Kaji

配達人 ~終末の救世主~のKajiのネタバレレビュー・内容・結末

配達人 ~終末の救世主~(2022年製作のドラマ)
3.3

このレビューはネタバレを含みます


一方的な理想の危うさをシーソーしながら進んで行くディストピア義賊ストーリー。韓国SFが陥りがちだった世界観の崩壊が起こらず力の構図もわかりやすかった。。ルックにブレードランナー2049やマッドマックス、ナウシカの影響がビシビシあって既視感はあるけど絵の強さは申し分ない。
ソウルの街並みが砂に覆われた世界、都市構造と砂漠が一体になり、車を走らせるために都市遺構の道路インフラは残ってるとか、砂漠から始まった街ではなくてあくまで都市が砂漠になったって線を崩さないルックはとても良かった。

うーん、でもちょっと入りづらさがあった

というのも、いわば革命とテロ/クーデターの正当性について描写が甘くて権力転覆の指針が「巨大独占企業の悪意をつぶす」ことになっていて、本来あるべき大気の平等を奪還することと着地点がズレてるように感じた。
(おそらく正義や善悪問題に還元しないためのあえての演出だと思うけど)。
 金銭や食料ではなくて大気の管理が利権になっているのは注目すべき視点だが、空気の浄化が肝になるんだったら配達人たちは巨大企業のシステムを破壊するのが正解だったんだろうか。

ただその私が「甘い」と感じた部分が最終話で効いてきて、難民と生活を保証されていた人々が同じ地平になるというラストに、それまで蓄積された難民の人の身体への負担や生活苦、一般・特別の人の生活監視管理状態が渾然一体になった社会の困難さを思う。
社会の複雑さは持続されるであろうその後の世界で配達人としてトラックを運転していた5−8は何を運んでいたのだろうか。突然変異の身体を持つサウォルが隣に座っているのである。

ダンディズムが微かな希望と同居したラストは久方ぶりで、西部劇のラストのように感じた。

とはいえ、5-8の幼馴染たちがすぐそばで射殺され山になった過去、「ワクチンだ」「一般区域に入れます」との甘言で虐殺計画を練っていたソク社長、やばい人すぎる。ソンスンホン俳優、スマートな身のこなしと邪悪さを醸す良い演技で魅せてた。
主演のキムウビン氏も堂々と歩くシーンがとてつもない自信と信念を感じさせるキャラクター造形に違和感が無く、リーダーシップを歩くだけで感じさせるのはさすが元トップモデル。

野良の科学者として生きてるキムウィソン氏のオルシンが新世界で大活躍するS2あったら見るぞ。

蛇足だが、「酸素の配達、、、」爆発したら終わりじゃんって。火気厳禁なトラックにガンガン銃を撃ち込むのヤバすぎる。穴空いたら爆発やんとかも思った。

 

20230516加筆修正
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