けぬご

サンクチュアリ -聖域-のけぬごのネタバレレビュー・内容・結末

サンクチュアリ -聖域-(2023年製作のドラマ)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

猿桜という1人の漢の生き様に魅せられてしまった。

心が震えた。体も震えた。魂がざわめいた。

大筋のストーリーとしては、よくあるスポコンの流れ。
相撲に興味のない主人公が、別の理由から相撲を始め、のめり込んでいくというもの。


【あまりにも丁寧すぎる下準備】
だが、これが他のスポーツものと明らかに違うのは、そののめり込む前のある種「嫌な奴」の描写に全体の7割もの時間を費やしていること。ぶっちゃけ最初は本当に嫌なやつで自己中で傲慢な主人公だった。だが、それでも別に上手く行ってた。連勝しまくってた。多分これまでも大きな挫折もしたことがなかったのだろう。
それがあまりにも強大で山のようなライバルに完膚なきまでにたたきのめされる。このシーンは本当に目を背けたくなった。ここまで落ちる展開は想像すらしてなかった。嫌な奴とは言ったけどもうやめてよ…とすら思った。
7割の時間をかけ、大きく大きく積み上がった傲慢が、このショッキングな出来事でとんでもなく地べたまで落ちていくあまりにも大きすぎるギャップが、他の作品とはくらべものにならないくらい丁寧に衝撃的に描かれていた。


【どん底から再起。火傷しそうになる熱量】
そして、これ、落ちた後に登っていく様子もすげえいいのよ。俺たち視聴者のうつし鏡として記者役の女性の目から猿桜たちの稽古が映し出されるのだが、もう顔つき体つきが変わっていく姿が本当に印象的。一つ一つ人や相撲への敬意が身について、それがどこか諦めのような空気感のあった部屋のみんなをも掻き立てていく。もう本当に唸った。

最後の対決を見せないことで、この胸の熱が冷めないように、続くように設計されているのも素敵だし、猿桜という1人の相撲取りの生き様をもっともっとみたいと思っている自分がいた。


【深みのある人物たち】
人物にも軽く触れていくと、
決して単純な浅い人物が1人もいないと思った。丁寧に丁寧に作られていたと思うし、それを表現し切る迫真の演技を全出演者がしてくれていた。お母さんも、ろくでなしだけど、とても大切な喝を入れてくれる存在だった。歪だけどしっかり繋がっているんだと思って少し嬉しくなった。


ここまでタラタラと書き殴ってしまったが、本当に素晴らしい作品。言葉じゃ伝わらない細かな表情や動作もあるからまだみてない人は是非みてみてほしい!
けぬご

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