香

オレンジ・イズ・ニュー・ブラック シーズン5の香のレビュー・感想・評価

4.6
前回シーズンまでの囚人たちへの酷い待遇で募った不満が、悲劇的な事件をトリガーにいよいよ爆発。
リッチフィールドで発生した暴動を丸々描いたのがS5である。

刑務所内の人種間で対立していた争いが、運営企業MCCという共通敵を倒すために共闘を決意する…と言いたいところだが、ことの認識度や思惑が違えばやっぱり一枚岩になれない。
ただそれが功を奏してか(?)、状況的にはかなり深刻なものの、束の間の自由を楽しもうとする人たちによるユーモアあふれるシーンも沢山。ブーはエンターテイナーだ。
個人的には、イタズラ妖精かの如く刑務所内を引っ掻き回すリアンとアンジーがツボ。冷静に考えると、かなりやばいことをしでかしまくっている。

一方で、テイスティとカプート、元を辿れば信念は近しいのに真逆の立場になってしまった二人による対立は、非常に悩ましいものに。
不慮の事故なのは事実、でも、やってしまったことも事実。では、どう落とし前をつけるのが「正解」なのか?視聴者の正義感、倫理観を大きく揺さぶる。

立場と視点の違いというのはとても複雑な問題で、自分たちも決して他人事とは言えない。
例えばテレビやSNSで「受刑者が看守を殺して、更に刑務所に立て篭もった事件が発生」という報道を見たとき、我々はどう思いどう感じるだろうか?改めて、いろんな視点で物事をみる大切さを痛感させられる。

S5では、残された人々がどう現実と向き合っていくのかも重要なテーマになっていて、特にソーソーによる追悼シーンは全シーズンを通してもハイライトと言えるのではないだろうか。
人種も格差も思想も何一つ分かり合えないという圧倒的事実の中で、ほんの少しの間だけ思いを共有できる瞬間を描いた、非常に感動的な場面。
香