早坂

ONE PIECE FILM REDの早坂のレビュー・感想・評価

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)
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ウタ(Ado)の歌がよかった。
浜崎あゆみみたいに話し声と歌声にギャップのあるタイプの歌手なんだなと思うことにしたから違和感はなかった。

全体的に映画オリジナルヒロインおもてなし映画って感じだった。
主人公くん助けて困ってるの!系ヒロインよりはキャラクターとしての濃さがあって魅力的だけど、その濃さのキャラクターを使って映画一本の尺に話をおさめようとしたらこういう展開になるのは仕方ないんだろうな、という感じ。



※以下、ネタバレあり※



メタ視点抜きにして考えるなら、子どもの罪を大人が隠蔽したまま傷に向き合う機会を奪って、人間社会にまともに触れることもなく大きな能力と影響力を持て余した若人に世界中が期待とプレッシャーをかけたら、そりゃそうなるよなあと思った。

そもそも映画序盤、ウタは海賊らに苦しめられる人々の痛みを癒すために歌っていたのが海賊たちから娯楽として消費されてる時点でだいぶグロテスクな構造になってるし、ラストも含め一貫してグロテスクな映画だったと思う。

カリスマを背負い切るには自己犠牲か周囲のサポートが必要で、ウタには十分なサポート(というか、もっと手前の人間社会に適応する当然の機会すら)がなかったから自己犠牲しか選べなかった。
で、凡人の自己犠牲とは違ってウタは特殊で強大な能力を持ってしまっているから、善意の自己犠牲の中に世界が引き摺り込まれたんだろうなと。

結局、自分の罪や傷に向き合う機会も人間社会の中で揉まれる機会も奪われたウタが生き残るには、カリスマを降りて普通の人間になるしか方法はなかった気がする。
ステージ上でゲボとか吐き散らかして私一人に期待すんなって観客罵って地面にマイク叩きつけてステージ降りるしかなかったんじゃないのかな。どっちにしろ失望されるし叩かれるけど、命だけは助かってた。
可哀想に。
早坂

早坂