Kaji

ある日~真実のベールのKajiのネタバレレビュー・内容・結末

ある日~真実のベール(2021年製作のドラマ)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

状況証拠の収集に終始して真犯人追及を怠った警察・検察、いっときの相手が惨殺されたことで犯人となったヒョンス、市井のトラブルを扱う弁護士の3者が事件、裁判を通して交錯する。

でも、このドラマは社会や善悪を描くものではなくて、ある事件を経て変わる人間の心理こそを描きたかったドラマなのかなと思う。
BBC のドラマが原作、そちらは観ておらず解釈の変化を感想に落とし込めないが、途中から冤罪ではなく推定無罪の是非に迫るのかな・・と思っていたらその論を展開したのはシン弁護士の弁論のみで、主役のヒョンスは最初は狼狽え続け(誰だってそうなる)、警察は当て込み捜査を正当化して、検事は出世に利用するという業と業の摩擦がドラマになっていた。

ヒリつく展開のスリリングさは見事だったけど、ヒョンスが「自分が助かった」こと「隣で女性が殺された」ことをどんどん観ないようにしていく様が辛く、そこにもっと死者への敬意や優しさが欲しかった。
 亡くなったグクファがただただエキセントリックな美女で最初から「死体」だった描き方には少し疑問がある。彼女は無言のまま、生存者・関係者が闇に向かうように展開したのは何を表すためのものだったのか。
もっと描く余地があったのではないだろうか。

このドラマの真の主役はシン弁護士だったなと思う。
アトピーを抱え、裁判が混迷すると増えていく湿疹、革靴で表した社会を歪めて人権を軽視する権威への憎しみなどチャスンウォン俳優が熱演していた。裁判のシーンも圧巻。

監獄のボス・トジテもすごく印象的な役だったけど物語上の配置で何でそこまでヒョンスに肩入れするのか見えづらかったなと思う。
多分、憶測だけど、、トジテも冤罪で収監されているんじゃないかなと。。
で薬の流通から裏社会をしるトジテはヒョンスは冤罪だと察していたんじゃないかと。

ミレー「晩鐘」が壁にあるカットや、シン弁護士の皮膚疾患、トジテのタトゥー、ベテラン刑事(キムホンパ)の振る舞い、ナイフゲームなど、比喩をたくさん入れたドラマだったので、伏線の伏線を読みとくことも面白さの一つだったと思う
Kaji

Kaji