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京都殺人案内 花の棺のPerMetalPowerのネタバレレビュー・内容・結末

京都殺人案内 花の棺(1979年製作のドラマ)
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このレビューはネタバレを含みます

演出:工藤栄一。原作読了記念に。脚色面でいうと、東郷流風(内田朝雄)の殺害をキャンピングカーを使ったものではなく、完全にメロドラマのみとして描写した点は賢明だったと考える。正直、原作のキャンピングカーを用いたアリバイ工作は、悪口を言えば“頭の体操”みたいなもので、馬鹿正直に描かれても映像的な伸びしろはほぼないからだ。
山村美紗は“トリックメーカー”と呼称されることがあるようで、おそらくハウダニット先行型の推理作家なのだろう。殺人のアイデアが複数あって、それを並べた上でどこに着地させるかを探っていったのだと思う。ただそのためか、その複数の殺人を背負わされた犯人の心理をうまく設定できているかという点では疑念が浮かぶ。母の復讐、略奪愛に対する報復、家元制度の被害者としての権威破壊……いずれで考えてもどこかでギクシャクしてしまう(主動機は1つ目とされるが、その流れでは、密室殺人で殺されるのが西川でいいのか?という疑問の余地も残る。“見立て”だからそれで殺す相手は誰でもいいと言われればそれまでだが、にしても……)。
こちらの映像化では、そうした点に関して無理に納得させようとするよりも、役者(いしだあゆみ)と構図の力で押し通した感がある。藤田まことは北海道の雪原を渉っていしだを追うが、遂に近づくことすらできない。森の中の開けた場所でようやく対峙しようとしたときには、すでに彼女は服毒自殺した骸として、小さな点として横たわっている。工藤栄一らしい前・奥の極端な構図がひしめき合っていた京都篇から一転しての、北海道篇の荒涼さが効果を発揮しているのはたしかだ。京都篇でいえば麻衣子と和彦の関係のわだかまりの捉え方(和彦と車)もさりげなく効いている。
いしだがアパートで薔薇をまきちらすあたりは長すぎる。あとそれに関連して柳ジョージの音楽は申し訳ないがウザかった。「ヘーイヘーイヘーイダーラッ」を何回も聞かされるとイラっとしてくる。
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