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ハリウッドのシネマノのレビュー・感想・評価

ハリウッド(2020年製作のドラマ)
3.8
「ハリウッド黄金時代の光と影、もしもが紡ぐ先にある未来にこそ皮肉な夢がある」

カリフォルニア州ロサンゼルス、ハリウッド。
1940年代、世界大戦後に多くの若者が夢をもって集まってくる。
そこはあらゆる人たちに夢を見せる一大産業、映画の中心地であったから。
しかし、なけなしのお金と大きな夢をもって訪れる若者たちにって、ハリウッドは夢と希望に溢れた街ではなく。
ただ数え切れないほどの夢が集まり、そしてその夢をエンジンにして動く異形の街だった。
そんなハリウッドに、ジャック・コステロはやってくる。
スター顔負けの美形と映画への想いだけを頼りにして、生涯を誓いあった妻を連れて。

あらすじだけを書けば、華やかなハリウッド黄金時代のサクセスストーリーにみえるかもしれない。
けれど、本作が描くのは夢や光の側面ではなく、映画産業の現実と影の部分。
そしてLGBT、ゲイカルチャー、人種差別や売春、愛とセックスと金。
そうした問題にフォーカスをあてた群像劇でした。

しかし、ヒットメーカーであるライアン・マーフィーの手腕はさすが。
時にコミカルに、そして時にセンチメンタルに。
大胆かと思えば繊細な演出でもって、今も根深く残る問題をテーマに掲げて群像劇を描き出す。
沢山の登場人物を魅力的かつ有機的に物語に取り込み、夢や野望を抱く誰もに魅力をもたせているのも素晴らしい。
実在した人物の登場に心踊ることもあれば、史実を巧みに取り入れた脚本がシニカルな笑いを誘うことも。
全7話で納得の結末へと収束してくれるというボリュームも、
海外ドラマが長すぎると敬遠していた人にも耐えうるのではないだろうか。

良い面以外にも目を向けてみると、やはり「もしも」感が強すぎること。
実際にはあまりにも深刻で今も解決しきれていない問題をいくつもテーマに扱っているからこそ、
展開の激しいアップダウンや、エンタメとしての見事な緩急が皮肉や切なさにもうつってしまう。
つまり、ドラマとしての質や重みに関しては物足りなさが否めない。
最終話のタイトルにもなっている、「ハリウッドらしい結末」には最大級の皮肉が込められているようにも感じた。

もしもこんなハリウッド黄金時代の先に、今があったのなら。
毎年あらゆる論争を巻き起こすアカデミー賞は、どんな作品が評価されていたのだろうか。
【ラ・ラ・ランド】信者の自分には、沢山のもしもがこみ上げてきた。
多くの人にとって楽しめる作品であるからこそ、恐ろしくもあるドラマ。

美男美女でかためられたキャスト陣も目に嬉しく、
なかでもブロンドの白人女優を演じるサマラ・ウィーヴィングがただただ美しく、これからの活躍に期待。
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