だいき

ブロードウェイ ドリーム!のだいきのレビュー・感想・評価

2.0
夢も希望も無い。

本作はブロードウェイという夢舞台を目指す主人公少年ネイトが奮闘する一方で、彼の母シェリーと女優の叔母ハイジの人生の対比が重要な構造。
しかし、母シェリーの出番が非常に少なく、二人の関係にドラマ性が感じられない。
叔母ハイジのバックグラウンドも、家庭より夢を選んで貧乏アパート暮らしというのは分かるが、詳細は説明不足。
考えてみると本作の登場キャラ全員無個性。
主人公のネイトすら演技と歌が好きないじめられっ子少年以外の個性が与えられていなかった。
子供たちだけでニューヨークにオーディションに行くという素晴らしいアイディアを活かせてなかったように思う。

本作で歌を歌うのが、ほとんど主人公ネイトだけなのも不満。
他はいじめっ子がトイレで少し口ずさんだり、エンドロールでリビーが歌うのみ。
ミュージカル映画は様々な登場人物が歌やダンスで心情吐露するのが楽しみの一つでもある。
キャラが内面を情熱的に歌い上げて、それがキャラ同士の内面がクロスするミラクルな瞬間。
歌える俳優を呼べなかったのか、ずっとネイト1人だけで歌っており、一人相撲状態の寂しいミュージカルに仕上がっていた。
全体的にミュージカル映画として歌うシーンがもう少し欲しかったところ。

登場キャラクターの設定が浅いという話をしたが、哲学的な見方をすれば、登場キャラクターがみんな記号的。
つまり、唯一無二の個性はないが、それっぽい設定になっている。
アメリカのステレオタイプの反映があってもいいが、固有の性質がなく、キャラに命が吹き込まれていない感じがする。
リアリティも生まれない。
キャラが記号的ということは、制作側が映画をより構造的に捉えられている側面が強いのかもしれない。
もちろん計算は大事だが、オリジナリティや意外性を蔑ろにしてしまっては、本当に良い作品は作れないと思う。
リロ&スティッチにも失礼な 内容だった。
だいき

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