描かれたり、ガモリアンたちを誇り高い戦士の種族だと描いたりと、多様な人種がいるのは当たり前でそこから宇宙的種族たちの多様性を描く手法)には脱帽した。この点は『マンダロリアン』の敵対していたタスケン・レイダーとモス・ペルゴ(現フリータウン)の住人の共同作戦によるクレイト・ドラゴン討伐に近いものを感じた。

 また、ランコアの詳しい生態やランコアVS巨大ドロイドの怪獣バトル、『クローン・ウォーズ』でお馴染みのキャド・ベインとの一騎打ちなどファンには嬉しい要素も多い。

 正直、映画シリーズの新作よりこちらの方が『スターウォーズ』の正当続編であり、ファンにも新規にも満足いく仕上がりになっているように感じる。