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ルパンの消息の29球Agentのレビュー・感想・評価

ルパンの消息(2008年製作のドラマ)
3.0
このドラマの原作は良質な警察小説を数多く世に送り出しているミステリー作家横山秀夫の同名小説で、WOWOWのドラマW枠で放送された刑事ドラマです。

15年前に女性教諭が自殺した事件は殺人だったとする密告から「3億円事件」の容疑者を自供まで追い込めず、責任を取る形で警視庁を去った刑事が再び呼び戻され捜査に当たります。ただし残された時間は24時間。

舞台は警察の取調室。
15年前に自殺した教諭が勤めていた学校の当時の生徒3人を事情聴取し、徐々に真相まで辿り着くという、まさしく地味な刑事ドラマです。
ですから奇をてらったトリックやひねりを効かしたどんでんもありませんし、手に汗握るサスペンス要素もありませんが、時効成立までの24時間と言うタイムリミットが緊迫感を巧く醸し出しています。

物語自体は終始静かに進みます。
ですが、取り調べでの供述や当時の捜査録の矛盾を一つ一つ炙り出し、ほころびをつなぎ合わせて真相まで辿り着く様を丁寧に描いており、事件に関わる関係者の人間ドラマも織り交ぜながら進むので物語に集中して飽きさせません。

視点を変えて演出すれば青春ミステリーとして描けたでしょう。
「3億円事件」に関しても上手に本編と絡ませています。
ちなみに2つの事件が結びつく喫茶店の名前が「ルパン」。
消息の意味は本編を観て確かめて下さい。

久しぶりに地味ながら上質の刑事ドラマを観ました。
勿論、出来過ぎな点など突っ込みどころもありますが、物語の面白さが覆い隠してくれました。

2009/11/1
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