今までのノエのやってきた挑発的な表現が、全てこの作品に昇華されている。
オープニングの美しさがあまりにも切ない、完全不可抗力の絶望を際立たせていると思える。
画面分割が始まるところは胸がつまる思いだった。
『老い』という、理想的な“可愛いおじいちゃんおばあちゃん”でもなく、ロマンチックに愛情が全てを丸く納め切れるものでもない、静かに確実に全てを奪っていくものだという、実に残酷で生々しく描かれた作品であると思う。
中盤の日常は正直なところ、退屈でぐったりとした空気が流れ続けていると感じたが、その退屈自体が、老夫婦の現実を際立たせた見事な演出であっただろう。
ギャスパーノエのほとんどの作品は鑑賞してきたが、今までの全てをまとめた真心のこもった作品だと感じた。