もこもこくじらーたいちー

デップvsハードのもこもこくじらーたいちーのネタバレレビュー・内容・結末

デップvsハード(2023年製作のドラマ)
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このレビューはネタバレを含みます

ファンタスティックビーストやパイレーツオブカリビアンを降板したジョニーデップ氏の話を聞いていたが、その詳細を知らない状態でYouTubeでジョニーデップ名誉毀損裁判についてほぼ全公判を和訳しているチャンネルを見つけて半分ほどの証人尋問を見た(これは反省しなければいけないがある種の野次馬根性として)。そしてアメリカ本土の温度感を知れる動画はないのかと探したらこのドキュメンタリーをNetflixで見つけた。以下みた感想を簡単に。
前提として、このドキュメンタリーは配信された公判の内容をかなりカットしているし、公判以外のソーシャルメディア上での一般市民の反応をかなり取り上げでいる。

総論としてはジョニーデップ氏、アンバーハード氏双方に信頼できないところは見られ、その比重はハード氏の方が大きいといった感じ。判決結果も概ねそのようなもの。ドキュメンタリー内でたびたび言及されるように、真実を追求すると言うよりはどちらか陪審員の信頼を勝ち取るかのゲームだった。その面で、これが全米にライブ配信されると言う状況の中で、両氏の証言をするその内容、態度がどれほど作られたものなのか、あるいは作られていないものなのかという大衆の目に晒されたとき、デップ氏陣営がかなり上手で合ったと言う印象。「真実を語るため」と滔々と言葉を紡ぐデップ氏と、彼と彼の弁護団が親密にコミュニケーションして信頼関係を築いているかのような様子は魅力的に見えなかったといえば嘘になる。
またこの公判がライブ配信されたことや証拠の認定(オーストラリアでのデップ氏の助手のメールなど。後々それが捏造の可能性があると言われたりしたが、公判中にも写真の証拠能力についての議論があったためメールでもその議論が行えたのではとか色々言えるが)の面でデップ氏側に有利な状況があったとは言えると思う。だがその状況作りもデップ氏側の弁護団の戦略だと思うしその面では裁判における一要素とも言える。ハード氏は裁判途中から性的虐待についても言及し始めたので、その信憑性以前にその時点から非公開にできたのではとかは思う。
結果としてはデップ氏は恐らく目論見通りかなりの名誉挽回を果たせたし、ハード氏側は弁護団含めかなりのマイナスな印象を被ることになってしまったと思う。今回の判決がDV被害女性に向かい風かと問われれば恐らくそうだし、DV被害を受ける男性には追い風かと問われれば恐らくそうだろう。DV被害女性がその状況を打開するための手段として、”それを公にし、直接糾弾する”ような行為は特にしづらくなってしまうと思う。
また、ソーシャルメディアでの過激な私刑感情(匿名、非匿名に関わらず)や、そのインプレッションと経済性の関係などは裁判に関わらず相変わらず大きな問題だし、それが陪審員にもたらす影響も今回だと言及しなければいけないことだと考えられる。

ドキュメンタリーの感想というより今回の裁判全体に関する感想になってしまったかな。