みや

恋愛偏差値「第三章 彼女の嫌いな彼女」のみやのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

【だから、恋はやめられない。】

四話×三シリーズ「恋愛リレードラマ」の第三章。

本作は坂元裕二が著書で明かした通り、約6年間テレビ界から離れたのち、復帰して「脚本家になろう」と思ったきっかけのドラマであるそうだ。

仕事一筋アラサーお局OLの川原瑞子(財前直見)としばらく働いたのち寿退社することを目標とする腰掛OLの吉沢千絵(柴咲コウ)のそれぞれの恋模様と次第に形成される二人の友情の変遷を描く。
(原作:唯川恵『彼女の嫌いな彼女』)

川原には不倫相手の大友史郎(柳葉敏郎)、吉沢にはいつまで経っても夢を忘れられない元カレ・加納司(海東健)の存在がいて、彼らとズルズル関係を続けてしまう。

一方で、時を期して二人が恋した相手がまさかの同じ相手で、川原は仕事の一環として、吉沢は遊びの対象として利用されてしまう。

いがみ合うこともあった川原と吉沢だが、マンションのお隣さんという関係から次第に友達となり、互いの悩みや感情を共有することで二人は各々が進むべき道を見いだす。

吉沢
「でこぼこしてて、どこへ転がっていくのかわからないのが恋か」
川原
「あなたの恋はどこに転がっていくんだろうね」
吉沢
「私の恋?」
川原
「(舞台のチケットを出して)預かったのよね。司くんが主役の初舞台なんでしょ。ここに行かなかったら、後悔するのはあなたの方なんじゃないの。エリートとかお金とか、そういうのとは何の関係もなしに人を好きになるって素敵なこと。あなたそう言ったじゃない。あなたにとって司くんがそうなんじゃないの。グッチのバッグよりうさぎのリンゴが大切だって気づいたんでしょ」
吉沢
「川原さんこそ、仕事のパートナーよりもおもちゃの指輪の方が大切だってことに気がついたんじゃないですか」
川原
「かもね」
吉沢
「かもな」
川原
「あんた案外お節介ね」
吉沢
「そっちこそ」
川原
「嫌なら引っ越せば?」
吉沢
「引っ越しませんよ。結構居心地いいんで」
川原
「ふーん」

最終的に二人は前に進むために、特別な存在に好きだけどサヨナラをする。

しかし、もう寂しくはない。

川原には吉沢がいて吉沢には川原がいるのだから。

別れを前向きに捉え、最後は笑顔になれた強い女性像として二人の姿が描かれている。

また、本作には坂元裕二の代名詞である手紙は登場しないが、チラシの裏に書かれた間接的なメッセージのやり取りやメールでの文章のやりとりが何度か用いられている。

他にも、物語上の映画『恋愛偏差値』の巨大広告が度々登場し、その前で二人が恋愛に思い悩むシーンが多く挿入される。

そこに記されたキャッチコピーは「だから、恋はやめられない。」、副題は「Every girl is the heroine」。

坂元裕二が描こうとした本作のテーマがこの広告に凝縮されている点が印象的だ。
みや

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