映画スニーカー図鑑

アトランタ シーズン4の映画スニーカー図鑑のレビュー・感想・評価

アトランタ シーズン4(2022年製作のドラマ)
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Nike Miracles

EP6.“Crank Dat Killer”

Soulja Boy “Crank That”のダンス動画を過去にアップロードしたことがある人ばかりを狙った謎の連続殺人がウワサに。ビビるPaper Boi (ブライアン・タイリー・ヘンリー)を他所に、アーン(ドナルド・グローヴァー)とダリウス(ラキース・スタンフィールド)の2人は限定スニーカーを求め、古いバンに乗った謎の男にコンタクトを図るが......
アフリカン・アメリカンたちの日常にへばり付いたAwkwardな問題の数々を、シニカルかつシュールに風刺した1話完結ドラマのファイナル・シーズン。その第6話“Crank Dat Killer”は、Tiktokやスニーカーといったハイプ・カルチャーに言及した回だ。
アーンたちが必死に買い求める架空のスニーカー:Nike Miraclesは、最初から最後まで画面にチラリとしか映りこまない。どんなデザインで、どんな価値がある靴なのか、観ている側にはサッパリ分からないのだ。謎のスニーカー商人:シューマンは靴の代金は求めずに、2人がバンの後部座席でキスするところを見せろと要求する。
「尊厳を差し出してまで求めるべきものか......?」
「いやでも、世界に1000足しかないし......」
皮肉なことだが、もし2人がシューマンとの取引を諦め、他のリセール市場で100万ドル払ったところで、果たしてそれは”尊厳を差し出して“いないと言えるだろうか?己の時間や肉体を労働価値として資本主義社会に捧げ、やりたくもない仕事を延々と続けて得たなけなしのカネで靴を買うことは、”尊厳を差し出す“ことにはならないと、どうして断言出来るのだろう?
実態のない価値に踊らされるのはスニーカー・ヘッズだけではない。連続殺人犯の動機だって結局は分からない。被害者の動画の投稿歴は単なる偶然の一致だったのか、Paper Boiを銃撃してきた男は真のシリアル・キラーだったのか、殺人犯もシューマンも、何を価値基準として行動していたのか、真相は分からないままだし、誰もそんなことに興味は持たない。その横でキッズたちは、最新曲で能天気にダンス動画を撮っている。
カオスな世の中で確かなのは、Nikeのスニーカーはカッコいいということと、ATL市民は老若男女問わず銃を所持しているということ、避難用農場は大事だということだ。
ついでに、シューマンのような“歩く都市伝説”はアトランタに限らず、新宿にだって大勢居る。映画館でバイトをしていた2年間、ああいうのにはしょっちゅう遭遇した。


衣装デザイン:Tiffany Hasboarne
登場・コラボ:登場のみ

ちなみに、ドナルド・グローヴァー本人は2019年にAdidasとコラボしContinental 80、Lacombe、Nizzaの3つを発売、2022年にNew BalanceとコラボしRC30を発売している。New Balanceの方はYouTubeにキャンペーン・ムービーのカートゥーンがアップされていて、グローヴァー本人が主人公のネズミの声優を担当している。

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