社会のダストダス

BAD CITYの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

BAD CITY(2022年製作の映画)
3.9
普段はVシネを観ない堅気の人間ですが、たまたま近くの劇場でやっていたので観て参りました。心なしか客層もちょっと怖そうな人たちが多かった気がします。

まるで閻魔大王が転生したような神が与えた顔面凶器、小沢仁志さんの還暦記念作品。個人的には小沢さんといえば、本人の顔面で出演したゲーム『龍が如く0』で、バイクに鉄パイプを持って「死ねや、ボケがァ!」って突撃してくる狂った極道のオヤジ役が強烈に印象に残っている。

あらすじとか特に調べずに観たものだから、小沢さんは当然アタマのネジがとんだヤクザの役だと思っていたが、本作では冤罪で服役する元刑事、しかも検事だったという経歴を持つ。まさかの法の番人だった。これだけ殺傷力の高い顔で、殺してないと言われても誰も信じないだろう。

そして映画の感想は、普通に凄く良かった。何なら少し感動もした。『ベイビー・わるゅーれ』のアクション監督をされている若い人らしい、ジャンプ漫画みたいな戦いの流れは阪元作品にも似ていた。「ここは俺に任せて先に行け!」フェチな人は、何度か聞けるのでお勧めである。あとラストステージで貨物船に乗り込んで雑魚と乱闘→中ボス戦→ラスボス戦の流れが、『龍が如く』好きには最高だと思う。

小沢さんがメインの作品だが、敵味方に問わず割とサブキャラクターにスポットが当たる場面が多い。少し緩い人達の集まりの特捜班の面々とのやり取りは、小沢さん演じる虎田の顔面成分を中和する緩衝材になっていたし、主役の関わらない戦闘シーンとかは、結果が読めないのでかなり手に汗握るものがある。

サブキャラとしては悪徳企業の会長役のリリー・フランキーがほとんど小沢さんと関わるシーンが無いにもかかわらずインパクトがあり、「俺の化けの皮は厚いよ~」と言ってたのが、最後に剥がれた瞬間急に小物臭くなったのが最高だった。出来れば最期は小沢さんのヒートアクションを喰らってお陀仏になって欲しかったが、悪いことしている偉い人の様式美が詰まっていて観ていて楽しい。

特捜班のメンバーでは坂ノ上茜演じる新人、野上が刑事の心得を伝授される者として弟子ポジションとなっていて、アクションもかなり肉弾戦を展開、意外に強い。韓国マフィアの女ボス設定のかたせ梨乃はほとんど日本語しか喋らないものの、凄みがありキャラクターとしても魅力的だった。特捜班のまとめ役である壇蜜は演技してるところを初めて観たけど、抑揚のない喋り方が気になり、しかも割と出番が多いのがちょっときつかった。

小沢仁志、最後の無茶というキャッチコピーらしいけど、最後とは言わず続編も期待したい作品だった。次があるならおっさん版『ベイビー・わるきゅーれ』のようなアクションクオリティを維持しつつも、竹内力とか同じくらい顔が怖い人をラスボスにして顔面バランスをとっていってほしい、そのうち日本中の顔が怖い人選手権みたいなシリーズになるかもしれないけど(それだと普通のVシネか…)。